2019年09月09日

改正債権法の解説(1)-時効は長くなった?短くなった?

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

2020年4月から改正債権法(改正民法)が施行される。いくつかの知っておくべき内容があるが、今回は消滅時効について解説する。
 
消滅時効は権利を行使しないまま一定の期間が経過すると権利が行使できなくなる制度である。現行民法では民事債権で10年、商事債権で5年の消滅時効が定められているほか、権利の種類により3年以下の短期消滅時効が定められている。
 
今回の債権法改正では、商事債権の消滅時効やその他の短期消滅時効制度を廃止し、権利が行使できる時(客観的起算点)から10年、権利行使ができることを知った時(主観的起算点)から5年で消滅時効が完成することに統一された。ただし、生命・身体の侵害による損害に関する請求権だけは権利が行使できる時から20年、権利行使ができることを知ったときから5年とされた。
 
また、たとえば、訴訟を起こすことなどで消滅時効の進行が中断する制度について改正が行われ、訴訟を起こすなどすると消滅時効の完成が猶予される効果があることとし、勝訴すると時効がゼロからスタート(更新)する効果があるとする二つの制度として整理された。
 
なお、保険金請求権などの保険会社に対する権利行使の消滅時効は保険法で3年と定められているが、今回の債権法改正では実質的な改正はなされず、3年の短期時効は維持された。

■目次

1――はじめに
2――現行の時効制度
  1|時効制度の存在理由
  2|現行時効制度の概要
  3|時効制度のバリエーショ
3――新しい消滅時効制度
  1|消滅時効期間の統一
  2|人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権
  3|時効の完成猶予と更新
4――保険法における消滅時効
5――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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