2024年08月23日

消費者物価(全国24年7月)-コアコアCPIの伸びが1年10か月ぶりに2%を割り込む

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1. コアCPI 上昇率は前月から0.1 ポイント拡大の2.7%

消費者物価指数の推移 総務省が8 月23 日に公表した消費者物価指数によると、24 年7 月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.7%(6 月:同2.6%)となり、上昇率は前月から0.1 ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK 集計:2.7%、当社予想も2.7%)
通りの結果であった。

食料(生鮮食品を除く)、携帯電話通信料の伸びが鈍化し、全国旅行支援の反動による宿泊料の押し上げ効果が縮小したが、電気・都市ガス代の激変緩和策がいったん終了し、エネルギー価格の上昇率が大きく高まったことがコアCPI 上昇率を押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比1.9%(6 月:同2.2%)となり、22 年9 月以来、1 年10 か月ぶりに2%を割り込んだ。総合は前年比2.8%(6 月:同2.8%)であった。

コアCPI の内訳をみると、ガソリン(6 月:前年比3.7%→7 月:同1.9%)、灯油(6 月:前年比4.4%→7 月:同3.7%)の伸びは鈍化したが、激変緩和策がいったん終了し、電気代(6 月:前年比13.4%→7 月:同22.3%)、ガス代(6 月:前年比2.4%→7 月:同7.4%)の上昇率が高まったことから、エネルギー価格の上昇率は6 月の前年比7.7%から同12.0%へと拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比2.6%(6 月:同2.8%)となり、23 年8 月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。ただし、前月比では6 ヵ月連続で上昇しており、前年比の鈍化ペースは緩やかとなっている。米類(前年比17.2%)、ケチャップ(同12.8%)、果実ジュース(同32.9%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、麺類(前年比▲0.8%)、卵(同▲13.8%)、食用油(同▲8.4%)など、下落する品目も増えている。

外食は前年比2.3%(6 月:同2.1%)と前月から上昇率が0.2 ポイント拡大し、23 年3 月の前年比6.9%をピークに続いてきた鈍化傾向に歯止めがかかる形となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比1.4%(6 月:同1.7%)となり、上昇率は前月から0.3 ポイント縮小した。外食の伸びは高まったが、全国旅行支援の反動による押し上げ幅が縮小したことにより、宿泊料が6月の前年比19.9%から同10.3%へと上昇率が縮小したこと、外国パック旅行(6 月:前年比69.9%→7 月:同58.9%)、携帯電話通信料(6 月:前年比8.8%→7 月:同0.6%)、航空運賃(6 月:前年比7.0%→7 月:同▲1.5%)の伸びが鈍化したことがサービス価格の伸びを抑えた。

コアCPI 上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.94%(6 月:0.61%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.53%(6 月:0.60%)、その他財が0.55%(6 月:0.50%)、サービスが0.66%(6 月:0.76%)、全国旅行支援が0.03%(6 月:0.12%)であった。

2.物価上昇品目数が3 ヵ月連続で減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522 品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、7 月の上昇品目数は392 品目(6 月は404 品目)、下落品目数は94品目(6 月は75 品目)となり、上昇品目数が3ヵ月連続で前月から減少した。上昇品目数の割合は75.1%(6 月は77.4%)、下落品目数の割合は18.0%(6 月は14.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は57.1%(6 月は63.0%)であった。

上昇品目数の割合は引き続き高水準で推移しているが、前年の価格水準が非常に高かった食料を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。

3. コアCPI 上昇率は10 月に2%割れの後、再び2%台へ

24 年7 月のコアコアCPI 上昇率は1 年10 か月ぶりに2%を割り込み、基調的な物価上昇圧力は徐々に弱まっているが、コアCPI は政策変更に左右される展開が続いており、2%台の伸びを維持している。

エネルギー価格は、電気・ガス価格の激変緩和策終了によって大幅に上昇したが、9~11 月(8~10 月使用分)は「酷暑乗り切り支援策」によって、電気・都市ガス代は再び大きく押し下げられる。コアCPI 上昇率はエネルギー価格の上昇率鈍化を主因として24 年10 月にはいったん2%を割り込むが、支援策終了後には再び2%台となることが予想される。その後は、賃上げに伴うサービス価格の上昇を円高による財価格の上昇率鈍化が打ち消す形で、政策要因を除いた物価上昇率は鈍化傾向が続くだろう。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 政府は、ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和策を24 年末までとしているが、足もとのガソリン店頭価格は、補助金がなければ1 リットル当たり190 円を上回っており、円高、原油安が大きく進まない限り、24 年末でも政府が目標としている175 円を大きく上回る。ガソリン、灯油等に対する激変緩和策は25 年入り後も継続される公算が大きい。

現時点では、電気・都市ガスの支援策は24年11 月に終了、ガソリン、灯油等の激変緩和策は24 年度末まで現行通り、25 年度は補助率を縮小した上で継続することを前提として、コアCPI 上昇は25 年度前半には2%を割り込むと予想している。
 
 

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(2024年08月23日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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