2024年06月21日

消費者物価(全国24年5月)-基調的な物価上昇圧力は弱まっているが、電気代の値上げが上昇率を大きく押し上げ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.3ポイント拡大の2.5%

消費者物価指数の推移 総務省が6月21日に公表した消費者物価指数によると、24年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.5%(4月:同2.2%)となり、上昇率は前月から0.3ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.6%、当社予想も2.6%)を下回る結果であった。

食料(生鮮食品を除く)、教養娯楽の伸びは鈍化したが、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げで電気代が4月の前年比▲1.1%から同14.7%へ急上昇したことがコアCPIを大きく押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.1%(4月:同2.4%)、総合は前年比2.8%(4月:同2.5%)であった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(4月:前年比4.4%→5月:同4.5%)、灯油(4月:前年比4.8%→5月:同4.8%)の上昇率は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(4月:前年比▲1.1%→5月:同14.7%)が急上昇したことに加え、燃料費上昇の影響でガス代(4月:前年比▲4.2%→5月:同▲2.5%)の下落率が縮小したことから、エネルギー価格は前年比7.2%となり、4月の同0.1%から上昇率が急拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比3.2%(4月:同3.5%)となり、23年8月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。カップ麺(前年比11.8%)、ケチャップ(同12.3%)、プリン(同21.2%)、せんべい(同16.9%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、中華麺(前年比▲0.1%)、卵(同▲10.8%)、食用油(同▲10.0%)など、下落に転じる品目が散見されるようになっている。外食は前年比2.1%(4月:同2.1%)となり、23年3月の前年比6.9%をピークに続いてきた鈍化傾向にいったん歯止めがかかる形となった。

サービスは前年比1.6%(4月:同1.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。宿泊料(4月:前年比18.8%→5月:同14.7%)、外国パック旅行(4月:前年比71.3%→5月:同67.4%)の伸びが鈍化したことがサービス価格の押し下げ要因となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 なお、宿泊料は23年11月の前年比62.9%をピークに24年5月には同14.7%まで大きく鈍化したが、全国旅行支援の影響を除くと、23年11月が前年比19.6%、24年5月が同9.6%(当研究所の試算値)となり、鈍化ペースは公表値よりも緩やかとなる。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.57%(4月:0.01%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.69%(4月:0.76%)、その他財が0.50%(4月:0.60%)、サービスが0.69%(4月:0.86%)、全国旅行支援が0.05%(4月:0.05%)であった。

2.物価上昇品目数が2ヵ月ぶりに減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数は410品目(4月は419品目)、下落品目数は78品目(4月は71品目)となり、上昇品目数が2ヵ月ぶりに前月から減少した。上昇品目数の割合は78.5%(4月は80.3%)、下落品目数の割合は14.9%(4月は13.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は63.6%(4月は66.7%)であった。

上昇品目数の割合は引き続き高水準で推移しているが、前年の価格水準が非常に高かった食料品を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。

3.コアCPI上昇率は当面2%台半ばで推移

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 コアCPI上昇率は基調としては鈍化傾向が続いているが、5月は再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げに伴う電気代の上昇率急拡大を主因として上昇率が前月から0.3ポイント拡大した。電気・都市ガス代は6月に激変緩和策の値引き額が半減、7月に終了するため、6、7月の2ヵ月で電気代は10%弱、都市ガス代は5%程度の値上げとなる。この結果、エネルギー価格は7月には前年比で二桁の高い伸びとなり、コアCPI上昇率への寄与度は1%程度まで拡大することが見込まれる。

また、サービス価格の上昇率は24年4月に9ヵ月ぶりに2%を割り込み、5月は1.6%となったが、24年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ったことを受けて、再び伸びが高まることが予想される。

コアCPI上昇率は、食料(除く生鮮食品)の伸び率鈍化をエネルギー価格の上昇ペース加速が打ち消す形で、24年度前半は2%台半で推移するだろう。現時点では、コアCPI上昇率は財価格の上昇率鈍化を主因として24年度後半に2%台前半まで鈍化し、25年度入り後には日銀の物価目標である2%を割り込むと予想している。
 
 

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(2024年06月21日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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