2020年01月15日

改正債権法の解説(6)-保証制度どう変わる?

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

改正債権法は、保証に関して大きく三つの改正を行った。(1)貸金等の根保証に関して極度額の設定を求めていたが、これを貸金等以外の債務の根保証についても拡大すること、(2)事業用貸金等の個人保証については契約前に公正証書を作成すべきものとすること、(3)保証人への情報提供義務を義務付けること、である。
 
根保証とは不特定の債務について、一定の範囲内の金額を保証するものであるが、現行民法では貸金等の根保証についてのみ極度額の設定を求める等している。改正債権法では、身元保証など貸金等以外の債務に関する根保証にも極度額の設定を求めること等として、思わぬ額の責任が根保証人に降りかからないような規律とした。
 
また、事業用貸金の保証については、根保証かどうかにかかわらず、保証契約を締結する前に、公正証書の作成により保証人の保証意思を明らかにすべきこととされた。ただし、会社の役員など一定の者は公正証書の作成は求められない。
 
さらに、保証を委託する際には主たる債務者が、保証契約存続中および主たる債務者が一括弁済を求められた(期限の利益を失った)ときには債権者が、保証人に対して一定の情報提供をすべきものとした。

■目次

1――はじめに
2――貸金等の個人根保証に関する極度額設定範囲拡大および元本確定の変更
  1|現行制度-極度額設定等の規律は貸金等の金銭の貸し借りに限定
  2|改正債権法-極度額設定等の規律が適用される保証類型の拡大
3――事業用貸金等の個人保証における公正証書の作成
  1|制度の概要-契約に先立っての公正証書の作成
  2|公正証書作成を要しない者
4――保証人に対する情報の提供義務
  1|事業用債務に関する個人根保証に対する契約締結時の情報提供義務
  2|主たる債務者の履行状況に関する保証人への情報提供義務
  3|主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における個人保証人に対する情報提供義務
5――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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