2024年06月03日

法人企業統計24年1-3月期-経常利益(季節調整値)が再び過去最高を更新

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.経常利益は4四半期連続で前年比二桁の高い伸び

経常利益の推移 財務省が6月3日に公表した法人企業統計によると、24年1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比15.1%(10-12月期:同13.0%)と5四半期連続の増益となり、4四半期連続で前年比二桁の高い伸びとなった。製造業が前年比23.0%(10-12月期:同19.9%)と2四半期連続の増益、非製造業が前年比11.5%(10-12月期:同9.5%)と13四半期連続の増益となった。
製造業は、生産活動の低迷を背景に売上高の伸びが23年10-12月期の前年比3.2%から同2.8%に鈍化したが、売上高経常利益率が23年1-3月期の7.0%から8.4%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、原油高の一服に伴い変動費の伸びが鈍化したことが利益率を大きく押し上げた。

非製造業は、個人消費の低迷などから売上高の伸びが23年10-12期の前年比4.6%から同2.1%に鈍化したが、売上高経常利益率が23年1-3月期の6.0%から6.6%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。人件費要因はマイナスとなったが、製造業と同様に変動費要因が大幅なプラスとなった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は過去最高水準を更新

経常利益を業種別に見ると、製造業は、電気機械(前年比▲17.7%)が5四半期連続、生産用機械(同▲16.7%)が3四半期連続の減益となったが、情報通信機械(同51.9%)、輸送用機械(同33.1%)、化学(同37.8%)、鉄鋼(同30.0%)等が前年比で二桁の高い伸びとなり、全体を大きく押し上げた。

非製造業は、電気業(前年比▲92.8%)が大幅減益となったが、不動産業(同55.6%)、運輸・郵便業(同57.4%)、サービス業(同29.9%)が大幅増益となった。なお、電気業は大幅減益となったが、燃料費高騰の影響で21年10-12月期から22年10-12月期まで5四半期連続の赤字となった後、23年1-3月期以降は5四半期連続で黒字を確保している。

季節調整済の経常利益は前期比6.7%(10-12月期:同▲1.9%)と3四半期ぶりに増加した。製造業が前期比5.1%(10-12月期:同▲2.0%)と2四半期ぶり、非製造業が前期比7.6%(10-12月期:同▲1.8%)と3四半期ぶりに増加した。
経常利益(季節調整値)の推移 経常利益(季節調整値)は28.1兆円となった。23年4-6月期に過去最高水準を更新した後、2四半期連続で減少したが、24年1-3月期にはその減少分を取り戻すことにより、再び過去最高を更新した。製造業(10.1兆円)、非製造業(18.0兆円)ともに過去最高となった。

24年1-3月期は鉱工業生産が前期比▲5.2%の大幅減産、GDP統計の民間消費が前期比▲0.7%の減少となるなど、最終需要は極めて低調だった。それにもかかわらず企業収益が好調を維持したのは、価格転嫁が十分に行われ、利益率が改善しているためである。

3.設備投資は伸び悩み

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比6.8%(10-12月期:同16.4%)と12四半期連続で増加したが、前期からは伸びが鈍化した。製造業が前年比8.7%(10-12月期:同20.6%)、非製造業が前年比5.8%(10-12月期:同14.2%)といずれも前期から伸びが低下した。
設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲4.2%(10-12月期:同10.7%)と3四半期ぶりに減少した。製造業が前期比▲3.3%(10-12月期:同12.0%)、非製造業が前期比▲4.7%(10-12月期:同10.0%)の減少となった。

24年1-3月期の設備投資が前期比でマイナスとなったのは、前期の高い伸びの反動もあり、均してみれば増加基調を維持している。ただし、企業収益が絶好調を続けていることを踏まえれば、設備投資の伸びは低い。人手不足による工事進捗の遅れや投資計画の先送りがその要因として考えられる。

4.1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/10公表予定の24年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.5%(前期比年率▲1.9%)と予想する。1次速報の前期比▲0.5%(前期比年率▲2.0%)とほぼ変わらないだろう。

設備投資は1次速報の前期比▲0.8%から同▲0.4%に上方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比6.8%(10-12月期:同11.7%)と12四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比6%台半ばとなった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比21.8%(10-12月期:同45.0%)の高い伸びとなった。
2024年1-3月期GDP2次速報の予測 1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比5.7%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度0.2%から変わらないだろう。

その他の需要項目では、民間消費は3月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比▲0.7%から同▲0.8%へ下方修正される一方、公的固定資本形成は3月の建設総合統計の結果が反映され、前期比3.1%から同3.5%へ上方修正されると予想する。
 
 

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(2024年06月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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