2024年09月02日

法人企業統計24年4-6月期-経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

1.経常利益は5四半期連続で前年比二桁の高い伸び

経常利益の推移 財務省が9月2日に公表した法人企業統計によると、24年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比13.2%(1-3月期:同15.1%)と6四半期連続の増益となり、5四半期連続で前年比二桁の高い伸びとなった。製造業が前年比13.0%(1-3月期:同23.0%)と3四半期連続の増益、非製造業が前年比13.3%(1-3月期:同11.5%)と14四半期連続の増益となった。
製造業は、売上高の伸びが24年1-3月期の前年比2.8%から同2.6%に鈍化したが、売上高経常利益率が23年4-6月期の10.5%から11.6%に大きく改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費(前年比1.0%)、変動費(同1.3%)が売上高の伸びを下回ったことから、人件費要因、変動費要因がプラスとなった。

非製造業は、個人消費の持ち直しなどから売上高の伸びが24年1-3期の前年比2.1%から同3.9%に高まったことに加え、売上高経常利益率が23年4-6月期の8.2%から8.9%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。人件費要因は若干のマイナスとなったが、変動費要因が大幅なプラスとなった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新

経常利益を業種別に見ると、製造業は、生産用機械(前年比▲6.5%)が4四半期連続、鉄鋼(同▲15.3%)が2四半期ぶりの減益となったが、情報通信機械(同52.2%)、輸送用機械(同19.9%)、食料品(同16.3%)、化学(同15.7%)等が前年比で二桁の高い伸びとなり、全体を大きく押し上げた。

非製造業は、電気業(前年比▲19.2%)、運輸・郵便業(同▲4.2%)が減益となったが、サービス業(同50.5%)、物品賃貸業(同47.4%)、建設業(同18.5%)、不動産業(同14.3%)が前年比で二桁の高い伸びとなった。なお、電気業は減益となったが、燃料費高騰の影響で21年10-12月期から22年10-12月期まで5四半期連続の赤字となった後、23年1-3月期以降は6四半期連続で黒字を確保している。
 
季節調整済の経常利益は前期比6.6%(1-3月期:同7.3%)と2四半期連続で増加した。製造業が前期比4.8%(1-3月期:同6.0%)、非製造業が前期比7.5%(1-3月期:同8.0%)といずれも2四半期連続で増加した。
経常利益(季節調整値)の推移 経常利益(季節調整値)は30.3兆円となり、2四半期連続で過去最高水準を更新した。製造業、非製造業ともに過去最高となった。

円安にもかかわらず輸出数量は伸び悩んでいるが、輸出金額の拡大が製造業の売上、収益の拡大をもたらしている。また、円安は非製造業には輸入物価上昇によるコスト増を通じて収益の圧迫要因となるが、販売価格への転嫁が十分に行われているため、売上、収益の拡大傾向が維持されている。ただし、足もとでは円高が進んでおり、円安を起点とした収益の上振れは途切れる可能性が高い。

3.設備投資は持ち直すも、収益対比では依然弱い

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比7.4%(1-3月期:同6.8%)と13四半期連続で増加し、前期から伸びが高まった。製造業は前年比1.4%(1-3月期:同8.7%)と伸びが鈍化したが、非製造業が前年比10.9%(1-3月期:同5.8%)と前期から伸びが加速した。
設備投資とキャッシュフローの関係 季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比1.2%(1-3月期:同▲3.9%)と2四半期ぶりに増加した。製造業は前期比▲3.2%(1-3月期:同▲3.0%)と2四半期連続で減少したが、非製造業が前期比3.5%(1-3月期:同▲4.4%)と2四半期ぶりに増加した。

設備投資は持ち直しているが、過去最高を更新し続ける企業収益対比では依然として弱い。「設備投資/キャッシュフロー比率」は過去最低水準の50%台前半で推移している。設備投資が収益対比で弱い理由としては、人手不足による供給制約、景気の先行き不透明感の高さや原材料費、人件費などのコスト増を受けた投資計画の先送りなどが考えられる。

4.4-6月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/9公表予定の24年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.8%(前期比年率3.2%)になると予想する。1次速報の前期比0.8%(前期比年率3.1%)とほぼ変わらないだろう。

設備投資は1次速報の前期比0.9%から同1.2%に上方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比9.1%(1-3月期:同6.8%)と13四半期連続で増加し、前期から伸びが加速した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比12%程度と公表値よりも伸びが高くなった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比27.9%(1-3月期:同21.8%)の高い伸びとなった。
2024年4-6月期GDP2次速報の予測 1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比11.4%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.1%から変わらないだろう。

その他の需要項目では、民間消費は6月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比1.0%から同0.9%へ下方修正される一方、公的固定資本形成は6月の建設総合統計の結果が反映され、前期比4.5%から同4.7%へ上方修正されると予想する。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年09月02日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【法人企業統計24年4-6月期-経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

法人企業統計24年4-6月期-経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新のレポート Topへ