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- 米FOMC(25年7月)-市場予想通り、5会合連続で政策金利を据え置き。理事2名が利下げを主張し反対票
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2025年07月31日
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1.金融政策の概要:予想通り、5会合連続で政策金利を据え置き
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月29日-30日(現地時間)に開催された。FRBは市場の予想通り、政策金利を5会合連続で4.25-4.5%に据え置いた。量的引締め政策の変更はなかった。今回の金融政策決定ではFRB理事のうち2名が0.25%の利下げを主張して反対した。理事2名が反対するのは93年12月以来34年ぶりである。クグラ―理事は会合を欠席した。
今回発表された声明文では、景気判断部分では経済活動に関して前回の「堅調なペースで拡大」から「経済活動の伸びが緩やか」に下方修正された。景気見通し部分では経済の見通しの不確実性に関して前回の「低下している」との表現が削除された。金融政策ガイダンス部分の変更は無かった。
今回発表された声明文では、景気判断部分では経済活動に関して前回の「堅調なペースで拡大」から「経済活動の伸びが緩やか」に下方修正された。景気見通し部分では経済の見通しの不確実性に関して前回の「低下している」との表現が削除された。金融政策ガイダンス部分の変更は無かった。
2.金融政策の評価:当面は関税政策に伴うインフレへの影響を慎重に見極める方針
政策金利の据え置きは予想通り。また、声明文の変更が小幅に留まったことも予想通りであった。
パウエル議長の記者会見では、不確実性が高まっているにもかかわらず、経済は堅調な状況にあるとの認識が示された。また、労働市場が完全雇用に近い状況にある一方、インフレ率は2%目標を若干上回っているため、緩やかな引締めスタンスである現在の金融政策が適切との認識が示された。今回の金融決定で2人の理事が反対したことに対して質問された際には、委員会の過半数が前述と同様の認識であるとし、利下げは小数意見であったことを示した。
同議長はインフレと雇用の2つの目標が均衡に向かっているとの判断に至れば金融政策スタンスをより中立的な水準に戻すとしたが、関税政策のインフレや景気への影響は依然不透明だととし当面の様子見姿勢を強調した。9月利下げの可能性についても「まだ決めていない」として言質を与えなかった。
当研究所は関税政策に伴うインフレへの影響は今後顕在化すると予想している。このため、FRBはインフレ動向を慎重に見極めるために当面金融政策の様子見姿勢を続けるだろう。当研究所は本日のFOMC会合の結果を踏まえて、労働市場に顕著な減速がみられない限り、次回の利下げ再開時期は12月との従来の見通しを維持する。
パウエル議長の記者会見では、不確実性が高まっているにもかかわらず、経済は堅調な状況にあるとの認識が示された。また、労働市場が完全雇用に近い状況にある一方、インフレ率は2%目標を若干上回っているため、緩やかな引締めスタンスである現在の金融政策が適切との認識が示された。今回の金融決定で2人の理事が反対したことに対して質問された際には、委員会の過半数が前述と同様の認識であるとし、利下げは小数意見であったことを示した。
同議長はインフレと雇用の2つの目標が均衡に向かっているとの判断に至れば金融政策スタンスをより中立的な水準に戻すとしたが、関税政策のインフレや景気への影響は依然不透明だととし当面の様子見姿勢を強調した。9月利下げの可能性についても「まだ決めていない」として言質を与えなかった。
当研究所は関税政策に伴うインフレへの影響は今後顕在化すると予想している。このため、FRBはインフレ動向を慎重に見極めるために当面金融政策の様子見姿勢を続けるだろう。当研究所は本日のFOMC会合の結果を踏まえて、労働市場に顕著な減速がみられない限り、次回の利下げ再開時期は12月との従来の見通しを維持する。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス)
(景気判断)
(景気見通し)
- これらの目標を支えるため、委員会はFF金利の誘導目標水準を4.25-4.5%で据え置くことを決定(変更なし)
- 財務省証券、政府機関債、政府機関の住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)
(フォワードガイダンス)
- 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
- FF金利の目標レンジの追加的な調整の程度とタイミング検討する際には、委員会は入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを注意深く評価する(変更なし)
- 委員会は最大限の雇用を支え、インフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
- 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
- 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
- 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)
(景気判断)
- 純輸出の変動はデータに影響を与え続けているものの、最近の指標は今年上半期に経済活動の伸びが緩やかになったことを示唆している(前回の「与えている」”have affected”から「与え続けている」”continue to affect”に微修正されたほか、経済活動について前回の「堅調なペースで拡大を続けている」“has continued to expand at a solid pace”から「今年上半期に経済活動の伸びが緩やかになった」”growth of economic activity moderated in the first half of the year”に下方修正)
- 失業率は依然低く、労働市場の状況は引き続き堅調である(変更なし)
- インフレ率はやや高止まりしている(変更なし)
(景気見通し)
- 経済見通しの不確実性は低下しているが、依然として高い(経済見通しの不確実性について前回の「低下しているが、依然として高い」”diminished but remains elevated”から「低下しているが」”has diminished but”の表現を削除)
- 委員会はデュアル・マンデートの両サイドのリスクに高い注意を払っている(変更なし)
4.会見の主なポイント(要旨)
記者会見の主な内容は以下の通り。
- パウエル議長の冒頭発言
- 不確実性が高まっているにもかかわらず、経済は堅調な状況にある。失業率は低水準を維持しており、労働市場は完全雇用またはそれに近い状況にある。インフレ率は2%という当面の目標を若干上回っている。
- 本日、FOMCは政策金利を据え置くことを決定した。現在の金融政策スタンスは、経済情勢の潜在的な変化にタイムリーに対応できる良好な立場にあると考えている。
- 最近の指標は経済活動の伸びが鈍化していることを示している。成長の鈍化は個人消費の減速を反映している。
- 価格変動の根本的な構成は変化している。サービス部門のインフレは引き続き鈍化傾向にある一方、関税の引上げが一部の品目の価格を押し上げている。関税に関するニュースを受けて短期的なインフレ期待は市場ベースと調査ベースの両方で上昇傾向を示している。
- 政府の政策変更は引き続き続いており、経済への影響は不確実なままである。合理的なシナリオは物価上昇の影響が一時的な価格水準の変動を反映して、短期間で終息する可能性である。しかし、物価上昇効果がより持続的なものとなる可能性もあり、そのリスクを評価し、管理する必要がある。
- 当面の課題は長期的な期待インフレ率を適切に安定させ、一時的な価格水準の上昇が持続的なインフレ問題に発展しないように防止することだ。
- 主な質疑応答
- (市場や政権内に9月利下げへの期待があるが、それは非現実的か)政策金利は緩やかな引締め水準になる。関税の影響を除いてもインフレ率は2%を若干上回っている。労働市場は堅調だ。経済は引締め的な政策によって不適切に抑制されている状況ではない。9月会合までに2回分の雇用とインフレに関するデータが入手できる。9月についてはまだ決定していない。9月会合で決定を下す際には、入手したすべての情報を考慮に入れる。
- (声明文から不確実性が「低下した」との表現を削除した理由は何か)不確実性が前回会合以降に変化していないことから、「低下した」と表現する必要がなくなったからである。
- (金曜日に発表される雇用統計で均衡した雇用成長を判断する上で注目する指標は何か)注目すべき指標は失業率だ。なぜなら、雇用者増加数が減少しているのは事実だが、その一方で供給も減少しているからだ。労働市場が均衡状態にある限りは問題ない。しかし、需要と供給の両方が減少して均衡状態になっているという事実は下振れリスクを示唆しているため、我々は注目している。
- (「一つの大きく美しい法」は26年の景気刺激要因となるか)この法案の大部分は既存の減税について恒久化することでであり、ある程度の刺激はあるが、顕著なものではない。
- (利下げに踏み切る前にどのような経済データを確認する必要があるか)インフレや雇用など、あらゆるものになる可能性がある。インフレと雇用の2つの目標に対するリスクが均衡に向かっている、あるいは完全に均衡しているとの判断に至った場合、より中立的な政策スタンスへと移行すべきとの判断になる。
- (トランプ大統領からの圧力がFRBの独立性に影響を与えることを懸念しているか)独立した中央銀行は国民に役立ってきた制度上の仕組みだと思う。中央銀行の独立性は政治的な要因でなく、データや変化する見通し、リスクのバランス、そして我々が議論しているあらゆる事柄に焦点を当てた方法で、これらの非常に困難な決定を行うことを可能にする。先進国経済の政府は、これらの決定と決定者との間に一定の距離を置くことを選択してきた。議会はその重要性を認識しているだろう。
(2025年07月31日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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