2021年05月11日

コロナ禍における生活の変化(4)-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からみる生活不安の変化と地域間較差

生活研究部 主任研究員 井上 智紀

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5――家族関係不安(子どもや高齢家族)

コロナ禍で子どもに関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「休校などによる学習の遅れ」は北陸、愛知県、四国で高く、「休校などにより身体的な成長が十分でないこと」は東海および愛知県、四国で、「休校などにより精神的な成長が十分でないこと」は四国で高い。また、第3回調査を実施した昨年12月時点では「休校などによる学習の遅れ」「休校などにより身体的な成長が十分でないこと」「休校などにより精神的な成長が十分でないこと」のいずれも愛知県で高く、第4回調査を実施した今年3月時点では「休校などによる学習の遅れ」は甲信越、愛知県で、「休校などにより身体的な成長が十分でないこと」は甲信越で、「休校などにより精神的な成長が十分でないこと」は甲信越、北陸で、それぞれ高くなっている。9月から12月にかけての変化では、いずれの項目についてもほとんどの地域で横ばいないし減少している中、「休校などによる学習の遅れ」は南九州で、「休校などにより身体的な成長が十分でないこと」は東北、中国で、「休校などにより精神的な成長が十分でないこと」は愛知県、中国で、それぞれ増加している。12月から3月にかけても同様に多くの地域で横ばいないし減少している中、「休校などによる学習の遅れ」は東京都、甲信越で、「休校などにより身体的な成長が十分でないこと」は甲信越で、「休校などにより精神的な成長が十分でないこと」は北海道、甲信越、北陸で、それぞれ増加している。

高齢の家族に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「生活維持が難しくなる」は北陸、中国、北九州で、「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は東北、愛知県、中国でそれぞれ高く、第3回調査を実施した昨年12月時点では、「生活維持が難しくなる」は北関東、甲信越、北陸で、「運動不足による老化や身体機能低下」は北関東、中国、四国で、「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は北陸、中国で、それぞれ高くなっている。また、第4回調査を実施した今年3月時点では、「生活維持が難しくなる」は北関東、北陸、中国、北九州で、「運動不足による老化や身体機能低下」「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は中国で、それぞれ高くなっている。9月から12月にかけての変化では、「生活維持が難しくなる」は北関東、東京都、甲信越、近畿および大阪府、四国で、「運動不足による老化や身体機能低下」は甲信越、大阪府、中国、四国で、「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は北陸、大阪府、四国でそれぞれ増加する一方、「生活維持が難しくなる」は北九州、南九州で、「運動不足による老化や身体機能低下」は東北、北陸、東海および愛知県、南九州で、「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は北海道、東北、甲信越、愛知県で減少している。また、12月から3月にかけては、いずれの項目についても多くの地域で横ばいないし減少している中、「生活維持が難しくなる」は中国、南九州で、「運動不足による老化や身体機能低下」は東北、東京都、南九州で、「コミュニケーション機会減少による老化や認知機能低下」は北海道、東北、南九州で、それぞれ増加している。
図表4 家族関係不安(子どもや高齢家族)

6――人間関係不安

6――人間関係不安

人間関係に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「友人や知人との関係に距離ができる」は東海で、「新たな出会いが減る」は中国、四国で、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」は甲信越、北九州、南九州で、「家族と過ごす時間が増え、ストレスが溜まる」は北関東、東海および愛知県で、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」は北関東、北陸、東海および愛知県で、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」は東北で、それぞれ高く、第3回調査を実施した昨年12月時点では「友人や知人との関係に距離ができる」は東北で、「新たな出会いが減る」は甲信越、中国、四国で、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」は甲信越、北陸、北九州、南九州で、「家族と過ごす時間が増え、ストレスが溜まる」は甲信越、北陸、愛知県で、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」は北陸、四国で、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」は北陸で高くなっている。また、第4回調査を実施した今年3月時点では、「友人や知人との関係に距離ができる」は東北、中国で、「新たな出会いが減る」は東北、四国で、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」は四国で、「家族と過ごす時間が増え、ストレスが溜まる」、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」は愛知県で、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」は北関東で、それぞれ高くなっている。

9月から12月にかけての変化では、いずれも横ばいないし減少する地域が多い中、「友人や知人との関係に距離ができる」は四国で、「新たな出会いが減る」は甲信越で、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」は甲信越、北陸、中国、四国で、「家族と過ごす時間が増え、ストレスが溜まる」は甲信越、北陸、四国で、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」は北海道、東京都、甲信越、四国、北九州で、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」は北陸、四国でそれぞれ増加している。一方、12月から3月にかけては、「友人や知人との関係に距離ができる」は北海道、東北、北関東、北陸、中国で、「新たな出会いが減る」は北海道、東北、北関東、北陸、四国で、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」は北海道、四国で、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」は東海および愛知県で、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」は北関東、中国、北九州でそれぞれ増加し、「友人や知人との関係に距離ができる」の東京都、甲信越、「新たな出会いが減る」の甲信越、東海、大阪府、中国、北九州、「監視が厳しくなり、他人に寛容でなくなる」の甲信越、北陸、中国、北九州、南九州、「家族と過ごす時間が増え、ストレスが溜まる」の東北、北関東、甲信越、北陸、近畿、北九州、南九州、「家族と過ごす時間が増え、一人の時間が減る」の甲信越、北陸、四国、北九州、「非対面のコミュニケーションが増え、トラブルが増える」の東京都、甲信越、北陸、東海および愛知県でそれぞれ減少している。
図表5 人間関係不安

7――行動不安

7――行動不安

コロナ禍での行動に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「感染リスクから、店舗での買い物がしにくくなる」は東北、甲信越で、「感染リスクから、電車やバスを利用しにくくなる」は南関東および東京都で、「感染リスクから、タクシーを利用しにくくなる」は東北で、「感染リスクから、飛行機を利用しにくくなる」は北海道、南九州で、「感染リスクから、外食がしにくくなる」は北陸で高く、第3回調査を実施した昨年12月時点では、「感染リスクから、店舗での買い物がしにくくなる」は四国、南九州で、「感染リスクから、電車やバスを利用しにくくなる」は南関東および東京都で、「感染リスクから、タクシーを利用しにくくなる」は北海道、四国で、「感染リスクから、外食がしにくくなる」は甲信越、北陸、四国で高くなっている。また、第4回調査を実施した3月時点では、「感染リスクから、店舗での買い物がしにくくなる」は東海で、「感染リスクから、電車やバスを利用しにくくなる」は愛知県で、「感染リスクから、タクシーを利用しにくくなる」は東北、中国で、「感染リスクから、飛行機を利用しにくくなる」は北海道、南九州で、「感染リスクから、外食がしにくくなる」は甲信越、北陸、四国で高くなっている。

9月から12月にかけての変化では、「感染リスクから、店舗での買い物がしにくくなる」は多くの地域で増加ないし横ばいの状態にあるなか、北海道、東北、愛知県では減少している。また、「感染リスクから、電車やバスを利用しにくくなる」は多くの地域で減少ないし横ばいの状態にある中、中国、四国、北九州、南九州で増加している。「感染リスクから、飛行機を利用しにくくなる」も同様に多くの地域で減少ないし横ばいの状態にある中、四国、北九州で増加している。一方、「感染リスクから、外食がしにくくなる」は北関東、甲信越、北陸、近畿および大阪府、四国、北九州で増加し、東北、東海および愛知県では減少している。12月から3月にかけては、ほとんどの項目、地域で減少ないし横ばいの状態にある中、「感染リスクから、電車やバスを利用しにくくなる」の東北、北関東、東海、「感染リスクから、タクシーを利用しにくくなる」の東北、「感染リスクから、飛行機を利用しにくくなる」の北海道、中国、「感染リスクから、外食がしにくくなる」の東北、中国では増加している。
図表6 行動不安

8――結果の総括

8――結果の総括

以上みてきたとおり、感染不安、経済不安、働き方不安、家族関係不安と人間関係不安、行動不安と、いずれの局面における不安についても、各調査時点である昨年の9月、12月、今年3月の3時点間ではそれぞれ様々に変化している上、地域によってもそれぞれ異なっていた。こうした差異は生活行動や生活時間と同様、それぞれの時点、それぞれの地域における感染拡大の状況のほか、在宅勤務に関わる不安や交通手段に関する不安など、それぞれの地域固有の特性による影響も受けた結果であるように思われる。ただし全国的な傾向としてみれば、昨年の9月から12月にかけては、1月の緊急事態宣言の発出につながる感染拡大傾向を、12月から3月にかけては、緊急事態宣言が解除されるまでの感染者数の減少傾向のほか、冬から春という季節の移り変わりに伴う気分の変化を、それぞれ受けた結果が現れているものと考えられよう。
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生活研究部   主任研究員

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

(2021年05月11日「基礎研レター」)

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