2017年01月31日

鉱工業生産16年12月~10-12月期の生産は消費増税前以来の高い伸び

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10-12月期の生産は前期比2.0%の高い伸び

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、16年12月の鉱工業生産指数は前月比0.5%(11月:同1.5%)と2ヵ月連続で上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.3%、当社予想は同1.0%)通りの結果となった。出荷指数は前月比▲0.3%と4ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.2%と4ヵ月ぶりの上昇となった。

12月の生産を業種別に見ると、情報通信機械が前月比▲10.7%の急低下となり生産指数全体を大きく押し下げたが、国内販売の持ち直し、在庫調整の進展を受けて輸送機械が前月比2.0%と2ヵ月連続で上昇するなど、速報段階で公表される15業種中12業種が前月比で上昇(2業種が低下、1業種が横ばい)し、情報通信機械のマイナスをカバーした。

16年10-12月期の生産は前期比2.0%と3四半期連続で上昇し、7-9月期の同1.3%から伸びが加速した。生産指数が四半期ベースで2%台の伸びとなったのは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要による押し上げがあった2014年1-3月期(前期比2.3%)以来となる。業種別には、世界的なITサイクルの改善を受けて電子部品・デバイスが7-9月期の前期比4.6%から同8.1%へと伸びが大きく加速したほか、輸送機械が前期比3.6%と3四半期連続の増産となった。

また、10-12月期の出荷指数は前期比3.5%と生産指数を上回る高い伸びとなった。この結果、在庫指数は前期比▲3.5%と3四半期連続で低下し、低下幅は7-9月期の同▲2.6%から拡大した。内外需要の持ち直しを受けて16年度に入り在庫調整は順調に進展している。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は16年7-9月期の前期比1.0%の後、10-12月は同3.2%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は16年7-9月期の前期比▲1.6%の後、10-12月期は同2.3%となった。16年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.4%の減少となったが、円高を主因として急速に落ち込んだ企業収益はすでに最悪期を過ぎており、設備投資は今後持ち直しに向かうことが見込まれる。10-12月期のGDP統計の設備投資は2四半期ぶりの増加となる可能性が高いだろう。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は16年7-9月期の前期比0.9%の後、10-12月期は同3.6%となった。耐久消費財(前期比5.6%)、非耐久消費財(同0.9%)ともに上昇した。鉱工業指数の消費財出荷には輸出向けが含まれていることには注意が必要だが、11月までの鉱工業出荷内訳表を見ると消費財出荷は国内向け、輸出向けとも堅調となっている。

家計調査の消費支出は弱めの動きが続いているが、消費財出荷、商業動態統計などの消費関連指標と合わせてみると、個人消費は持ち直しの動きを続けていると判断される。

2.生産は17年入り後も回復が続く

製造工業生産予測指数は、17年1月が前月比3.0%、2月が同0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(12月)、予測修正率(1月)はそれぞれ▲1.8%、▲0.9%であった。
輸送機械の生産、在庫動向 予測指数を業種別にみると、1月は情報通信機械が前月比11.8%の高い伸びとなっているが、同業種は直近3ヵ月の実現率が▲10%前後の大幅マイナスとなっており、実際の生産は前月比でほぼ横ばいにとどまる公算が大きい。一方、輸送機械は新型車投入効果の反動などから1月は前月比▲5.4%の減産計画となっているが、在庫水準が大きく低下していること、2月の計画が前月比6.2%の高い伸びとなっていることからすれば、それほど心配する必要はないだろう。
16年12月の生産指数を17年1、2月の予測指数で先延ばし(3月は横ばいと仮定)すると、17年1-3月期は前期比4.4%の高い伸びとなる。生産計画が大きく下方修正される傾向が続いているため、現時点での予測指数による先延ばしはあまり意味がないが、製造業を中心とした世界経済の回復や国内需要の持ち直しを背景とした在庫調整の進展を受けて、鉱工業生産は17年入り後も回復基調が続く可能性が高い。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2017年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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