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2017年婚姻届における初婚男女の年齢組み合わせランキング(1)-なぜ結婚希望が叶わないのか-令和時代の男女年齢ゾーン別組み合わせ発生状況
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに
1970年には初婚同士の結婚が89%を占め、再婚者を含む結婚(再婚者同士+どちらかが再婚)は10組に1組程度であった。それが2017年には初婚同士の結婚が全体の73%へと減少し、再婚者を含む結婚が27%、4組に1組を超え、3割近くまで上昇してきている。
その他にも、初婚同士の結婚において、男性年上婚の割合が全体の55%まで減少する一方、女性年上婚が4組に1組まで増加し、夫婦同年齢婚を件数で上回るなど、質的変化を挙げればきりがない。
今回はそのような大きな結婚の「質の変化」にともない、結婚を希望して活動する男女の意識と結婚の現実との間に最も歪(ひずみ)が表れていると考えられる「夫婦の年齢の組み合わせ」について特集してみたい。
36万件の真実-初婚同士の結婚は、20代後半同士男女の組み合わせが圧倒的
2位の「30代前半同士」と、3位の「20代後半女性と30代前半男性」の組み合わせはほぼ同率の1割であるが、この2位、3位の件数を圧倒する件数(2位の2.4倍、2位3位の件数合計を上回る)となっている(図表2)。
このことから、晩婚化とは言うものの、
(1) 日本におけるもっとも成立しやすい初婚カップル(以下、カップルと略)は、男女ともに「20代後半」である
と断じることが出来る。
さらに、上位5位までの組み合わせで、すでに全体の成婚の上位65%を占めており、そのうち、20代が占める割合は女性83%、男性67%であるため、男女差はあるものの、男女ともに20代の成婚が30代の成婚を大きく上回ることが見て取れる。つまり、
(2) 平均初婚年齢のイメージからアラサー結婚を考える男女が少なくないが、アラサーといっても30代前半よりは20代後半の結婚が「男女とも」大きく上回る
ということを注意したいところである。
さらに上位10位までの組み合わせでみると、全体の83%の成婚を含むことになるが、その中に男女とも40代の成婚は含まれていない(図表2)。
つまり、40代からの結婚は男女とも発生しやすい組み合わせで見て上位83%に入ってきていない。このことから、
(3) 40代で初婚を目指す活動は、「男女とも」発生確率的に見て上位83%に入らないため、そう簡単ではない
ということが指摘できる。
筆者は、全国の様々な自治体の結婚支援センターや民間の結婚相談所、結婚応援を行なうNPOなどの相談を受ける機会があるが、特にこの(3)については、女性よりも男性において圧倒的に理解が進んでいないことが問題となっている。
36万件の真実-50代の初婚結婚は至難の業
なぜ「問題視」されるのか、データで確認したい。
年間成婚数における発生確率マップとも言える上記の初婚男女年齢の組み合わせランキングであるが、初婚の50代の男性が初登場するのは組み合わせの多い順にみて32番目以降となる(図表3)。
最も多い40代前半女性との組み合わせで見ても発生確率は全体の0.1%であり、514件であった。514件と聞くとかなり多いのではないか、と考える読者もいるかもしれない。しかし、発生全体36万件の0.1%であり、また、発生確率の高い組み合わせの上位98.6%(31位までの件数)に入ってこない1、ということを留意したい。
(4) 50代の初婚は成婚しやすい組み合わせの上位98.6%に入らないため、「男女ともに」
非常に厳しいといえる
(5) 50代の初婚男性で、発生確率は低いものの成婚している組み合わせで最も多い相手は
40代前半女性である
男女とも、40代、50代の結婚は成婚全体に占める発生確率から見て、決して確率が高い状況ではないが、その現実に関しての認識の差が、男女で大きく異なっている。またこの認識の差異から、男性登録者の結婚マッチングシステムへの登録が女性よりも大きく遅れているのが現状である2。
先に支援現場で「問題視」されている、と述べたが、意識差の問題(発生確率の認知格差)から、結婚相談所や支援団体やサポーターが現在最も説得に苦慮しているのは、40代以降の男性登録者とこういった発生確率を理解していないその親族に対してとなっている。
結婚に向けた活動の中で、徐々に認知の歪みが是正される男性登録者もいるが、その場合でも「第2の壁」として、マッチング相手の女性の年齢への理解が出来ない男性側の親族のブロックへの苦慮の声があがっている。
希望する事象の発生データを正しく理解するためにも、次回も続編で最新の結婚年齢ゾーン別にみた組み合わせ発生状況のさらなる解説を行なっていきたい。
1 しかもこの発生確率は成婚した男女における確率であり、希望はあるものの成婚にいたらなかった男女は母数に含まれないことも留意したい
2 本稿では省略するが、20代30代では女性の登録者が男性登録者を大きく上回り、男女の登録者数がバランスするのはようやく40代からとなる。50代では圧倒的に男性登録者が占めるように変化する。
(2019年12月02日「研究員の眼」)
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03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は年度最新順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
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