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2024年05月13日
1.貸出動向:都銀と地銀で伸び率の差が拡大
(貸出残高)
5月10日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、4月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.57%と前月(同3.59%)からほぼ横ばいとなった(図表1)。円安進行により外貨建て貸出の円換算額が嵩上げされた影響もあるが、実勢としても経済活動再開や原材料価格の高止まりに伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調に推移しているとみられる。
業態別では、都銀の伸びが前年比4.24%(前月は4.21%)、地銀(第2地銀を含む)の伸びが同3.00%(前月は3.07%)となった(図表2)。都銀では、外貨建て貸出の嵩上げに加え、M&Aなどに絡む大口案件の寄与がうかがわれ、伸び率は約3年ぶりの高水準で推移している。一方、地銀ではゼロゼロ融資(コロナ対応の実質無利子・無担保融資)の返済が重荷になっている面もあるとみられ、緩やかに低下している。このため、両者の伸び率の差は広がってきている。
5月10日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、4月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.57%と前月(同3.59%)からほぼ横ばいとなった(図表1)。円安進行により外貨建て貸出の円換算額が嵩上げされた影響もあるが、実勢としても経済活動再開や原材料価格の高止まりに伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調に推移しているとみられる。
業態別では、都銀の伸びが前年比4.24%(前月は4.21%)、地銀(第2地銀を含む)の伸びが同3.00%(前月は3.07%)となった(図表2)。都銀では、外貨建て貸出の嵩上げに加え、M&Aなどに絡む大口案件の寄与がうかがわれ、伸び率は約3年ぶりの高水準で推移している。一方、地銀ではゼロゼロ融資(コロナ対応の実質無利子・無担保融資)の返済が重荷になっている面もあるとみられ、緩やかに低下している。このため、両者の伸び率の差は広がってきている。
2.マネタリーベース:小幅な伸びが継続
5月2日に発表された4月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比2.1%と、前月(同1.6%)から上昇した(図表5)。伸び率自体は小幅なプラス圏に留まるものの、伸び率の上昇は6カ月ぶりのことになる。
そして、伸び率上昇の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率上昇である。日銀は3月MPMでマイナス金利政策の解除など金融政策の正常化を決定したが、長期国債の月間買入れ額は直近のペースである6兆円程度で維持された(図表6)。そうした中、今年4月は例年よりも「財政等要因」が大きく(理由は不明)、資金余剰であったことが、日銀当座預金の伸び率上昇に寄与した。
季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、4月のマネタリーベースは前月比6.1兆円増と昨年9月以来の高い伸びを示している(図表8)。
その他の内訳では、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.7%(前月は▲1.8%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.0%(前月は▲0.8%)とともに前年割れとなっており(図表5)、マネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
そして、伸び率上昇の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率上昇である。日銀は3月MPMでマイナス金利政策の解除など金融政策の正常化を決定したが、長期国債の月間買入れ額は直近のペースである6兆円程度で維持された(図表6)。そうした中、今年4月は例年よりも「財政等要因」が大きく(理由は不明)、資金余剰であったことが、日銀当座預金の伸び率上昇に寄与した。
季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、4月のマネタリーベースは前月比6.1兆円増と昨年9月以来の高い伸びを示している(図表8)。
その他の内訳では、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.7%(前月は▲1.8%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.0%(前月は▲0.8%)とともに前年割れとなっており(図表5)、マネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
3.マネーストック:金利上昇により定期預金のマイナスが縮小
5月13日に発表された4月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.22%(前月は2.54%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同1.61%(前月は1.85%)と、ともに大きく低下した(図表9)。M2の伸び率は2019年7月、M3の伸び率は2009年3月以来の低水準にあたる。
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月4.6%→当月4.1%)の伸びが急低下し、全体の伸び率低下に繋がった。年度末の財政資金支払いが少なかったという特殊要因が影響した模様1だ。また、キャッシュレス化の波を受ける現金通貨(前月▲0.6%→当月▲0.8%)やCD(譲渡性預金・前月▲12.4%→当月▲27.4%)のマイナス幅が拡大したことも全体の伸びを抑制した(図表10)。
一方、定期預金などの準通貨(前月▲1.9%→当月▲0.8%)、のマイナス幅が大きく縮小し、全体の伸び率にとっての下支えとなった(図表11)。3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利引き上げに動いた(図表12)。相対的に金利引き上げ幅が大きかった中長期物を中心に、定期預金に一部資金が流入したとみられる。
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月4.6%→当月4.1%)の伸びが急低下し、全体の伸び率低下に繋がった。年度末の財政資金支払いが少なかったという特殊要因が影響した模様1だ。また、キャッシュレス化の波を受ける現金通貨(前月▲0.6%→当月▲0.8%)やCD(譲渡性預金・前月▲12.4%→当月▲27.4%)のマイナス幅が拡大したことも全体の伸びを抑制した(図表10)。
一方、定期預金などの準通貨(前月▲1.9%→当月▲0.8%)、のマイナス幅が大きく縮小し、全体の伸び率にとっての下支えとなった(図表11)。3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利引き上げに動いた(図表12)。相対的に金利引き上げ幅が大きかった中長期物を中心に、定期預金に一部資金が流入したとみられる。
なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比1.75%(前月は2.23%)とM2やM3以上に低下した(図表9)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい金銭の信託(前月2.7%→当月1.6%)、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース、前月2.2%→当月0.0%)伸び率が低下し、広義流動性の伸び率を追加的に押し下げた(図表11)。一方、国債(前月1.7%→当月1.8%)、外債(前月16.6%→当月17.2%)の伸びは若干上昇している。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい金銭の信託(前月2.7%→当月1.6%)、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース、前月2.2%→当月0.0%)伸び率が低下し、広義流動性の伸び率を追加的に押し下げた(図表11)。一方、国債(前月1.7%→当月1.8%)、外債(前月16.6%→当月17.2%)の伸びは若干上昇している。
1 ロイター報道(2024年5月13日)より
(2024年05月13日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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