2024年07月12日

建設・物流の「2024年問題」で労働時間はどのくらい減るのか

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■要旨
  1. 2024年4月から建設事業、自動車運転の業務等について、時間外労働の上限規制の適用が開始された。建設業、運輸・郵便業は労働時間が長いため、新たな規制の適用に伴う労働時間の減少によって、建設業では工期の遅れ、物流業では配送能力の低下などの悪影響が出ることが懸念されている。
     
  2. 時間外労働が月60時間以上の就業者の割合は、全体の7.7%に対し、産業別には建設業が10.0%、運輸・郵便業が17.3%、職業別には建設・採掘従業者が12.4%、輸送・機械運転従業者が20.1%と高い。
     
  3. 全ての就業者の時間外労働が、法律で原則とされている年360時間(月30時間)に収まった場合の2024年度の労働時間の減少幅を試算すると、全体が▲4.3%、建設業が▲4.9%、建設・採掘従業者が▲5.7%、運輸・郵便業が▲8.1%、輸送・機械運転従業者が▲9.1%となった。
     
  4. 建設・物流業界の長時間労働の割合は上限規制が猶予されていた2023年度までにすでに大きく低下しており、前倒しで長時間労働の是正を進めていたことがうかがえる。
     
  5. このため、2024年度に労働時間が急激に落ち込む可能性は低いと考えられるが、建設・物流業界は長時間労働の割合が非常に高く、他の産業、職業に比べて上限規制の影響をより強く受けやすいことも事実である。平均労働時間だけでなく、時間外労働の上限規制を超える就業者の動向が注目される。

 
■目次

●建設・物流の「2024年問題」で労働時間はどのくらい減るのか
  ・時間外労働の上限規制が建設事業、自動車運転業務でも適用
  ・労働時間区分別に見た就業者数
  ・長時間労働の割合が高い建設・物流業界
  ・時間外労働の上限規制による労働時間減少幅の試算
 

(2024年07月12日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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