2020年07月01日

日銀短観(6月調査)~企業の景況感はリーマンショック級の落ち込み幅に、設備投資計画も異例の下方修正

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 6月短観では、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言発令の影響を受けて、大企業製造業の業況判断D.I.が▲34と前回調査から26ポイント低下した。海外でのロックダウンに伴う輸出減少に加え、外出自粛による国内製品需要の落ち込みやサプライチェーンの混乱などによって景況感が急激に悪化した。また、大企業非製造業の業況判断D.I.も▲17と前回から25ポイント低下した。外出自粛や休業に伴う売上の急減、入国規制に伴う訪日客の途絶などによって景況感が大幅に悪化した。製造業・非製造業ともに前回からの落ち込み幅はリーマンショック後の最悪期に匹敵する。
     
  2. 一方、大企業の先行きの景況感は持ち直しが示された。既に国内外で経済活動が段階的に再開されており、今後の景気回復が見込まれるためだ。ただし、外出自粛ムードや入国規制等が残るうえ、感染抑制策も制約となるため、景気回復は緩やかなペースに留まるとの見方が一般的であるほか、感染第2波への警戒もあり、先行きの景況感改善は限定的に留まっている。
     
  3. 2020年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比0.8%減とわずかに下方修正された。例年、6月調査では計画の具体化に伴って上方修正される傾向が極めて強い。しかし、今回はこの時期としては「異例の下方修正」になった。新型コロナの感染拡大に伴う収益・キャッシュフローの大幅な減少や、事業環境の強い先行き不透明感を受けて、企業の一部で設備投資の撤回や先送りの動きが台頭しているとみられる。
     
  4. また、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は前回から22ポイント上昇の▲6となった。不足度合いを示すマイナス幅は2013年9月調査以来の小幅となり、人手不足感が大きく緩和している。従来課題となってきた人手不足感が緩和したのは、新型コロナの拡大によって労働需要が大きく減少したためであり、いわば悪い形での緩和と言える。
業況判断D.I.は製造業、非製造業ともに急激に低下(大企業)/業況判断DIが急落した事例(2000年以降)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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