2024年04月16日

引き続き高成長が予想されるインド保険市場-2022年の生保収入保険料は前年の世界第9位から第7位に浮上-

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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1――引き続き著しい成長が予想されるインド保険市場

Swiss Re Instituteは今年1月、急成長を続けるインド保険市場についてのレポートを公表した1。同レポートによれば、経済成長、中間層の拡大、技術革新、規制面のサポートを背景として、インドの保険市場は、今後5年間(2024~28年)の生損保合計した保険料総額は7.1%増となり、新興諸国平均(5.1%)、世界平均(2.4%)、(生命保険では、同6.7%、5.2%、2.5%)を大きく上回ることを予測するとともに、G20諸国の中でも最も急速に成長する、とされている。

なお、インドでは、生保の収入保険料は、収入保険料生損保合計の約4分の3を占めている。
【図表1】 インドの保険市場見通し
 
1 Swiss re Institute「India's insurance market :growing fast, with ample scope to build resilience」(2024年1月16日)。なお、Swiss re Instituteでは、昨年も同様のレポート(「India’s insurance market: poised for rapid growth」2023年1月4 日)を公表しており、概要について小著「急成長を遂げるインド保険市場-2032 年には生保収入保険料世界第5位に―」『保険・年金フォーカス』(2023年4月18日)でも紹介している。そこでは、2023年以降10年間の生保市場の年平均成長率を9%と予測していた。

2――世界におけるインド生保市場

2――世界におけるインド生保市場

急成長を遂げているインド生保市場だが、世界各国と比較してみるとどうなのだろうか。 2023年にSwiss Re Instituteが公表2した2022年の世界の生保収入保険料では、インドは世界第7位となっている(図表2)。
【図表2】2022年 収入保険料(生保)世界トップ10市場実績(単位;10億ドル)
同社による前年データによれば、2021年におけるインドは、ドイツ、韓国に続く第9位となっており3、同国の急成長ぶりを示しているといえよう。

前掲の2024年1月にSwiss Re Instituteより公表されたレポートには、世界の生保市場に占めるインドの順位についての将来予測は記載されていないが、昨年5月にアリアンツが公表したAllianz Global Insurance Report2023 Anchor in turbulent times掲載データによれば、2033年には、米国、中国・に続き、世界第3位となることが予想されている4
【図表3】2033年 収入保険料(生保)世界トップ10市場予測(単位;10億ユーロ)
2022 年 3 月に、新長官Shri Debasish Panda 氏が就任して以来、インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of Indiaインド保険規制開発局)は、2047 年までに、すべてのインド国民が適切な生命保険、医療保険、損害保険に加入し、すべての企業が適切な保険ソリューションによってサポートされる"Insurance for All"を実現することを約束するとして、それに向 けた規制改革の検討、実施が矢継ぎ早に行われてきた5。デジタル化の進展も著しく、ダイナミックである6。著しい変容を遂げつつあるインド生保市場については、引き続き、注視するとともに、随時、報告していきたい。
 
2 Swiss re Institute sigma No3 2023 「World insurance :stirred, and not shaken」(2023年7月10日)。
3 Swiss re Institute sigma No4 2022 「World insurance :inflation risks front and centre」(2022年7月13日)。
4 Allianz Global Insurance Report2023 Anchor in turbulent times(2023年5月17日)の概要については、小著「世界保険市場2033年までの見通し-2033年生保収入保険料はインド世界第3位、日本は第5位に-」『基礎研レポート』(2023 年8 月31 日)でも紹介している。
5 新長官就任後のインドの規制改革の動きについては、以下の一連の中村 亮一『保険・年金フォーカス』にて紹介している。
「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その1)-」(2022 年11 月9 日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72907?site=nl
「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その2)-」(2022 年11 月15 日)https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72997?site=nli
「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その3)-」(2023 年2 月3 日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73796?site=nli
「インドの保険監督規制を巡る動向2023-IRDAI による規制改革等の状況(その1)-」(2023 年7 月20 日)https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75471?site=nli
「インドの保険監督規制を巡る動向2023-IRDAI による規制改革等の状況(その2)-」(2023 年7 月25 日)https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75570?site=nli
6 インドにおける生保商品のオンライン販売の状況については、松岡博司「インド生保市場における生保・年金のオンライン販売の動向―デジタル化を梃子に最先端を目指す動き―」『保険・年金フォーカス』(2023年7月19日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75462?site=nli
にて紹介している。
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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

(2024年04月16日「保険・年金フォーカス」)

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