- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 家計調査14年11月~個人消費は緩やかな持ち直しが続く
■見出し
・実質消費支出は減少幅が縮小
・個人消費は緩やかな持ち直しが続く公算
■要旨
総務省が12月26日に公表した家計調査によると、14年11月の実質消費支出は前年比▲2.5%となった。減少幅は10月の同▲4.0%から縮小し、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲3.6%、当社予想は同▲2.9%)を上回る結果となった。前月比では0.4%と3ヵ月連続で増加した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比1.1%(10月:同▲0.1%)と高めの伸びとなった。依然として駆け込み需要が本格化する前の水準を下回っているが、10、11月の指数水準の平均は7-9月期を1.5%上回っている。
GDP統計の個人消費は駆け込み需要の反動を主因として14年4-6月期に前期比▲5.1%と急速に落ち込んだ後、7-9月期は同0.4%の低い伸びにとどまった。供給側の統計(鉱工業指数の消費財出荷指数、商業販売統計)は低調だが、需要側の統計(家計調査)が底堅い動きとなっているため、10-12月期の個人消費は7-9月期から伸びを高める可能性が高い。
個人消費は駆け込み需要の反動の影響が和らぐなか持ち直しつつあるものの、そのペースは依然として緩やかにとどまっている。引き続き消費税率引き上げに伴う実質所得の低下が個人消費の下押し要因となっているとみられる。
11月の毎月勤労統計では、現金給与総額(名目)が前年比▲1.5%と9ヵ月ぶりの減少となり、消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合)で割り引いた実質賃金(一人当たり)は前年比▲4.3%と消費増税後では最大の落ち込み幅となった。雇用者数の増加がマクロベースの所得を押し上げているが、雇用者数の伸びは鈍化傾向にあるため(9月:前年比1.1%→10月:同0.6%→11月:同0.3%)、一人当たり実質賃金に雇用者数(労働力調査)をかけた実質雇用者所得も11月は前年比▲4.0%の大幅減少となった。
11月は特別給与が前年比▲27.0%の急減となったことが現金給与総額を大きく押し下げており、これは一時的なものと考えられる。所定内給与と所定外給与を合わせた定期給与は前年比0.1%と小幅ながらプラス伸びを維持している。12月は企業業績の改善を背景に特別給与が大きく増加し、現金給与総額も増加に転じる可能性が高い。
ただし、所定内給与が前年比0%台前半の伸びにとどまっていること、消費増税後の景気減速に伴い所定外給与が減少に転じていることから、名目賃金の伸びが大きく加速することは期待できない。原油価格下落に伴う消費者物価上昇率の鈍化は実質所得の押し上げ要因として働くが、実質所得が消費増税前の水準に戻るまでにはかなりの時間を要するだろう。このため、個人消費は持ち直しの動きを続けるものの、そのペースは当面緩やかなものにとどまる可能性が高い。
(2014年12月26日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/18 | 貿易統計24年8月-円高、原油安で先行きの貿易赤字は縮小へ | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2024/09/09 | 2024・2025年度経済見通し-24年4-6月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2024/09/02 | 法人企業統計24年4-6月期-経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2024/08/30 | 鉱工業生産24年7月-自動車の下振れなどから、7-9月期は小幅な増産にとどまる見込み | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月19日
米FOMC(24年9月)-政策金利▲0.5%引き下げを決定。20年以来となる利下げを開始 -
2024年09月19日
資金循環統計(24年4-6月期)~個人金融資産は前年比98兆円増の2212兆円と過去最高に、リスク性資産への投資が進む -
2024年09月19日
家計消費の動向(~2024年7月)-物価高で食料や日用品を抑え、娯楽をやや優先だが温度差も -
2024年09月19日
米住宅着工・許可件数(24年8月)-着工件数は前月、市場予想を上回る。住宅ローン金利の低下が住宅需要に追い風 -
2024年09月18日
日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは1ポイント低下の12と予想、価格転嫁の勢いに注目
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【家計調査14年11月~個人消費は緩やかな持ち直しが続く】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
家計調査14年11月~個人消費は緩やかな持ち直しが続くのレポート Topへ