2021年08月13日

2020年に日経平均株価がTOPIXより大幅に上昇した要因

金融研究部 研究員 熊 紫云

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1――2020年は日経平均株価がTOPIXより大幅に上昇

日経平均株価の2020年の騰落率は16.0%とTOP­­­­­IXの4.8%を11.2%も上回って大きく上昇した。日経平均株価をTOPIXで割って計算する指標であるNT倍率(図表1:面グラフ)をみても2020年に13.7倍から15.2倍に上昇した。
【図表1】日経平均株価、TOPIX及びNT倍率の推移

2――2020年日経平均株価に組入れられた・・・

2――2020年日経平均株価に組入れられた銘柄の大半は騰落率がマイナス

しかし、2020年、日経平均株価の騰落率は16.0%であったものの、日経平均株価の組入225銘柄のそれぞれの騰落率を単純平均したところ、TOPIXより低く、▲4.1%であった【図表2】。
【図表2】2020年の騰落率
日経平均株価の個別銘柄の騰落率を確認すると、2020年に騰落率が▲20%~▲10%にある銘柄数が一番多く、51銘柄であった【図表3】。騰落率がマイナスになった銘柄数は148銘柄もあり、日経平均株価の225銘柄の65.8%と、3分の2近くを占めた。このように日経平均株価の組入銘柄の多くが下落したのに、日経平均株価が大幅に上昇したことになる。この要因について説明してみたい。
【図表3】日経平均株価225銘柄の2020年騰落率分布状況と組入れ比率一覧

3――日経平均株価の上昇の要因は少数の特定個別銘柄

3――日経平均株価の上昇の要因は少数の特定個別銘柄

まず日経平均株価に対する組入銘柄の寄与度を個別に計算してみると、組入れ比率が大きい極少数の銘柄が2020年に大きく株価を上げたため、それに伴って日経平均株価が大幅上昇したことが分かる【図表4】。上位10銘柄の寄与度の合計は3912円であり、2020年の日経平均株価の上昇幅(3787.55円)を上回ったことから、これらの10銘柄が日経平均株価を牽引したといえる。

実は、2020年初にこの10銘柄のTOPIXに占める組入れ比率②が6.7%であるのに対して、日経平均株価に占める組入れ比率①が30.9%もあった【図表4】。
【図表4】2020年寄与度トップ10位銘柄の年間騰落率と組入れ比率一覧
ちなみに、この10銘柄を除いて2020年の日経平均株価の騰落率を出すと▲0.7%と、騰落率が16.0%以上も低下しマイナスとなる。これはTOPIXの騰落率4.8%を下回る【図表5】。

TOPIXもこの10銘柄を除外して簡単な方法で試算すると0.6%と騰落率は4.2%ほど低下するが、日経平均株価から10銘柄を除いた場合より低下幅が小幅であり、また僅かながらプラスでもあることからも、日経平均株価はTOPIXよりも10銘柄以外の銘柄が良くなかったことが分かる【図表5:緑棒】。つまり、日経平均株価は組入れ比率が大きかった銘柄がたまたま好調であったため、大きく上昇したといえる【図表3:赤丸】。
【図表5】10銘柄を除いた場合の2020年の騰落率

4――2021年の日経平均株価の騰落率

4――2021年の日経平均株価の騰落率

このように2020年は特に好調であった日経平均株価ではあるが、2021年に入ってから冴えない展開が続いている。21年7月末までの年初来騰落率は、日経平均株価が▲0.6%であり、TOPIXの5.3%より劣後している。NT倍率を見ても2021年初の15.2倍から7月末には14.4倍にまで低下してきている【図表1】。

これは2020年寄与度ランキング上位10銘柄が2020年に高騰した反動もあって、2021年に入ってから10銘柄の中8銘柄は下落し、日経平均株価に対してもマイナス寄与となっていることが影響している【図表6】。寄与度1位の東京エレクトロンや3位のアドバンテストなど引き続きプラスに寄与している銘柄もあるが、2020年は寄与度が1位だったファストリは1銘柄で668円も日経平均株価を引き下げている。2020年に寄与度が1位と2位であったファストリとSBGが2021年は寄与度が225位、224位と逆に最下位に沈んでいる。この10銘柄の寄与度の合計をみても▲1151円で、同期間の日経平均株価の低下幅(▲160.58円)よりはるかに大きい。2021年は一転して2020年に寄与度上位であった銘柄が日経平均株価を押し下げているため、日経平均株価も重たい展開が続いているといえよう。
【図表6】2020年に寄与度が高かった10銘柄の2021年寄与度と騰落率一覧(2021/07/30時点)

5――最後に

5――最後に

以上のことから、日経平均株価は時価総額加重平均で算出されたTOPIXと違い、株価平均型株価指数であり、株価が高く組入れ比率が大きい極少数の個別銘柄、つまり値嵩株の影響を大きく受けることが分かる。そのため、短期的にはTOPIXに比べて相対的に変動幅が大きい傾向にあり、コロナ後の状況を説明すると日経平均株価はTOPIX対比で2020年に大きく上昇し、その一方で2021年は冴えない展開が続いているといえよう。

しかしながら、本稿の趣旨としては単純にどちらが良いかを比較するものではなく、日経平均株価とTOPIXの特徴や違いを理解してもらいたいというものである。各種投資のパフォーマンスは短期間での推移で判断すべきでなく、各投資の優劣判断等については、長期的なパフォーマンスや今後の金融市場の動向等の分析が重要である点は強調しておきたい。
 
 

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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2021年08月13日「基礎研レター」)

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