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所有者不明土地への諸対策 (2)-共有制度の見直し
保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登
1――はじめに
所有者不明土地の中には、登記簿上共有のままで放置されているものもあり、また共有者が行方不明、あるいは共有者に相続が発生しており、相続人が特定できないものもある。このため土地の共有者がわからず(=誰かわからない、誰かわかっても連絡が取れない)1、管理や処分等に支障をきたす例が多く発生しているとのことである。そこで、共有者が所在不明などの状態にある共有の土地建物の利用、権利の集約、処分を行うことを容易にすることとした。これが今回解説する改正内容である。次項2では現行法の問題点を確認し、次々項3で改正法を解説する。
1 所在等不明とは登記簿や住民票などの公的記録を確認して権利者が誰か、あるいは権利者の所在や不明であるような場合とされる。
2――問題の所在
2 なお、単なる修繕のような保存行為は各共有者が個々にできる(民法第25条但し書き)。
Aが共有関係を終了させ、不動産の全部あるいは一部を所有したいと考えた場合には、どのような手段があるか。まず、Aが不動産の全部を所有したいときには、B、C、Dの持分をAが取得することとなる。Bとは持分取得の合意ができればよいというだけが、CとDは所在等不明であり、持分の譲渡を受けることは現行法ではできない(課題3)。
他方、Aは今使っている部分さえ自分に残ればよいと考えた場合には、共有物の分割という手段がある。各共有者はいつでも共有物の分割を請求できる(民法第256条)。この場合は他の共有者と協議し、協議が整わない場合には、裁判で分割を請求することができる(民法第258条第1項)。
共有物の分割において、法律上は、現物の分割(不動産を物理的に4分割するなど)、あるいは補完的に、競売を行って代金を分割することが認められている(民法第258条第2項)。ただし、共有物の分割訴訟は固有必要的共同訴訟とされ、共有者が全員参加した訴訟でなければ提起することができない。したがってケース1のように所在等不明共有者がいるときには、共有物の分割はできない(課題4)。
3――新しい共有制度
さらに、共有者は共有物の管理者を選任できるとの規定が設けられた(改正民法第252条の2)。管理者の選任は共有物の管理と同じルールである。すなわち、共有者の持分価格の過半数で共有者を選任できることとされ、所在等不明共有者がいる場合には、不明者以外の持分の過半数で決する裁判をすることができる。
3 例として、土埃の舞う土地の歩道を舗装するようなケースが挙げられている(2021年3月23日衆院議事録(山下委員発言)。
03-3512-1866
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