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- ドル高圧力と為替介入の攻防戦は長期化へ~マーケット・カルテ6月号
2024年05月22日
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既述の通り、最近では米指標が予想を下回るケースが増えているものの、雇用の逼迫感は残っており、米物価上昇率が急速に低下していく展開は想定し難い。FRBは秋までは利下げ開始に慎重な姿勢を維持すると見込まれる。一方、日銀は夏場にも保有国債の圧縮方針(いわゆる量的引き締め)を決定するうえ、利上げ観測も燻り続けるとみられるが、日本の金利の上昇余地は限られることから、円売り材料と見做されている「日米金利差は大きく開いたまま」という状況を大きく変えるには至らない。
従って、今後も政府による円買い介入が円安抑制のカギになる。政府は4月末以降、既に2度にわたって介入を実施したと推測される。介入によって為替のトレンドを転換させることは困難だが、足元でも介入への警戒感が燻り、ドルの上値を抑えている。政府は160円超の水準での定着を甘受しないと考えられることから、今後もタイミングを見計らいつつ、口先・実弾介入を駆使して円安の抑制に注力するだろう。金利差を背景とするドル高圧力と介入への警戒感がせめぎ合う構図が長期化する形となり、3か月後の水準は現状比横ばい圏にあると予想している。
長期金利は月初0.8%台後半でスタートした後、円安けん制を意図したものと見られる日銀による国債買入れ減額(事前に公表していたレンジ内での小幅減額)を受けて上昇し、本日には一時1.0%を付けた。日銀は円安けん制色を強めるべく、既述の通り、夏場にも保有国債の圧縮方針を決定すると予想されるうえ、利上げ観測も燻り続けるとみられ、長期金利の先高観は今後も燻りそうだ。一方で、長期金利が1%超になると、投資妙味の高まりを好感した投資家による債券買いも一定見込まれる。従って、3ヵ月後の水準は現状比小幅高の1.0~1.1%程度と予想している(ユーロ円に関する記述は割愛)。
(執筆時点:2024/5/22)
(2024年05月22日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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