2020年12月24日

米個人所得・消費支出(20年11月)-個人消費が前月比で20年4月以来となる7ヵ月ぶりの減少

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想を上回る減少幅

12月23日、米商務省の経済分析局(BEA)は11月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比▲1.1%(前月改定値:▲0.6%)と▲0.7%から小幅上方修正された前月からマイナス幅が拡大、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲0.3%を大幅に下回った(図表1)。個人消費支出は前月比▲0.4%(前月改定値:+0.3%)と+0.5%から下方修正された前月から7ヵ月ぶりにマイナスに転じたほか、市場予想(▲0.2%)も下回った。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.4%(前月改定値:+0.3%)とこちらも+0.5%から下方修正された前月からマイナスに転じ、市場予想(▲0.3%)を下回った(図表5)。貯蓄率1は12.9%(前月:13.6%)と、前月から▲0.7%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:横這い)となり、市場予想(+0.1%)を下回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も横這い(前月:横這い)とこちらも市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+1.1%(前月:+1.2%)と前月、市場予想(+1.2%)を下回った。コア指数は+1.4%(前月:+1.4%)と前月、市場予想(+1.4%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費が20年4月以来となる7ヵ月ぶりの下落

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 11月の個人消費は前月比で新型コロナの感染拡大と経済活動の制限により大きく落ち込んだ20年4月(▲12.7%)以来7カ月ぶりに下落に転じた(図表1)。

政策効果の剥落に伴って政府からの移転所得の減少が続く中、足元で新型コロナの1日の新規感染者数が新型コロナ流行以来最多となるなど感染拡大に拍車が掛かっており、一部の州では再び経済活動を制限する動きがみられていることなどが影響したとみられる。

連邦議会は1人当たり600ドルの直接給付第2段や、失業保険の週300ドルの追加給付を含む9,000億ドル規模の追加経済対策案で合意したものの、大統領が署名に難色を示しており、早期成立の目途は立っていない。このため、当面は可処分所得の減少を通じて消費は軟調に推移しよう。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともにFRBの物価目標(2%)を大幅に下回っているほか、総合指数は2ヵ月連続で伸びが鈍化するなど、足元で物価上昇圧力は高まっていない。また、12月に発表されたFRBの物価見通しでも23年末に漸く2%に到達するとの見方が示されるなど、物価目標の達成には相当時間を要するとみられる。

3.所得動向:政策効果の剥落から、自営業者所得、移転所得が減少

11月の個人所得は賃金・給与は前月比+0.4%(前月:+0.7%)とプラスとなったものの、自営業者所得が▲8.5%(前月:+1.5%)となったほか、移転所得が▲3.3%(前月:▲6.1%)とマイナスになり全体を押し下げた(図表2)。自営業者所得では政策効果の剥落から農業部門で給与保護プログラム(PPP)が前月比年率▲662億ドル減少したほか、農家向けの所得補償プログラムも▲45億ドル減少した。また、非農業部門もPPPが▲1,450億ドル減少した。

さらに、政府からの移転所得は、失業保険の追加給付の代替手段として災害対策予算を活用した所得補償策が財源の枯渇により前月比年率▲736億ドル減少したことをはじめ全体で▲1,267億ドル減少した。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、11月の名目が▲1.2%(前月:▲0.7%)、価格変動の影響を除いた実質ベースが▲1.3%(前月:▲0.8%)となり、名目、実質ともに2ヵ月連続でマイナスとなった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:全般的に前月から減少

11月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲1.0%(前月:▲0.1%)、サービス消費が▲0.2%(前月:+0.5%)といずれもマイナスとなった(図表4)。

財消費では、耐久財が▲1.7%(前月:+0.8%)、非耐久財が▲0.6%(前月:▲0.6%)と耐久財が前月からマイナスに転じたほか、非耐久財は2ヵ月連続のマイナスとなった。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲3.6%(前月:▲0.6%)となったのを筆頭に家具・家電▲0.6%(前月:+0.6%)、娯楽財・スポーツカー▲0.3%(前月:▲1.2%)、その他耐久財▲2.2%(前月:+0.8%)とすべての分野でマイナスとなった。

非耐久財では、食料・飲料が+0.8%(前月:▲0.5%)のプラスとなったものの、衣料・靴が▲3.9%(前月:▲1.5%)、ガソリン・エネルギーも▲2.3%(前月:▲2.7%)とマイナスとなった。

サービス消費は娯楽サービスが+1.8%(前月:+1.5%)、医療サービスが+0.9%(前月:+1.0%)とプラスとなったものの、外食・宿泊が▲3.9%(前月:▲0.8%)、輸送サービスが▲2.2%(前月:▲0.1%)、住宅・公共料金も▲0.7%(前月+0.5%)とマイナスとなり全体を押し下げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前月比ではエネルギー価格が6カ月連続で物価を押し上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.4%(前月:+0.1%)と6ヵ月連続プラスとなったほか、前月から伸びが加速した(図表6)。また、食料品価格指数は▲0.2%(前月:+0.1)と前月からマイナスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲9.9%(前月:▲9.6%)と9ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+3.7%(前月:+3.9%)と、こちらは17年7月以来41ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年12月24日「経済・金融フラッシュ」)

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