2024年06月19日

貿易統計24年5月-EU向けを中心に輸出は弱めの動き

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字(季節調整値)が継続

財務省が6月19日に公表した貿易統計によると、24年5月の貿易収支は▲12,213億円の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲13,004億円、当社予想も▲13,004億円)通りの結果となった。輸出が前年比13.5%(4月:同8.3%)、輸入が前年比9.5%(4月:同8.3%)といずれも前月から伸びを高めたが、輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったため、貿易収支は前年に比べ1,610億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲0.9%(4月:同▲3.2%)、輸出価格が前年比14.5%(4月:同11.9%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲1.9%(4月:同0.7%)、輸入価格が前年比11.6%(4月:同7.6%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲6,182億円と36ヵ月連続の赤字となり、4月の▲5,813億円から赤字幅が若干拡大した。輸出が前月比1.2%と3ヵ月連続で増加したが、輸入が同1.5%と輸出の増加幅を上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年5月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=89.0ドル(当研究所による試算値)と、4月の85.8ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は80ドル台前半で推移しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年6月以降、80ドル台半ばで推移することが見込まれる。

2.EU向け輸出が特に弱い

24年5月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比6.7%(4月:同▲2.3%)、EU向けが前年比▲17.9%(4月:同▲13.7%)、アジア向けが前年比0.7%(4月:同▲1.6%)、うち中国向けが前年比▲0.4%(4月:同▲5.1%)となった。

24年5月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比1.8%(4月:同▲2.0%)、EU向けが前月比▲4.1%(4月:同▲3.2%)、アジア向けが前月比▲0.2%(4月:同▲0.3%)、うち中国向けが前月比2.1%(4月:同▲2.9%)、全体では前月比▲1.6%(4月:同0.7%)となった。24年4、5月の平均を1-3月期と比較すると、アジア向けは1.1%高いが、米国向けが▲1.5%、EU向けが▲8.4%、中国向けが▲0.1%低くなっている(全体は0.5%高い)。アジア向けはほぼ横ばいだが、欧米向けが弱く、特にEU向けは自動車を中心に急速に落ち込んでいる。

財別には、グローバルなIT関連財の持ち直しを受けて、半導体電子部品等のIT関連輸出(実質ベース)が22年3月以来、2年2ヵ月ぶりに前年比で増加に転じた。IT関連は先行きの輸出を下支えすることが見込まれる。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年06月19日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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