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「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(4)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その2)―

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
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はじめに
第4弾第1回目では、初婚女性の結婚の9割を占める初婚男性との結婚年齢についての分析結果を解説した。第2回目では初婚女性の結婚の1割を占める、再婚男性との結婚について詳説したい。
シリーズ第3弾までの結果から、男性に関しては総じて、一般的な結婚適齢期のイメージと統計的な事実の間に圧倒的な乖離が生じていることが示された。
また、初婚女性に関しては、一般的によく知られている「平均初婚年齢」が示す年齢と、統計的な成婚ピークの間に、看過することがリスクとなりかねない差が生じていることが示された1。
結婚というライフデザインに大きな影響をもたらす事象の適齢期の事実について、広く一般的に大きな誤解が生じている。このような状況を放置することは、人々のライフデザインの実現可能性を揺るがす大問題である、との観点から、今回も丁寧な解説を心がけたい。
前回までと同様、データソースには、厚生労働省「人口動態調査」に掲載されている、2018年における婚姻届の集計結果を用いているため、ニッポンの結婚、についての全数分析2の結果である。
1 初婚男性の結婚年齢については、当シリーズレポートの第1弾を、再婚男性については第2弾を参照されたい。
2 全数分析=単純にその年に役所に提出された届のすべてではない。ある条件の下で、集計対象となる届についての分析であるが、提出件数すべてと勘違いしてしまう読者もいるようなので、注意喚起しておきたい。
1――相手が再婚男性の場合は5歳のモラトリアム
図表からは、再婚男性と成婚した初婚女性の婚姻届の5割以上が32歳までに提出されているため、再婚男性との結婚に限定した場合の初婚女性の結婚適齢期は32歳である。初婚男性との成婚と比べると、32歳-27歳で5歳上昇する。
成婚届の7割に達する年齢が36歳、8割に達する年齢が39歳と、初婚男性との成婚に比べれば緩やかな上昇となる、とはいうものの、やはり40歳以降は「再婚男性でも構わないので」という表現はあてはまらない状況となる。
結婚希望が明確な場合は、相手の婚歴を問わずであっても、30代までの成婚に向けた活動が必要である様子が示されている。
結婚希望が明確な場合、30代までの活動が重要である点は、それが初婚男性の場合(レポート第2弾参照)であっても大差がみられないことから(初婚男性の再婚女性との結婚の7割が40歳、8割が43歳までで発生)、初婚男女の40代以降の成婚に向けた活動は、それまでと比べてかなり厳しい状況となることが改めてみてとれる。
また婚姻届が9割に達する年齢は43歳であるため、40代後半以降の活動は相手を再婚男性に限定した場合でも、非常に厳しいという認識はもっておきたい。
3 国のデータにおいて各歳集計の対象となる婚姻件数は、単に入籍するだけでなく、同年内に生活を共にする、もしくは挙式を行っている、という生活実態も伴っているであろうと思われる成婚のみとなる。ただし、実態を伴ってはいるものの年度をまたいで入籍、挙式の順となったケースなどは欠落する。ただ、全体の規模から考えて適齢期分析に影響する条件とまではいえない。
2――初婚女性の婚姻、初婚男性+再婚男性を合わせた結果
相手の婚歴を問わず初婚女性の婚姻届が5割、7割、8割、9割に到達する年齢は、それぞれ27.5歳、30.5歳、33歳、36.5歳あたりとなっており、相手を初婚の男性に限定した場合と比べて、0.5歳上昇する。いずれにしても8割を超える33歳以降は非常に成婚が厳しくなることが示される結果となった。
4 15歳から集計がスタートしているのは、婚姻統計における「婚姻件数」の計上が「夫妻の年齢は、結婚式をあげたとき、または、同居を始めた時の年齢である」ため。例えば、授かり婚のケースにおいて、先に挙式を行い、16歳以降に入籍する、といったケースが該当する。
3――結婚適齢期の山の図は変わるのか
これは何を示しているのだろうか。
成婚数が最も多いピーク年齢は、男性が27歳、女性が26歳であるが、その年齢の前後で一気に成婚が発生しており、短い期間に成婚の発生が集中している、ということである。もっとわかりやすくいうならば、「結婚適齢期はピーク年齢を中心に男女とも短い」のである。
このことについて、若い男性読者からは
「学歴で2極化して、もっと緩やかな2こぶラクダのようになっているのかと思っていた」
「平均初婚年齢の31歳を知っていたので、30歳を過ぎても余裕かと思っていた」
などの声を聞く。また、若い女性からは「29歳手前で決められればと思っていた」といった意見も寄せられる。
男女それぞれにとって、30歳以降の成婚が予想以上に短期決戦かつ厳しいという感想であるが、では、この急角度の底辺の短い山の図は変わることがあるのだろうか。
結婚相談所からは、「女性の方が結婚できなくて困っている、女性も30歳にもなると結婚させるのが大変だ。だって20代、30代では女性登録者の方が男性より多いし、結婚イベントでも女性の方が早く満席になる」といった声を聞く。
しかし、統計的実態は、20代、30代と女性の未婚割合は男性よりもかなり低い(図表3)。60代くらいまで男女人口に大差がないが、未婚割合で常に男性が女性を上回っている。最新(2015年)の国勢調査結果からは、50歳で4人に1人の男性に婚歴がないほどに、ニッポンの男性の未婚化は顕著である、というのが事実である。
女性は土俵に上がったものの、40代以降の年齢の高い男性の参入割合が高いために、マッチングできずに足踏みしている、といった状況となる。しかし、女性は自らと年齢が同じくらいであれば結婚が可能であると考える傾向が強く、また再婚者にも目を向けることから、50歳時点では7人に1人の未婚割合となる。
20代の男性は結婚相談所では極めて少ない出現率ではあるが、結婚を主たる目的としないマッチングアプリでのデート相手探し市場には、大手マッチングアプリ企業数社へのヒアリングによると、女性よりも高い割合(6:4程度)で参加しているという。
そんな彼らもようやく30歳過ぎあたりから、結婚相手を意識した活動をスタートするものの、30代、40代になってもかわらず20代の若い女性との結婚を希望するという相手の年齢へのこだわり固定化の傾向が非常に強い5。
初婚男性の成婚年齢の発生分布のグラフのピーク年齢より上の年齢における成婚数の急落は、彼らが希望する20代女性には選ばれないから、ということの影響が大である6。全国の自治体結婚支援センターでの共通の悩みとして「50代になっても20代の女性をかたくなに希望するが、マッチングしない」という悩みがある。
もし彼らが女性同様に同世代の離婚歴のある相手や、少し年上の相手も候補に含められるならば、それなりに結婚相手の数は存在するため、成婚しやすくなる(図表3)7。
シリーズで解説してきた初婚同士の成婚発生年齢の棒グラフでは、初婚男女とも同じような急角度の山をみせていることが示されたものの、男女ではその理由が少々異なっている。
女性はピーク年齢の前後に成婚数が一気に多数集中し(未婚者の母集団の大きな減少が発生)、それによって、その後の成婚が年々大きく減少していく構造となっている。一方、男性は、自らの年齢が上昇しても20代の若いパートナーとの成婚希望をなかなか捨てられないため、それによって成婚数が年々加速度的に減少していく、という様相が統計データと現場報告からは浮かび上がってくる。
次回は本シリーズの最終レポートとして、再婚女性の結婚適齢期について解説を行いたい。
【参考文献一覧】
厚生労働省.「人口動態統計」
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月16日
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(2)―2018年婚姻届全件分析(再婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月20日
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(3)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その1)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年12月7日
天野 馨南子.「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差婚の希望の叶い方. ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年2月20日
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月14日
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月28日
(2021年01月04日「基礎研レポート」)
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- 2017年婚姻届における初婚男女の年齢組み合わせランキング(1)-なぜ結婚希望が叶わないのか-令和時代の男女年齢ゾーン別組み合わせ発生状況
- 2017年婚姻届における初婚男女の年齢組み合わせランキング(2)-なぜ結婚希望が叶わないのか-10・20代男性編/妻の年齢ゾーン別分布状況
- 2017年婚姻届における初婚男女の年齢組み合わせランキング(3)-なぜ結婚希望が叶わないのか-30代男性編/妻の年齢ゾーン別分布状況
- 2017年婚姻届における初婚男女の年齢組み合わせランキング(4)-なぜ結婚希望が叶わないのか-40代男性編/妻の年齢ゾーン別分布状況

03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は年度最新順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
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2025/03/24 | 若い世代が求めている「出会い方」とは?-20代人口集中が強まる東京都の若者の声を知る | 天野 馨南子 | 研究員の眼 |
2025/03/07 | 若い世代が結婚・子育てに望ましいと思う制度1位は?-理想の夫婦像激変時代の人材確保対策を知る | 天野 馨南子 | 基礎研マンスリー |
2025/02/05 | 【地方創生・人口動態データ速報】2024年 社会減(国内移動純減)都道府県ワーストランキング-日本人と外国人の合計で移動純減は40エリア- | 天野 馨南子 | 基礎研レター |
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