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2025年08月01日

米個人所得・消費支出(25年6月)-PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに前月から上昇、市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想を下回る

7月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月:▲0.4%)と前月からプラスに転じたほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.2%も上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.3%(前月改定値:横這い)と▲0.1%から上方修正された前月を上回った一方、市場予想の+0.4%は下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月改定値:▲0.2%)と▲0.3%から上方修正された前月からプラスに転じた一方、市場予想に一致した(図表5)。貯蓄率1は4.5%(前月:4.5%)と前月から横這いとなった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月改定値:+0.2%)と+0.1%から上方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月:+0.2%)とこちらも前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.6%(前月改定値:+2.4%)と+2.3%から上方修正された前月、市場予想(+2.5%)を上回った。コア指数は+2.8%(前月改定値:+2.8%)と+2.7%から上方修正された前月に一致、市場予想(+2.7%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:PCE価格指数は関税政策に伴う価格転嫁の可能性を示唆

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は非耐久財消費の持ち直しなどで6月は前月から小幅に伸びが加速した。トランプ関税前の駆け込み需要やその反動などで個人消費の動向は掴み難くなっているが、GDPにおける実質個人消費は25年上期に前期比年率+1.0%と24年上期の+2.4%を大幅に下回っており、25年入り後の個人消費には鈍化がみられる。

個人所得(前月比)は6月が前月からプラスに転じたものの、移転所得の押上げの影響が大きく、これまで比較的堅調を維持してきた賃金・給与の伸びが僅か+0.1%と24年7月以来の伸びに留まったことは今後の消費を考える上でも懸念材料と言えよう。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、コア指数ともに前月比で前月からの上昇がみられており、足元で物価上昇圧力が高まっていることを示した。先日発表された6月の消費者物価では関税の影響を受けやすい家電製品や玩具などの前月比の伸びが大幅に高まっていたが、PCE価格指数の上昇も関税政策に伴う価格転嫁の動きが顕在化しはじめた可能性を示唆している。6月のPCE統計は関税政策の影響などにより、個人消費が鈍化する一方で価格が上昇する兆候を示しており、FRBは利下げ再開時期を巡って難しい判断を迫られよう。

3.所得動向:移転所得が押上げも賃金・給与の伸びは鈍化

6月の個人所得(前月比)は前月からプラスに転じたが移転所得が+1.0%(前月:▲2.0%)とプラスに転じたことが大きい(図表2)。移転所得は24年12月に成立した社会保障公正法に基づく給付金支給とその反動などの特殊要因で各月の変動が大きくなっている。また、自営業者所得も+0.2%(前月:▲2.6%)と前月からプラスに転じた。一方、利息配当収入が横這い(前月:+0.2%)、賃金・給与が+0.1%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化した。とくに、賃金・給与は前述のように24年7月以来の伸びに鈍化しており、今後も低調な伸びが続くのか注目される。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、6月の名目が+0.3%(前月:▲0.5%)と22年1月以来のマイナス幅となった前月からプラスに転じた(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は横這い(前月:▲0.7%)とこちらも22年1月以来のマイナス幅となった前月から持ち直した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:耐久財の減少が続く一方、非耐久財が持ち直し

6月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持したほか、財消費が+0.5%(前月:▲0.7%)と前月からプラスに転じて個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲横這い(前月:▲1.7%)とマイナス幅は縮小したものの、前月に続いてマイナスとなった一方、非耐久財が+0.7%(前月:▲0.2%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じて財消費全体を押し上げた。

耐久財では、家具・家電が+0.6%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じた一方、娯楽財・スポーツカーが+0.4%(前月:+1.1%)と伸びが鈍化した。さらに、自動車・自動車部品が▲0.8%(前月:▲5.7%)とマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続のマイナスとなった。

非耐久財では衣料・靴が+0.8%(前月:+0.8%)と前月並みの伸びを維持したほか、食料・飲料が+0.5%(前月:▲横這い)、ガソリン・エネルギーが+2.9%(前月:▲4.8%)と前月からプラスに転じた。

サービス消費は、輸送サービスが▲0.4%(前月:+0.1%)、娯楽サービスが▲0.6%(前月:+0.6%)と前月からマイナスに転じた。一方、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持したほか、医療サービスが+0.5%(前月:+0.3%)、外食・宿泊が+0.2%(前月:横這い)と前月から伸びが加速した。さらに、金融サービスが+0.6%(前月:▲0.5%)と前月からプラスに転じるなどマチマチの結果となった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前年同月比)は5ヵ月連続のマイナス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.9%(前月:▲1.0%)と前月からプラスに転じた(図表6)。食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.2%)とこちらは前月から伸びが加速した。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲1.6%(前月:▲4.5%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、5ヵ月連続でマイナスとなった(前掲図表7)。食料品価格指数は+2.2%(前月:+2.0%)と前月から伸びが加速したほか、17年6月以降のプラスが継続した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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