2024年09月18日

TikTokによる児童の個人情報違法収集事件-米国連邦政府による提訴

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

米国政府はTikTokに対して、親の同意なく、児童(13歳未満)の個人情報を収集したとして、児童のオンラインプライバシー防止規則(COPPA Rule、以下規則)違反として恒久的差止と民事賠償金の支払いを求めて提訴した。
 
TikTokは児童向けにはKids Modeという、機能が制限され、当該児童の個人情報を取得しないサービスを提供していた。しかし、Kids Modeでは固有識別子(IPアドレスなど)を取得していた。固有識別子は個人情報に該当するとして親の同意が必要であると訴えた(日本では固有識別子は個人情報に該当しない)。
 
また、TikTokでは年齢判定の機能が緩いことから、児童が13歳以上向けの一般のアカウントを作成することがしばしば行われていた。この場合、児童のアカウントの削除およびTikTokが保有する児童の個人情報の削除を親が求めようとしても、TikTokは簡単に削除要請を出せないような仕組みにしていた。
 
また、削除申請がなされ、あるいはTikTokが自身で13歳未満であると判断した一般のアカウントについても、TikTokが削除することに積極的でなく、多くの児童の一般のアカウントが残っている現状がある。

■目次

1――はじめに
2――若干の前提
  1|Musical.lyに対する恒久的差止
  2|TikTokの現状
3――被告の違法行為
  1|総論
  2|親の同意なしのアカウント作成・情報収集
  3|親からの一般のアカウントおよび情報削除要求を拒否
  4|被告は自社内のシステムから児童の一般のアカウントと情報を削除せず
  5|被告の違反は大規模
4――該当法令と違反行為
5――日本法の下での検討
  1|個人情報の取得
  2|個人情報の利用停止・削除
6――おわりに

(2024年09月18日「基礎研レポート」)

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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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