2020年10月13日

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■要旨
 
  1. 世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響で急速に落ち込んだ後、緩やかに持ち直している。2020年の世界の実質GDP成長率は▲4.8%となり、世界金融危機(2009年の▲0.1%)を大きく下回ることが見込まれる。
     
  2. 新型コロナウイルスの感染力拡大や強毒化などにより再び厳しい活動制限が強いられることがないことを前提として、実質GDPの水準がコロナ前の2019年(度)に戻るのは、米国が2022年、ユーロ圏、日本が2023年(度)と予想する。
     
  3. 足もとの日本の潜在成長率はマイナスとなっているが、経済活動の停止による一時的なもので、日本経済の成長力が実態として落ちてしまったわけではない。潜在成長率は経済の正常化に伴い2020年代半ばにかけて1%程度まで回復した後、人口減少、少子高齢化が加速する2030年度にかけてゼロ%台後半まで緩やかに低下することが見込まれる。
     
  4. 2030年度までの10年間の日本の実質GDP成長率は平均1.5%と予想する。2020年度の急激な落ち込みの反動で2020年代前半が高めの成長となることが影響しており、これを除けば1%程度となる。消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は10年間の平均で1.3%と予想する。デフレに戻る可能性は低いが、賃金の伸び悩みが続くなかでは、物価目標の2%を達成することは難しいだろう。
実質GDP成長率の推移
■目次

1. パンデミックで急停止した世界経済
  ・収束が見えない感染拡大
  ・時間をかけウイルスに適応する生活へ
  ・政府債務、不良債権問題も課題
  ・新興国は相対的に高い成長率となるが、伸び率は徐々に低下
2. 海外経済の見通し
  ・米国経済
   -史上最長の景気拡大が新型コロナで一変、今後の経済動向は感染動向により不透明
  ・ユーロ圏経済-「グリーン」「デジタル」を柱に復興に取り組む
  ・中国経済-ウィズ・コロナ時代に入る中国経済の成長率は緩やかな低下傾向
  ・新興国経済-資本流入の減速も回復を阻害
3. 日本経済の見通し
  ・アベノミクス景気の振り返り
  ・新型コロナウイルス感染症の影響
  ・インバウンド需要はほぼ消失
  ・労働力率の上昇基調は途切れず
  ・新型コロナがデジタル化を加速させる契機に
  ・足もとの潜在成長率はマイナスだが、2020年代半ばまでに1%程度まで回復
  ・実質GDPがコロナ前の水準に戻るのは2023年度
  ・10年間の消費者物価上昇率は平均1.3%を予想
  ・経常収支は2020年代後半に赤字へ
  ・財政収支の見通し
4. 金融市場の見通し(メインシナリオ)
  ・日本の金融政策と金利
  ・米国の金融政策と金利
  ・ユーロ圏の金融政策と金利
  ・為替レート
5. 代替シナリオ
  ・楽観シナリオ
  ・悲観シナリオ
  ・シナリオ別の財政収支見通し
  ・シナリオ別の金融市場見通し
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【中期経済見通し(2020~2030年度)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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