- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通し
「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通し
金融研究部 主任研究員 吉田 資
このレポートの関連カテゴリ
4. 札幌中心部で進む再開発
こうした状況を踏まえ、札幌市は、「都心における開発誘導方針」や、「オフィスビル建設促進補助金7」を策定し、容積緩和やビルの建て替えに関する補助制度を整備した。2018年12月に策定された「都心における開発誘導方針」では、札幌市が掲げる「質の高いオープンスペースの整備」、「低炭素・省エネルギー化推進」等の目標を達成した場合、容積率の緩和が適用される(図表-13)。目標の1つである「高機能オフィス整備」は、新規進出企業等のニーズに対応できる設備を備えたオフィス8を整備した場合に、容積率が最大で50%緩和される。
JR札幌駅南口の「北4西3街区」では、地権者であるヨドバシホールディングスを中心に、大型複合ビル(延床面積約23万m2)を建設する計画が進んでいる。再開発事業案によれば、「低層部が高さ約50m、高層部が約240mのビルを建設するA案」と、「高さ約50mの低層部と低層部上部南側に約190mの業務棟、東側に約160mの宿泊棟を建設するB案」の2案が検討されている9。また、「北3西3街区」では、ヒューリック札幌ビル(延床面積約1.4万m2)と「ヒューリック札幌NORTH33ビル」(延床面積約1.1万m2)を一体開発する計画が進んでおり、2020年中に着工予定である10。
JR札幌駅の東側に隣接する「北5西1・西2地区」では、時間貸し駐車場に利用されている札幌市所有の「西1地区」とJR北海道グループが所有する商業施設「エスタ」の「西2地区」を一体的に再開発する計画が進んでいる。JR北海道は、「渋谷スクランブルスクエア」と同規模(高さ230m)の高層ビル建設を目指すとしており、2029年竣工予定である11。
札幌駅周辺以外の地区でも再開発が進んでいる。札幌市が再開発を推進する「創世1・1・1区(そうせい・さんく)12」の一つである「大通東1地区」では高層ビル建設が計画されている。同地区には、「北海道電力本店」や北海道中央バスの「中央バスターミナル」、「北海道四季劇場」が立地しているが、建て替えによる一体整備を行い、高さ123mの高層ビル(延床面積9.7万m2・2029年竣工予定)の建設が計画されている13。
6 石川勝利「札幌都心における開発誘導とオフィス需給の展望」vol.19 July,2020、RE-SEED、環境不動産普及促進機構
7 一定の要件を満たす賃貸事務所を整備する事業者に、賃貸事務所部分に対応する家屋・償却資産の固定資産税課税標準額の20%相当(上限10億円)を補助。
8 以下の条件を備えたオフィス
・1フロアのオフィス占有床面積が概ね1,000m2以上。・天井高さ2.7m以上、OAフロア100㎜以上
・各階のオフィス用に非常用電源設備の設置スペースを整備。・オフィスを小分けにできる構造の採用
9 建設通信新聞 「延べ23万平米想定/A案高層部は高さ240m/札幌駅南口北4西3地区再開発計画案」(2020年5月1日)
10 北海道建設新聞 「ヒューリックの札幌駅前通開発 20年度以降に新ビル着工」(2019年9月10日)
11 日刊建設新聞 「札幌市、JR北海道ら5者/北5西1・西2地区再開発/準備組合を設立」(2019年11月13日)
12 札幌市中央区の大通西1丁目、大通東1丁目、北1西1丁目の3街区を合わせた総称。
13 北海道建設新聞 「大通東1に再開発ビル 約10万m2、総事業費500億円超」(2018年8月10日)
5. 札幌オフィス市場の見通し
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて、企業の業績は急速に悪化しており、札幌のオフィス需要を支えてきたIT関連企業やコールセンターが、これまで通り需要を牽引することは難しいと考えられる。コロナウィルスの感染拡大が及ぼす影響を考慮15した札幌の成約賃料は、2019 年の賃料を100 とした場合、2024年は88へと下落する見通しである。
長期的にみると、札幌駅周辺を中心に高層オフィスビルの開発が複数計画されており、その動向次第では、需給環境がさらに悪化する可能性がある。札幌オフィス市場を長期的に見通す上で、コロナウィルス感染症に対する経済対策や企業支援等の状況とともに、北海道新幹線の延伸を見据えた大型再開発の動向を注視していく必要がある。
14 ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2019~2029年度)」(2019.10.15)Weeklyエコノミストレター、ニッセイ基礎研究所。
15 斎藤太郎「2020・2021 年度経済見通し-20 年1-3 月期GDP2 次速報後改定」(2020.6.8)Weeklyエコノミストレター、ニッセイ基礎研究所などを基に経済見通しを設定。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1861
(2020年07月30日「不動産投資レポート」)
ソーシャルメディア
新着記事
-
2021年01月21日
2020年度特別調査 「第3回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要 -
2021年01月21日
EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する意見をECに提出(2)-助言内容(LTG措置及び株式リスク措置)- -
2021年01月21日
貿易統計20年12月-10-12月期の外需寄与度は前期比1.0%(年率3.9%)のプラスに -
2021年01月20日
行動経済学から見たネット型マッチングサービスの課題と期待~コロナ禍における少子化対策として~ -
2021年01月20日
2020年中国REIT市場の現状と今後の見通し~公募REITが始動、民間資本や個人投資家に期待~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2021年01月21日
News Release
-
2020年10月15日
News Release
-
2020年07月09日
News Release
【「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通しのレポート Topへ