2021年01月28日

米FOMC(21年1月)-予想通り、実質ゼロ金利、量的緩和政策を維持

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、実質ゼロ金利、量的緩和政策を維持

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が1月26-27日(現地時間)に開催された。FRBは、市場の予想通り、現行の実質ゼロ金利、量的緩和政策の維持を決定した。一方、今回発表された声明文では、景気の現状判断部分で経済活動と雇用が前回の「回復が続いている」から「回復ペースがここ数カ月で緩やか」に下方修正された。一方、景気見通し部分では、公衆衛生の危機の影響に関して、経済活動、雇用、インフレに関する記述から「短期的」が、経済見通しに関する記述から「中期的」との時間表現が削除された。金融政策ガイダンスに変更は無かった。

今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。

2.金融政策の評価:全般的にハト派的な内容。現在の金融緩和政策の長期化を確認

政策金利や量的緩和政策に変更がなかったことは予想通り。また、12月の雇用統計で雇用者数が減少に転じたこともあって、経済活動や雇用で足元の景気判断が下方修正されたほか、金融緩和政策の長期化方針が確認されるなど全般的にハト派的な内容であった。

FOMC会合後の記者会見でパウエル議長は、足元で経済活動が減速しているとの評価を示す一方、ワクチン接種による感染抑制や追加経済対策の効果によって年後半に経済見通しが改善される可能性を示唆した。

また、会見後の質疑ではFRBの実質ゼロ金利や量的緩和政策によって株式市場がバブルになっているのではないとの質問があったが、同議長は最近の株価上昇はワクチンや財政政策への期待であるとし、金融政策が要因となっていることを否定したほか、資産バブルに対処するために金融政策を活用することについて否定的な見方を示した。

一方、量的緩和政策の買い入れ規模縮小(テーパリング)の時期について、同議長は12月にガイダンスを強化したばかりで話しをするのは時期尚早であると述べ、当面は現在の買い入れペースが維持される方針を示した。

当研究所はインフレ率がFRBの物価目標に到達するのは23年で、物価目標到達後もFRBが暫く利上げを見送る方針を示していることから、実質ゼロ金利政策が解除されるのは早くても24年以降、前回の量的緩和解除と利上げ時期の関係から判断すると、量的緩和政策が解除されるのは23年以降と予想している。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • 委員会はFF金利の目標レンジを0-0.25%に維持することを決定(変更なし)。
  • FRBは引き続き、米国債の保有を少なくとも月800億ドル、エージェンシーの住宅ローン担保証券(MBS)の保有を月400億ドルそれぞれ増やし、委員会の目標である雇用の最大化と物価安定に向けて一段と顕著な進展があるまでそれを継続する(変更なし)
 
(フォワードガイダンス)
  • 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • インフレ率がこの長期目標を持続的に下回っていることから、委員会は長期的にインフレ率が平均2%となり、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと固定されるよう、当面2%をやや上回る水準のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • 委員会は、これらの結果が達成されるまで、緩和的な金融政策のスタンスを維持すると予想する(変更なし)
  • 委員会は、労働市場の状況が雇用の最大化との評価に一致し、インフレ率が2%に上昇して、しばらくの間2%をやや上回るとの見通しに沿うまで、この目標レンジを維持することが適切であると予想する(変更なし)
  • 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
  • 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
 
(景気判断)
  • 新型コロナの流行は米国と世界各地に甚大な人的、経済的困難を引き起こしている(変更なし)
  • 経済活動と雇用の回復ペースはここ数カ月で緩やかになっており、パンデミックの影響を最も受けたセクターに弱さが集中している(経済活動と雇用の評価を「回復が続いている」”continue to recover”から「緩やかになって」”has moderated”に下方修正)
  • 需要の弱まりと先にみられた原油価格の下落は、消費者物価の上昇を抑制している(変更なし)。
  • ここ数カ月で全般的な金融環境は、経済および、家計や企業への信用の流れを支えるための政策措置を一部反映して引き続き緩和的だ(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 経済の行方はウイルスの成り行きに大きく左右される(変更なし)
  • 現在進行中の公衆衛生の危機は、経済活動、雇用やインフレに重くのしかかり、経済見通しに大きなリスクをもたらす(前回から経済活動、雇用やインフレにかかる「短期的には」”in the near term”の表現が削除されたほか、経済見通しにかかる「中期的に」”over the medium term”の表現を削除

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 
  • パウエル議長の冒頭発言
    • FRBは議会が示した金融政策目標である雇用の最大化と物価の安定を達成することに強くコミットしている。本日、政策金利をゼロ近傍に保ち、相当程度の資産購入を維持した。これらの措置は経済に強力な支援を提供し続けることを確保する。
    • ここ数ヵ月間の新型コロナの感染再拡大は数百万人の米国人に多大な困難をもたらせており、経済活動と雇用を圧迫している。サービスへの家計支出は依然として低く、特に旅行や宿泊など人が近くに集まることを必要とする分野で厳しくなっている。
    • 我々は現在直面している課題を過少評価すべきではないが、いくつかの進展は年後半に見通しが改善することを示している。ワクチン接種が十分に広まれば、パンデミックを過去のものとし、より正常な経済活動に戻ることが出来るだろう。財政政策による支援は家計や企業が景気後退を乗り切る助けとなるだけでなく、景気回復を阻害しかねない経済への長期的なダメージを抑えることにもなる。
    • 雇用の最大化と委員会が評価する水準に労働市場の状況が到達し、インフレ率がしばらくの間2%をやや上回るまでは現在の0-0.25%の政策金利を維持する。
    • 雇用の最大化と物価安定の目標に向けて実質的な進展がみられるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有額を毎月400億ドル以上増やしていく。
    • 経済状況は雇用とインフレ目標から大きくかけ離れており、実質的な進展が達成されるまでにはしばらく時間がかかる可能性が高い。
 
  • 主な質疑応答
    • (ゼロ金利政策や量的緩和策が、破裂した場合に経済的低迷を引き起こす可能性があるバブルを助長している懸念にどう対処するのか)パンデミックによる失業者や経済活動への衝撃は過去に例がないものだった。実質的な失業率が10%となる中で金融政策が非常に緩和的になるのは適切である。最近の株価上昇はワクチンや財政政策への期待であり、金融政策が要因ではない。金融の安定性の問題に対処する際には、金融政策よりもマクロプルーデンス、規制、監督、その他の手法に目を向ける。
    • (景気回復に関連してインフレが短期的に上昇した場合、それが一時的か持続的かどのように判断するのか)前年の3月~4月に低かった反動や、パンデミック終了期待から消費が爆発的に増加することに伴ってインフレが上がることは一時的な上昇と判断する。今目にしていることがインフレを悪化させることになるとは考えにくい。
    • (テーパリングの時期について)この前、量的緩和のガイダンスを作成した。日程の話をするのは時期尚早で進捗状況に焦点を当てるべきだ。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年01月28日「経済・金融フラッシュ」)

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