コラム
2018年09月25日

シリーズ・IT婚時代の「運命の人の探し方」-第1回 意味づけ「単純化」の罠

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子
国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 研究主幹   宇野 毅明

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はじめに

近年、ITによる情報技術が、人々の行動様式に変化をもたらす事例が増えてきている。
個人のパートナー探し(婚活というとキャッチーではあるものの、まるで就職活動のようで義務感や採用・非採用などのイメージから「上下関係」をほうふつとさせてしまうのが、かえって結婚への嫌悪感を煽るところもあるので)においても、ITは個人の活動を活発化させているツールの1つとなっている。
 
しかし、情報技術は人々の活動様式を変えるだけではなく「結婚への価値観」にも影響を与えているのである。
そこで、本シリーズでは、情報技術の「リテラシー・検索・推薦」などが個人の活動にもたらす意外な影響、事象の「裏側」を紹介し、パートナー探しを進める読者の皆さんが迷子にならずに進めるよう、サポートすることを目的として執筆していきたい。
 
第一回は、データの意味づけ「単純化」の罠、について解説したい。

データの「意味づけの単純化」は危険

近年、データを調べ分析する手法で、世の実態を報告する記事が分野を問わずに増えてきている。
少子化、待機児童など社会事象においても枚挙にいとまがない。それらの記事は、数字を出すと共に、その数字に意味をつけている。そして、その意味付けは、同じデータであるにもかかわらず、人によって、時代によって大きく違うこともある。
少子化がいい例である。子どもの数が減っている。これは事実である。そして、その原因を考える、これが「意味づけ」である。
若い世代の恋愛感覚、晩婚・晩産化、男女の高学歴化、マタハラ問題、核家族化、給料下落、それはもういろいろな意味付けがされている。
 
たぶん、これらは「どれも本当で、どれもウソ」なのであろう。
いうまでもないことではあるのだが、社会は、1つの理由で説明できるほど単純ではないのである。しかし、複雑な理由を理解しようとするとき、人はときに理由をできるだけ単純にとらえたいと願う。どうしようもない、行き詰まった気持ちを抱える人ほど、特にそういう欲求にかられることになる。
 
そしてこの「理由を簡単にしたい欲求」は、自分のある考えを広めたい人、お金儲けをしたい人には非常に都合がいい。
「○○を食べればどんなガンでも治る」「このスキルを身につければ収入のいい職に就ける」「このペンダントをつければ女の子にもてる」などの広告メッセージを目にすることがよくあるだろう。
エセ科学やスピリチュアルで不当にもうけるビジネスがこの方法を活用している。起こっている事象が複雑で人々の悩みが深いものであればあるほど、効能を単純にうたうのは、本来は難しい。
 
「そんなことはわかっている」「諭されるまでもない、ばからしい」と思われるかもしれない。しかし、「よく考え、悩む人ほど」この罠に陥る危険性が高い。
 
複雑な物事を単純明確に理解しようとしてもできない。だからこそ、よく考えて思い悩む人ほど、複雑な事象を心に抱えることが苦痛となる。
エセ科学やスピリチュアルは、それが事実だと受け入れてしまえば、すべてを楽に理解できる。思い悩んでいる人ほど、よくよく考えて悩むタイプの人ほど、受け入れた時の心の安息が大きくなるのである。
 
パートナー探しで苦しむ人は、ついついうまくいかない理由を単純に作りたくなる。または、うまく行きそうな方法にすがりたくなる。
 
例えばよく見られるパートナー探し苦戦者の言葉に、このようなものが見られる。
 
「俺の給料が低いから何しても無理だ」「女は所詮、金だ」「もう40だから同じくらいの年齢の相手は売れ残りだ」「お料理が上手になれば結婚できますか」「結婚相談所には切羽詰ったろくな相手しか登録しないから、まずは合コンだ」「エリートでも女性だともてない」「ダイエットすれば結婚できる」
 
しかし現実はそんなに単純ではない。
ただ、単純な方法で解決できなくても、1つ1つの問題のクリアを「積み上げていくこと」はできる。ものの見方や考え方を広げ、沢山の人とトライアンドエラーを繰り返しつつ、失敗を糧にして「より嫌われないように」「より好意をもたれやすく」していけば、人格とまでいうと大げさではあるが、その人の価値観は深く豊かになっていくだろう。
 
複雑な物事は、単純には解決できない。しかし、これはネガティブな結論を意味してはいない。
単純には解決できないかわりに、その問題点のどこを攻略しても、改善にはつながる。
 
例えば、相変わらず見合いで断られ、デート後の返事では連戦連敗ではあっても、職場の人間関係がよくなってきた、職場の女性が魅力的に思えるようになった、などの「積み上げ」がおこりうる。
 
実際、もう10年以上も前のある大手結婚相談所においてのデータであるが、入会後、会員の「会員以外との成婚による1年以内の退会」が成婚者の半分程度を占めていた。
【図表1】1年以内の成婚割合(イメージ)
これは入会後に、会員同士のイベントや見合いによって試行錯誤したり、カウンセラーから助言を受けたりするなどして、徐々に本人の意識が変化したことが大きいという。会員間はどうしても単純な「条件検索」の枠内の相手になる。その条件に合うはずの相手に会ってもうまくいかないことが続く。
登録時には「それはないだろう」という条件を挙げていた男女が失敗を経験し、知見が変わり、意識が変わる中で「会社の隣の席にいた未婚者って実は素敵な人だったんだな。結婚市場でなかなか出逢える相手ではないんだな」と気づくのだという。そうなると積み重ねた改善結果からの「気づき」に裏付けられた「隣りの席の運命の人」との結婚への推進意欲も大きくなる。
 
非常に肯定的にいうなら、肉体は老いるが、人間性の魅力だけは、死の近くくらいまで上げ続けることはできるかもしれない。単純な解決の繰り返しが積み重なって、大きな目的達成につながってゆくのである。
 
数字は物事の一面の、その表面のみを表しているにすぎない。
にもかかわらず、複雑なものに向き合うことに疲弊した人には、「単純さ」はそれだけで大きな魅力にうつってしまう。
「意味づけの単純化の罠」は数字や情報が多ければ多い環境下ほど陥りやすい落とし穴であることを意識した上で、運命のパートナー探しを行いたいものである。
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生活研究部

天野 馨南子 (あまの かなこ)

宇野 毅明

(2018年09月25日「研究員の眼」)

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