2024年08月30日

雇用関連統計24年7月-新規求人数が前年比で増加に転じたが、低迷は継続

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.7%

完全失業率と就業者の推移 総務省が8月30日に公表した労働力調査によると、24年7月の完全失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.7%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想は2.6%)となった。

労働力人口が前月から9万人の減少となる中、就業者が前月から20万人減少し、失業者は前月から11万人増加の187万人(いずれも季節調整値)となった。
就業者数は前年差28万人増(6月:同37万人増)と24ヵ月連続で増加したが、前月から増加幅が縮小した。産業別には、卸売・小売業が前年差9万人増(6月:同31万人増)と4ヵ月連続、宿泊・飲食サービス業が前年差1万人増(6月:同3万人増)と25ヵ月連続、医療・福祉は前年差19万人増(6月:同7万人増)と2ヵ月連続で増加したが、生産活動の停滞を反映し、製造業が前年差9万人減(6月:同8万人減)、と5ヵ月連続で減少した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ6万人増(6月:同19万人増)と29ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差34万人増(6月:31万人増)と9ヵ連続で増加したが、非正規の職員・従業員数が前年差29万人減(6月:同12万人減)と3ヵ月連続で減少した。

2.新規求人数が前年比で増加に転じたが、低迷は継続

厚生労働省が8月30日に公表した一般職業紹介状況によると、24年7月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.24倍(QUICK集計・事前予想:1.23倍、当社予想も1.23倍)となった。有効求職者数が前月比▲0.9%の減少となり、有効求人数の減少幅(同▲0.3%)を上回ったことが求人倍率の上昇につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.04ポイント低下の2.22倍となった。新規求人数が前月比▲1.3%の減少、新規求職申込件数が同0.6%の増加となった。

新規求人数は前年比1.2%(6月:同▲9.4%)と11ヵ月ぶりに増加した。産業別には、建設業(前年比▲1.4%)、製造業(同▲2.9%)、宿泊・飲食サービス業(同▲1.6%)は減少が続いたが、情報通信業(6月:前年比▲5.0%→7月:同6.6%)、生活関連サービス・娯楽業(6月:前年比▲13.7%→7月:同2.9%)が増加に転じた。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
新規求人数は前年比では11ヵ月ぶりに増加に転じたが、季節調整値では2ヵ月連続で減少し、コロナ禍前の水準を大きく下回っている。
入職経路別の入職者の割合 企業の人手不足感が非常に強いにもかかわらず、新規求人数の低迷が続いている背景には、企業の求人がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしていることがあると考えられる。

厚生労働省の「雇用動向調査」によれば、様々な入職経路のうち、ハローワークを通した入職者の割合は長期的に低下傾向が続いているが、23年は13.9%と前年の18.2%から4.3ポイントの急低下となった。ハローワークにおける求人・求職動向が労働市場全体の需給関係を反映しにくくなっている。
 
 

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(2024年08月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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