2024年07月19日

消費者物価(全国24年6月)-政策変更に左右される物価上昇率

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大の2.6%

消費者物価指数の推移 総務省が7月19日に公表した消費者物価指数によると、24年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.6%(5月:同2.5%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.7%、当社予想は2.6%)を下回る結果であった。

食料(生鮮食品を除く)の伸びは鈍化したが、電気洗濯機、ルームエアコンなどの家庭用耐久財、宿泊料、テーマパーク入場料などの教養娯楽サービスの伸びが高まったこと、激変緩和策の値引き額が半減されたことにより都市ガス代が上昇に転じたことがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.2%(5月:同2.1%)、総合は前年比2.8%(5月:同2.8%)であった。
 
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(5月:前年比4.5%→6月:同3.7%)、灯油(5月:前年比4.8%→6月:同4.4%)、電気代(5月:前年比14.7%→6月:同13.4%)の上昇率は鈍化したしたが、ガス代(5月:前年比▲2.5%→6月:同2.4%)が13ヵ月ぶりに上昇に転じたことから、エネルギー価格の上昇率は5月の前年比7.2%から同7.7%へと拡大した。電気代は値引き額半減の影響で前月比では上昇したが、23年6月に規制料金が引き上げられた裏が出る形で前年比では上昇率が鈍化した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比2.8%(5月:同3.2%)となり、23年8月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。ただし、前月比では5ヵ月連続で上昇しており、前年比の鈍化ペースは緩やかとなっている。

米類(前年比23.3%)、ケチャップ(同11.4%)、プリン(同19.0%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、麺類(前年比▲0.8%)、卵(同▲12.5%)、食用油(同▲8.1%)など、下落する品目も増えている。外食は前年比2.1%(5月:同2.1%)と3ヵ月連続で同じ伸び率となり、23年3月の前年比6.9%をピークに続いてきた鈍化傾向にいったん歯止めがかかる形となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比1.7%(5月:同1.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。診療代(5月:前年比▲1.1%→6月:同0.1%)が上昇に転じたこと、テーマパーク入場料(5月:前年比0.3%→6月:同7.7%)、宿泊料(5月:前年比14.7%→6月:同19.9%)、外国パック旅行(5月:前年比67.4%→6月:同69.9%)の上昇率が高まったことがサービス価格の押し上げ要因となった。

ただし、宿泊料の上昇率拡大は23年6月に全国旅行支援による押し下げ幅が拡大した裏が出たことによるものである。全国旅行支援の影響を除いた宿泊料は23年11月の前年比19.6%から24年6月には同6.6%まで鈍化している(当研究所の試算値)。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.61%(5月:0.57%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.60%(5月:0.69%)、その他財が0.50%(5月:0.50%)、サービスが0.76%(5月:0.69%)、全国旅行支援が0.12%(5月:0.05%)であった。

2.物価上昇品目数が2ヵ月連続で減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、6月の上昇品目数は404品目(5月は410品目)、下落品目数は75品目(5月は78品目)となり、上昇品目数が2ヵ月連続で前月から減少した。上昇品目数の割合は77.4%(5月は78.5%)、下落品目数の割合は14.4%(5月は14.9%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は63.0%(5月は63.6%)であった。

上昇品目数の割合は引き続き高水準で推移しているが、前年の価格水準が非常に高かった食料を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。食料(生鮮食品を除く)の下落品目数の割合は20.6%となった。

3.コアCPI上昇率は一時的に2%割れに

エネルギー価格は、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げ、電気・ガス価格の激変緩和策の値引き額半減によって、5月、6月と大きく上昇した。エネルギー価格は、激変緩和策がいったん終了する7月には前年比で二桁の高い伸びとなることが見込まれる。

その後、9~11月(8~10月使用分)は「酷暑乗り切り支援策」によって、電気・都市ガス代が大きく押し下げられるため、コアCPI上昇率はいったん2%を割り込むが、支援策終了後は再び2%台となるだろう。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 コアCPI上昇率はその後も政策変更によって大きく左右される可能性が高い。政府は、ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和策を24年末までとしているが、足もとのガソリン店頭価格は、補助金がなければ1リットル当たり200円を上回っており、円高、原油安が大きく進まない限り、24年末でも政府が目標としている175円を大きく上回る。ガソリン、灯油等に対する激変緩和策は25年入り後も継続される公算が大きい。

現時点では、電気・都市ガスの支援策は24年11月に終了、ガソリン、灯油等の激変緩和策は24年度末まで現行通り、25年度は補助率を縮小した上で継続することを前提として、コアCPI上昇率は25年度半ばまで2%台、25年度後半は2%を若干割り込む水準で推移すると予想している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年07月19日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【消費者物価(全国24年6月)-政策変更に左右される物価上昇率】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

消費者物価(全国24年6月)-政策変更に左右される物価上昇率のレポート Topへ