2024年08月21日

貿易統計24年7月-輸出の低迷が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出数量は前年比マイナスが続く

財務省が8月21日に公表した貿易統計によると、24年7月の貿易収支は▲6,218億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲3,583億円、当社予想は▲5,671億円)を下回る結果となった。輸出が前年比10.3%(6月:同5.4%)、輸入が前年比16.6%(6月:同3.2%)といずれも前月から伸びが高まったが、輸入の伸びが輸出の伸びを上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲5,605億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲5.2%(6月:同▲6.2%)、輸出価格が前年比16.3%(6月:同12.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.4%(6月:同▲8.9%)、輸入価格が前年比11.6%(6月:同13.3%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲7,552億円と38ヵ月連続の赤字となったが、6月の▲8,196億円からは赤字幅が若干縮小した。輸出が前月比1.7%と2ヵ月ぶりに増加し、輸入の伸び(同0.9%)を上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年7月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=88.1(当研究所による試算値)と、6月の87.8からほぼ横ばいとなった。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台後半まで下落しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年8月に80ドル台後半となった後、9月には80ドル台前半まで低下することが見込まれる。

2.自動車輸出は低迷継続

24年7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲5.0%(6月:同▲2.9%)、EU向けが前年比▲13.8%(6月:同▲20.1%)、アジア向けが前年比▲4.2%(6月:同▲5.3%)、うち中国向けが前年比▲10.9%(6月:同▲8.9%)となった。

24年7月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲0.8%(6月:同▲1.0%)、EU向けが前月比2.4%(6月:同▲0.7%)、アジア向けが前月比▲0.1%(6月:同▲1.9%)、うち中国向けが前月比▲3.1%(6月:同▲5.2%)、全体では前月比0.3%(6月:同▲0.4%)となった。

EU向けは前月比でプラスとなったが、4-6月期の急速な落ち込み(前期比▲9.1%)の反動によるもので、いずれの国・地域向けの輸出も低迷している。品目別には、グローバルなIT関連財の調整進捗受けて、半導体電子部品等のIT関連輸出(実質ベース)は持ち直しているが、新たな認証不正問題の影響もあり、自動車輸出が低迷している。自動車輸出(対世界、台数ベース)は、前年比▲6.9%と3ヵ月連続の減少となった。6月の同▲12.5%からは減少幅が縮小したが、季節調整値(当研究所による試算値)では、前月比▲0.5%(6月:同▲3.8%)と3ヵ月連続で減少した。
 
海外経済の減速が続くなか、円高による下押圧力が加わることから、輸出は当面低調に推移する可能性が高い。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/自動車生産と自動車輸出の推移
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年08月21日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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