2024年06月28日

雇用関連統計24年5月-製造業を中心に新規求人数の減少が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が6月28日に公表した労働力調査によると、24年5月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から10万人の増加となる中、就業者が前月から10万人増加し、失業者は前月から1万人減少の182万人(いずれも季節調整値)となった。
就業者数は前年差21万人増(4月:同9万人増)と22ヵ月連続で増加し、前月から増加幅が拡大した。産業別には、卸売・小売業が前年差16万人増(4月:同5万人増)と2ヵ月連続で増加、宿泊・飲食サービス業が前年差13万人増(4月:同25万人増)と23ヵ月連続で増加した。一方、医療・福祉は前年差4万人減(4月:同8万人増)と4ヵ月ぶりに減少、生産活動の低迷を反映し、製造業が前年差7万人減(4月:同27万人減)、と3ヵ月連続で減少した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ17万人増(4月:同23万人増)と27ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差20万人増(4月:2万人増)と7ヵ連続で増加したが、非正規の職員・従業員数が前年差4万人減(4月:同20万人増)と9ヵ月ぶりに減少した。

2.求人数の減少が続く

厚生労働省が6月28日に公表した一般職業紹介状況によると、24年5月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.24倍(QUICK集計・事前予想:1.26倍、当社予想は1.25倍)となった。有効求人数が前月比0.1%のほぼ横ばいとなる一方、有効求職者数が同1.9%の増加となったことが求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.01ポイント低下の2.16倍となった。新規求人数が前月比0.8%の増加、新規求職申込件数が同1.4%の増加となった。

新規求人数は前年比▲0.6%(4月:同▲2.3%)と9ヵ月連続で減少した。産業別には、情報通信業(前年比5.7%)が2ヵ月連続で増加したが、生活関連サービス・娯楽業(同▲10.6%)が2ヵ月ぶりに減少し、製造業(前年比▲7.4%)、建設業(同▲3.4%)が15ヵ月連続で減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
企業の人手不足感は強い状態が続いているが、24年1-3月期の実質GDPが前期比年率▲1.8%のマイナス成長となるなど、足もとの経済活動が停滞していることを反映し、労働市場はここにきて弱めの動きが見られる。特に、製造業は就業者数、新規求人数ともに減少しており、生産活動の停滞が雇用の悪化をもたらす形となっている。

求人数の減少は、採用方法がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしていることも一因となっているとみられるが、企業の求人意欲は実態として低下している可能性が高まっている。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年06月28日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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