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- 貸出・マネタリー統計(20年6月)~銀行貸出残高の伸びが過去最高を更新、貸出金利は過去最低を更新
2020年07月10日
1. 貸出動向:前年差は6.7兆円拡大
(貸出残高)
7月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比6.51%と前月(同5.06%)から大幅に拡大した(図表1)。伸び率はデータが開示されている1992年7月以降の最高を連月で更新した。貸出残高の前年差は30.4兆円増と、5月の23.7兆円増から6.7兆円拡大している。
貸出の加速は、新型コロナウイルス拡大に伴う経済活動の縮小によって企業の資金繰りが逼迫し、資金を確保する動きが急速に広がったためだ。過去には、2008年のリーマンショック後にも資金繰りの逼迫によって貸出の伸びが大きく高まったが、今回の伸び率拡大ペースはリーマンショック後を大幅に上回っている(図表2)。
リーマンショックを上回る速度で景気が落ち込み、企業の間で資金を確保する動きが強まったうえ、5月からは政府の経済対策の一環として、民間金融機関での無利子・無担保融資制度が開始し、日銀も同制度のバックファイナンスなど銀行への新たな資金供給制度(新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ)を設けて貸出を後押ししていることが寄与している模様だ。
7月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比6.51%と前月(同5.06%)から大幅に拡大した(図表1)。伸び率はデータが開示されている1992年7月以降の最高を連月で更新した。貸出残高の前年差は30.4兆円増と、5月の23.7兆円増から6.7兆円拡大している。
貸出の加速は、新型コロナウイルス拡大に伴う経済活動の縮小によって企業の資金繰りが逼迫し、資金を確保する動きが急速に広がったためだ。過去には、2008年のリーマンショック後にも資金繰りの逼迫によって貸出の伸びが大きく高まったが、今回の伸び率拡大ペースはリーマンショック後を大幅に上回っている(図表2)。
リーマンショックを上回る速度で景気が落ち込み、企業の間で資金を確保する動きが強まったうえ、5月からは政府の経済対策の一環として、民間金融機関での無利子・無担保融資制度が開始し、日銀も同制度のバックファイナンスなど銀行への新たな資金供給制度(新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ)を設けて貸出を後押ししていることが寄与している模様だ。
日銀の新たな資金供給制度による資金供給残高は直近で21兆円に達しており1、日銀短観6月調査における金融機関の貸し出し態度D.I.(企業側による評価)は比較的高い水準を維持している(図表5)。
業態別の伸び率を見ると、都銀が前年比8.61%(前月は6.59%)、地銀(第2地銀を含む)が同4.69%(前月は3.74%)とともに大きく上昇したが、とりわけ都銀の伸び率拡大が鮮明になっている(図表3)。都銀が得意とする大企業向けで大口の資金需要が発生したことが影響しているとみられる(図表4)。
5月には緊急事態宣言が解除され、以降、経済活動は持ち直しつつある。ただし、コロナへの警戒が残るなか、経済活動の回復ペースは緩やかに留まることから、企業の厳しい資金繰り状況は続きそうだ。従って、今後も銀行貸出の高い伸びが予想される。
1 6月25日時点の貸付残高の見込み値
業態別の伸び率を見ると、都銀が前年比8.61%(前月は6.59%)、地銀(第2地銀を含む)が同4.69%(前月は3.74%)とともに大きく上昇したが、とりわけ都銀の伸び率拡大が鮮明になっている(図表3)。都銀が得意とする大企業向けで大口の資金需要が発生したことが影響しているとみられる(図表4)。
5月には緊急事態宣言が解除され、以降、経済活動は持ち直しつつある。ただし、コロナへの警戒が残るなか、経済活動の回復ペースは緩やかに留まることから、企業の厳しい資金繰り状況は続きそうだ。従って、今後も銀行貸出の高い伸びが予想される。
1 6月25日時点の貸付残高の見込み値
(貸出金利)
なお、直近5月の新規貸出平均金利は、短期貸出(一年未満)が0.302%(前月は0.438%)、長期貸出(1年以上)が0.561%(前月は0.601%)とともに低下し、2カ月連続で過去最低を更新した2。振れを均すために3カ月移動平均で見た場合も(図表6)、長短貸出金利ともに直近で大幅な低下がみられ、過去最低を更新している。
貸出金利に影響を与える国債利回り等の市場金利はコロナ禍の下でも横ばい圏で推移しているものの、日銀による金融機関へのゼロ金利での資金供給(3月~)、経済対策としての無利子・無担保融資制度の利用(5月~)が貸出金利の押し下げ要因になっていると考えられる(ただし、後者の利子相当分は自治体等から金融機関に補給される仕組み)。
2 同統計の開始時期は1993年10月
なお、直近5月の新規貸出平均金利は、短期貸出(一年未満)が0.302%(前月は0.438%)、長期貸出(1年以上)が0.561%(前月は0.601%)とともに低下し、2カ月連続で過去最低を更新した2。振れを均すために3カ月移動平均で見た場合も(図表6)、長短貸出金利ともに直近で大幅な低下がみられ、過去最低を更新している。
貸出金利に影響を与える国債利回り等の市場金利はコロナ禍の下でも横ばい圏で推移しているものの、日銀による金融機関へのゼロ金利での資金供給(3月~)、経済対策としての無利子・無担保融資制度の利用(5月~)が貸出金利の押し下げ要因になっていると考えられる(ただし、後者の利子相当分は自治体等から金融機関に補給される仕組み)。
2 同統計の開始時期は1993年10月
2.マネタリーベース: 緩和強化の効果で増勢がさらに加速
7月2日に発表された6月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率(平残)は6.0%と、前月(同3.9%)を大きく上回った(図表7)。日銀当座預金の減少要因となる政府による国庫短期証券の発行が急増したが、日銀が短期国債買入れを大幅に増額したほか(図表9)、新型コロナ対応で導入された金融機関向け資金供給オペが増加し、日銀当座預金の増加要因となった。過去に実施したドル資金供給用の担保国債供給(当座預金減少要因)が期限を迎えたとみられ、減少に転じたことも日銀当座預金を押し上げた。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比4.8%(前月は2.4%)と伸び率を大きく上昇させたことも、マネタリーベースの伸び率上昇に寄与した。給付金支給のためか、タンス預金が再び増加したとみられるほか、経済活動再開に伴ってお釣り用の紙幣需要が回復しつつあることが影響したと推測される。
一方で、貨幣流通高の伸び率は前月から横ばいの前年比1.0%と低迷が続いている。紙幣同様、お釣り用の需要は回復に向かったものの、キャッシュレス化の進展が伸び率を抑制したと推測される。
なお、5月末時点のマネタリーベース残高は565兆円と前月末比で21.8兆円増加した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、前月比12.9兆円増と前月に続いて単月としては過去最高を更新する高い伸びを示している(図表8)。
日銀は引き続き前向きな緩和姿勢を維持し、各種資産の買入れや資金供給を積極的に続けると見込まれることから、マネタリーベースは当面高い伸びが続く可能性が高い。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比4.8%(前月は2.4%)と伸び率を大きく上昇させたことも、マネタリーベースの伸び率上昇に寄与した。給付金支給のためか、タンス預金が再び増加したとみられるほか、経済活動再開に伴ってお釣り用の紙幣需要が回復しつつあることが影響したと推測される。
一方で、貨幣流通高の伸び率は前月から横ばいの前年比1.0%と低迷が続いている。紙幣同様、お釣り用の需要は回復に向かったものの、キャッシュレス化の進展が伸び率を抑制したと推測される。
なお、5月末時点のマネタリーベース残高は565兆円と前月末比で21.8兆円増加した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、前月比12.9兆円増と前月に続いて単月としては過去最高を更新する高い伸びを示している(図表8)。
日銀は引き続き前向きな緩和姿勢を維持し、各種資産の買入れや資金供給を積極的に続けると見込まれることから、マネタリーベースは当面高い伸びが続く可能性が高い。
3.マネーストック: 通貨総量の伸びが過去最高を大きく更新
7月9日に発表された6月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比7.24%(前月は5.11%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同5.87%(前月は4.14%)とともに大きく上昇した(図表11)。伸び率はともに連月で2004年4月の現行統計開始以降の最高を更新している。既述のとおり、企業向け貸出の伸びが大きく高まったほか、給付金の支給もあり、下記の通り預金の伸びが大きく押し上げられたことが主因となった。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月10.15%→当月13.23%)の伸び率が大きく上昇し、過去最高を更新したほか、現金通貨(前月2.51%→当月4.66%)の伸びも上昇している(図表12)。
一方で、CD(譲渡性預金・前月▲7.90%→当月▲10.43%)の伸びがマイナス幅を拡大させたほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.84%→当月▲2.59%)の伸びもマイナスが続いている(図表13)。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月10.15%→当月13.23%)の伸び率が大きく上昇し、過去最高を更新したほか、現金通貨(前月2.51%→当月4.66%)の伸びも上昇している(図表12)。
一方で、CD(譲渡性預金・前月▲7.90%→当月▲10.43%)の伸びがマイナス幅を拡大させたほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.84%→当月▲2.59%)の伸びもマイナスが続いている(図表13)。
なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比4.40%(前月は3.07%)と上昇し、過去最高を更新したが、M2やM3と比べると上昇は限定的となった(図表11)。
既述の通り、M3の伸び率が大きく上昇した一方、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月1.9%→当月2.7%)、外債(前月2.8%→当月3.1%)、国債(前月0.6%→当月1.1%)の伸びが小幅に留まったほか、金銭の信託(前月▲1.1%→当月▲1.3%)のマイナス幅が拡大したためだ(図表13)。
今後も企業の資金需要が強い状況が続き、貸出の高い伸びが予想されるため、マネーストックの伸びも当面高止まりする可能性が高い。
既述の通り、M3の伸び率が大きく上昇した一方、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月1.9%→当月2.7%)、外債(前月2.8%→当月3.1%)、国債(前月0.6%→当月1.1%)の伸びが小幅に留まったほか、金銭の信託(前月▲1.1%→当月▲1.3%)のマイナス幅が拡大したためだ(図表13)。
今後も企業の資金需要が強い状況が続き、貸出の高い伸びが予想されるため、マネーストックの伸びも当面高止まりする可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年07月10日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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