2020年01月15日

改正債権法の解説(6)-保証制度どう変わる?

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任   松澤 登

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1――はじめに

改正債権法の解説シリーズの六回目は保証について説明を行いたい。保証とは、お金を借りた人など(主たる債務者)が弁済を行わないときに、代わりに弁済するという契約である(民法第446条)。典型的には、①主たる債務者が銀行などの債権者から、資金の貸付などを受ける。その際に保証人による保証を求められる。そして、②主たる債務者が弁済できない場合に、③債権者は保証人に対して代わりに弁済するよう請求をし、④保証人が債権者に弁済を行う。保証人が債権者に弁済を行った場合は、⑤保証人は主たる債務者に対して、弁済のために支出した金額を支払うよう求める(求償する)ことができる(民法第459条)。(図表1)
保証について
保証契約は通常、保証人が主たる債務者から依頼を受けて、債権者との間で締結する。保証契約は書面または電磁的記録で契約しなければその効果を生じない(民法第446条第2項第3項)。したがって口頭での保証契約は認められない。

具体例として、身近なものから挙げるとすれば、親族が就職・進学するに当たって、将来会社に損害を与えたような場合に連帯1して賠償責任を負うといった身元保証をすることがある(以下、身元保証)。また、老後の土地資産活用の観点から、賃貸アパート経営を行おうとする人(オーナー)は、建物建設のためにアパートローンを組むこととなるが、その際にオーナーの子(相続人となる者)が保証人になることも多いと言われる(以下、アパートローン保証)。さらには、友人や親戚が起業するに当たって、銀行融資の保証人になって欲しいとの相談を受けることもあると思われる(以下、起業融資保証)。

本稿では、身元保証、アパートローン保証、起業融資保証の3ケースを例示とし、これらを念頭に解説を加えて行きたい。

さて、これから解説を進めるにあたって、まずは根保証という取引の説明をしたい。図表2は金銭貸借の根保証の例である。
金銭貸借の根保証の例
特に事業用の運営資金については、上記図表2のように、債務者は借金を弁済・借入を繰り返したり、追加で借入をしたりすることとなる。このように繰り返され、増減する貸金やその利息、また弁済が遅れたときの遅延損害金等といった不特定の債務を保証するものを根保証という(民法第465条の2)。

上述した起業融資保証はこの根保証であることが多いと思われる。また、身元保証も身元を明らかにする趣旨だけのようなものを除けば、労働者が会社に損害を及ぼした場合の、不特定の損害賠償責任を保証するものとして、根保証に該当する可能性が高い。

他方、アパートローン保証は特定のローンのみを保証し、根保証でない場合が多いと思われる。
 
1 保証には二種類あり、単純な保証と連帯保証がある。単純な保証であれば、保証人が債権者から支払い請求を受けたときに、主たる債務者に先に請求するように求めたり(民法第452条、催告の抗弁)、主たる債務者の財産を差押えするよう求めたり(民法第453条)することができる。連帯保証はこのような権利がない(民法第454条)ため、連帯保証人は主たる債務者と同じように弁済の請求を受けることになる。「連帯」の意味するところは、保証人があたかも自分が貸付を受けたと同様の立場におかれるということである。
 

2――貸金等の個人根保証に関する極度額設定範囲拡大および元本確定の変更

2――貸金等の個人根保証に関する極度額設定範囲拡大および元本確定の変更

1現行制度-極度額設定等の規律は貸金等の金銭の貸し借りに限定
(1)極度額の設定‐貸金等の個人根保証に限定 
現行民法においては、貸金等(金銭の貸渡し、手形の割引)の個人根保証について、極度額を定めるべきことが求められている(民法第465条の2)。

極度額とは簡単に言えば保証すべき貸金等合計額の上限である。保証人は極度額以上の負担は求められない。たとえば極度額5000万円と定めた貸金等の根保証であれば、貸金額や利息の残高が7000万円になって借主が破たんしても、保証人は5000万円の支払いまでしか求められない(イメージとして図表3)。主たる債務が貸金等である場合、かつ根保証に限定されているため、例示の3ケースの中では、起業融資保証のみが該当する。
【図表3】青の折れ線が融資残高、赤の横線が極度額
根保証契約が書面もしくは電磁的記録により締結されていても、その契約項目として極度額が定められていなければ、根保証そのものがなかったこととなる(民法第465条の2第3項で準用する民法第446条第2項第3項)。

これは主たる債務者の経済状況や貸し借りの状況を保証人が必ずしも知っているわけではないところ、思わぬ金額の責任が保証人に降りかかることを回避するための制度である。起業融資保証の保証人になるときは、この極度額が自分の負担可能な範囲であることを確認しておく必要がある。
(2)元本の確定‐貸金等の個人根保証に限定
上記(1)に加え、現行民法は貸金等に対する個人根保証の保証期間の上限を定めている。具体的には、約定によっても貸金契約締結時より5年間を超えることができず、まったく約定がない場合には3年間となる。この期間が経過すると元本が確定し、その後に借り入れた貸金や、その後発生した利息、遅延損害金などは根保証の対象外となる(民法第465条の3)。

これらの期間内であっても、主たる債権者に対して債権者から強制執行の申立てがなされたときや破産開始決定が行われたときなどには元本が確定する(民法第465条の4、元本確定事由の発生)。

極度額と元本の確定のイメージは図表4を参照。
【図表4】ケースAでは緑線が、ケースBでは赤線が貸金等金額の残高
2改正債権法-極度額設定等の規律が適用される保証類型の拡大
(1)極度額の設定‐すべての個人根保証に適用拡大
思わぬ金額の責任が保証人に降りかかるケースは何も金銭の貸し借りに限定されるわけではない。このため、改正債権法では、個人が行う保証のうち、根保証であるものはすべて極度額を定めなければならないこととした(新民法第465条の2)。

この改正によって影響を受けるのが、例示の3ケースのうちでは、身元保証である。身元保証も上述の通り、個人根保証に該当する可能性がある。その場合、書面で極度額を定めなければならないこととなる。しかし、極度額を高額にすれば引き受け手がないことも考えられ、少額にするとあまり意味を持たないように思われる。債権法改正を契機に、根保証を内容とする身元保証は見直しても良いかもしれない。

(2)元本の確定‐一部規定を貸金等以外の個人根保証に拡大
改正債権法では、貸金等を除く個人による根保証についても元本確定事由が規定された2。ただし、主たる債務者に強制執行の申立てが行われたケースなどは元本確定事由とせず、保証人が死亡や破産した場合などに限り、元本が確定するとされた(新民法第465条の4)。

なお、貸金等を除く個人根保証について、元本が確定する保証期間の上限は設けられなかった。以上をまとめると図表5の通り。
元本の確定
 
2 建物の賃借人の賃料等への根保証のようなケースでは、たとえば借主に破産開始決定が行われたとしても、貸主はそのことだけを理由として賃貸借契約の解除を行うことはできない。そうすると保証はされないのに、建物は返還されず賃料は引き続き発生することとなり、貸主に酷である。そのため本文に述べたとおり、強制執行の申立て等は元本確定事由とされず、保証人の死亡や破産等のみが元本確定事由とされた。
 

3――事業用貸金等の個人保証における公正証書の作成

3――事業用貸金等の個人保証における公正証書の作成

1制度の概要-契約に先立っての公正証書の作成
この制度は、改正債権法により新設された。事業用の貸金等を主たる債務とする個人保証については、保証契約の締結に先立ち、保証人が公正証書により保証を履行する意思を表示しなければ、その効力を生じないものとされた(新民法第465条の6)。この制度は根保証かそうでないかを問わず適用される。単に事業用の貸金等の保証であればすべて適用対象である。

例示の3ケースのうちでは、起業融資保証のみならず、アパートローン保証も適用の対象となると考えられる。アパート経営は賃貸事業であるためである(ただし次項で述べる通り、配偶者が適用除外されるなどのケースはある)。他方、身元保証は事業のためではなく、貸金に対する保証でもないので適用されない。

原則として、保証人になろうとする人は公証役場まで行き、公証人に対して、主たる債務者が債務を履行しない場合に保証を行う意思を有している旨等を口述する。公証人がそれを筆記し、保証人になろうとする者に読み聞かせ、あるいは閲覧させる。そしてその書面に保証人となろうとする者が署名・押印し、さらに公証人が署名押印する。

この制度は事業用の貸金等についての第三者保証が行われている実態を踏まえて、保証契約にいたるまでの手続を重くすることによって第三者保証自体の抑制を目的としている。ただし、経営者による保証については、次項で述べるとおりの適用除外がある。
2公正証書作成を要しない者
主たる債務者が法人である場合に、その理事、取締役、執行役等、あるいは株式の議決権の過半数を有する者が事業の貸金等の個人保証を行うときには公正証書の作成を要しない(新民法第465条の9第1号、第2号)。また、主たる債務者が個人事業主である場合は共同で事業を行う者、および事業者の配偶者が事業用の貸金等の保証を行うときにも公正証書の作成を要しない(新民法第465条9第3号)。

これらは、いわゆる経営者保証と呼ばれるものだが、経営者保証を取り付ける慣行は融資を受けやすくなるというメリットがあるとされているが、経営に失敗したときに適切なタイミングで会社を破たんさせることを躊躇させたり、経営者の生活再建を困難にしたりするとの批判もある。
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松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
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