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「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(5)―2018年婚姻届全件分析(再婚女性&総括編)―
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
成婚がピークアウトした成婚発生イエローゾーンともいえる、婚姻届の7割ならびに8割に到達する年齢は、初婚男性は32歳と34歳半ば、初婚女性は30歳と32歳で2歳の差でしかない。人口動態調査では初婚夫婦の平均年齢差は1.7歳となってしばらくたつが、初婚男女の成婚状況も届け出の8割到達まで、ほぼこの2歳差で推移している。
昨今の晩婚化のイメージ(平均初婚年齢の上昇でイメージされがちである)は、統計上のピーク年齢との間に3歳以上の差があること(結婚しやすい年齢を高くイメージし過ぎる傾向)、そしてここが今回の分析結果において最も重要な点であるが、初婚男女では結婚適齢期に大きな差がない、ということである。
では、なぜ過大な晩婚化のイメージが根強く社会に流布しているのだろうか。
婚姻統計の分析者として2点、改めて強調しておきたい。
まず、シリーズ第3弾で解説した「平均初婚年齢を根拠とした晩産化イメージの一般認知度の高さの影響」は非常に大きい。
メディア報道や結婚に関する議論において、晩産化の象徴のように出される数字は決まって「平均初婚年齢の上昇データ」である。これまでのレポートにおける説明の繰り返しになるが、あくまでも平均値であって、実際の成婚件数の発生の分散状況から見た「発生件数の多い時期」と比べると、男女とも3歳以上も高く算出されている。
しかし「(平均)年齢をデータで確認している」という自信を読者に与えてしまいがちであり、高齢化によって60代以降80歳を過ぎても延々と少数であっても成婚が発生し続けている、という「統計的外れ値の集合体の影響」による平均年齢の3歳以上の上昇が全くイメージされていない。
もう一つは、再婚割合の上昇である。
今の団塊ジュニアが生まれた1971年から73年(現在40代後半人口)では、男性の再婚者は8%、女性の再婚者は6%であった。両親のどちらかが再婚者である、といった生育歴を持つ人々は非常に少ない。1980年に成婚したカップルであっても、男女ともに再婚者割合は10%、1990年でも男性13%、女性11%に過ぎない。しかし、2018年では男性20%、女性17%にまで再婚者の割合が上昇しており8、その結果、読者が身近に感じる「肌感覚での結婚」に、実は再婚者を含むカップル(4組に1組)が増えていることが、一般の成婚年齢のイメージをさらに晩婚化させていると思われる。
図表5からも、再婚者の結婚適齢期は初婚者に比べ、相手の婚歴問わず5~7歳程度年齢が高くなる。詳細は別のレポートに譲るが、男性の場合、40代後半以降の成婚は、そのほとんどが再婚者の成婚となっている。
5回のシリーズを通して読者に訴えたいことは、「若い世代のライフデザインを狂わせかねない誤った結婚年齢への思い込み」をできるだけ早く払拭する必要性がある、ということである。
どんなに高齢化社会となり、また健康増進策が進められても、「次世代人口が形成されるようなマッチングには、男女ともにマッチング相手に選ばれる年齢を含め、一定のバイオロジカル・リミットがある」ということ9を、人口動態の研究者として強く主張してこのシリーズの結語としたい。
8 2004年に男性18%、女性16%に達した。
9 フランスにおいては1990年代に広く社会に流布した考え方である。日本においては女性のみならず男性もしっかりと婚期とそれに連動した授かり期があることが認識されることによって、マッチング希望が叶う割合が進展することを願いたい。
【参考文献一覧】
厚生労働省.「人口動態統計」
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月16日
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(2)―2018年婚姻届全件分析(再婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月20日
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(3)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その1)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年12月7日
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(4)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その2)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2021年1月4日
天野 馨南子.「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差婚の希望の叶い方. ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年2月20日
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月14日
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月28日

03-3512-1878
(2021年01月18日「基礎研レポート」)
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