2024年06月28日

鉱工業生産24年5月-4-6月期の増産幅は、1-3月期の落ち込みを大きく下回る公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車生産が急回復

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が6月28日に公表した鉱工業指数によると、24年5月の鉱工業生産指数は前月比2.8%(4月:同▲0.9%)と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.0%、当社予想は同1.4%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比3.5%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比1.1%と2ヵ月ぶりの上昇となった。

5月の生産を業種別に見ると、工場の稼働再開を受けて自動車が前月比18.1%と急回復したほか、自動車関連品目(自動車用電気照明器具、カーナビゲーションシステム等)を多く含む電気・情報通信機械が同5.1%の高い伸びとなった。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は24年1-3月期の前期比▲2.0%の後、4月が前月比▲0.1%、5月が同0.9%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は24年1-3月期の前期比▲6.2%の後、4月が前月比4.8%、5月が同▲1.4%となった。

24年4、5月の平均を1-3月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は4.0%、建設財は3.5%高い。24年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.4%と2四半期ぶりに減少したが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しており、4-6月期には増加に転じる可能性が高い。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は24年1-3月期の前期比▲5.7%の後、4月が前月比▲0.9%、5月が同6.6%となった。5月は耐久消費財が前月比11.1%、非耐久消費財が前月比2.3%であった。

24年1-3月期のGDP統計の民間消費は、物価高による下押しが続く中、生産・出荷停止に伴う自動車販売の落ち込みもあり、前期比▲0.7%と4四半期連続で減少した。4-6月期は工場の稼働再開を受けて自動車販売が持ち直すことなどから、5四半期ぶりの増加となることが予想される。

2.4-6月期の増産幅は1-3月期の落ち込みを大きく下回る公算

製造工業生産予測指数は、24年6月が前月比▲4.8%、7月が同3.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲1.7%、▲0.9%であった。

予測指数を業種別にみると、5月はほとんどの業種が減産計画となっているが、特に生産用機械(前月比▲11.6%)、情報通信機械(同▲11.0%)の減産幅が大きい。工場の再稼働をうけた挽回生産で5月に前月比11.6%の高い伸びとなった輸送機械(8割強が自動車)は6月が前月比▲6.4%、7月が同0.1%となっている。ただし、予測調査は毎月10日現在の生産計画となっており、6月初めに発覚した自動車メーカーの新たな認証不正問題の影響が織り込まれていない。実際の生産は計画を下回る可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
24年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、24年4-6月期の生産は前期比2.0%となる。2四半期ぶりの増産は確保できそうだが、実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があり、特に自動車の下振れ幅が大きくなる可能性があることを踏まえれば、前期比1%台前半の伸びとなることが見込まれる。4-6月期の増産幅は1-3月期の落ち込み(前期比▲5.2%)を大きく下回る可能性が高い。
 
 

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(2024年06月28日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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