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- 米雇用統計(25年8月)-非農業部門雇用者数が市場予想を下回り、前月に続いて大幅な雇用鈍化を確認
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2025年09月08日
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1.結果の概要:雇用者数が市場予想を下回った一方、失業率は市場予想に一致
9月5日、米国労働統計局(BLS)は8月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+2.2万人の増加1(前月改定値:+7.9万人)と+7.3万人から上方修正された前月、市場予想の+7.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.3%(前月:4.2%、市場予想:4.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇した一方、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月:62.2%、市場予想:62.2%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.3%(前月:4.2%、市場予想:4.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇した一方、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月:62.2%、市場予想:62.2%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:非農業部門雇用者数の伸びが5月以降に大幅鈍化したことを確認
事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は8月が市場予想を下回ったほか、後述するように過去2ヵ月分が▲2.1万人下方修正された。この結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは僅か+2.9万人となった。これは、25年初から4月までの月間平均増加ペースの+12.3万人、24年5月~25年4月の同+15.0万人からの大幅な鈍化を示す。
また、家計調査は労働参加率が横這い予想に反し前月から改善を示したものの、失業率が4.3%と24年5月以降にみられた4.0%~4.2%のレンジを遂に上抜けした。
また、家計調査は労働参加率が横這い予想に反し前月から改善を示したものの、失業率が4.3%と24年5月以降にみられた4.0%~4.2%のレンジを遂に上抜けした。

前年同月比は+3.7%(前月:+3.9%、市場予想:+3.8%)とこちらは前月、市場予想を下回った(図表1)。
このようにみると、8月の雇用統計は非農業部門雇用者数が25年5月以降に伸びが大幅に鈍化したほか、失業率が24年5月以降のレンジを上抜けするなど、事業所調査、家計調査ともに労働市場の減速を顕著に示す結果となった。
足元のインフレ率は関税の影響もあって上昇に転じているものの、7月と8月の雇用統計で労働市場の大幅な減速が確認されたことで9月16日~17日に行われるFOMC会合で利下げ再開が確実になったと言えよう。
3.事業所調査の詳細:広範な業種で雇用が減少

民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比+2.8万人(前月:+0.6万人)、小売業が+1.1万人(前月:+0.7万人)と前月から雇用の伸びが加速したほか、医療・社会扶助サービスが+4.7万人(前月:+7.2万人)と前月から伸びが鈍化したものの、堅調な伸びを維持した。一方、運輸・倉庫が+0.4万人(前月:+0.6万人)と前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.3万人(前月:+0.9万人)とマイナスに転じた。さらに、卸売業が▲1.2万人(前月:▲0.8万人)、専門・ビジネスサービスが▲1.7万人(前月:▲1.0万人)と前月からマイナス幅が拡大した。
財生産部門は前月比▲2.5万人(前月:▲0.8万人)と前月からマイナス幅が拡大した。建設業が▲0.7万人(前月:▲0.1万人)、製造業が▲1.2万人(前月:▲0.2万人)といずれもマイナス幅が拡大した。
政府部門は前月比▲1.6万人(前月:+0.2万人)と前月からマイナスに転じた。内訳をみると、連邦政府が▲1.5万人(前月:▲1.0万人)と前月からマイナス幅が拡大したほか、州・地方政府が▲0.1万人(前月:+1.2万人)とマイナスに転じた。一方、連邦政府職員はトランプ政権による人員削減の動きが続いており、1月以降の減少数は▲9.7万人となった。BLSは有給休暇や退職金を継続的に受け取っている職員は雇用者数として認識されるとしており、今後も連邦政府職員の減少傾向は持続する可能性が高い。
前月(7月)と前々月(6月)の雇用増加数(改定値)は前月が+7.9万人(改定前:+7.3万人)と+0.6万人の上方修正となった一方、前々月が▲1.3万人(改定前:+1.4万人)と▲2.7万人の下方修正となった(図表3)。雇用者数が減少するのはコロナ禍の20年12月以来となる。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲2.1万人の下修正となった。
BLSの公表に先立って9月4日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+5.4万人(前月改定値:+10.6万人、市場予想:+6.8万人)と+10.4万人から小幅上方修正された前月から大幅に低下、市場予想も下回った。この結果、ADP社の統計は前月から伸びが鈍化した雇用統計と整合的な結果となった。
8月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が36.53ドル(前月:36.43ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.2時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,249.33ドル(前月:1,245.91ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って9月4日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+5.4万人(前月改定値:+10.6万人、市場予想:+6.8万人)と+10.4万人から小幅上方修正された前月から大幅に低下、市場予想も下回った。この結果、ADP社の統計は前月から伸びが鈍化した雇用統計と整合的な結果となった。
8月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が36.53ドル(前月:36.43ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.2時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,249.33ドル(前月:1,245.91ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働参加率は4ヵ月ぶりに上昇
家計調査のうち、7月の労働力人口は前月対比で+43.6万人(前月:▲3.8万人)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳を見ると、失業者数が+14.8万人(前月:+22.1万人)と前月からプラス幅は縮小したものの、2ヵ月連続でプラスとなったほか、就業者数が+28.8万人(前月:▲26.0万人)と前月からプラスに転じて労働力人口を押し上げた。非労働力人口は▲22.0万人(前月:+23.9万人)とこちらは4ヵ月ぶりにマイナスに転じた。
これらの結果、労働参加率は62.3%(前月:62.2%)と4ヵ月ぶりに上昇した(図表5)。
一方プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は8月が83.7%(前月:83.4%)とこちらも前月から+0.3%ポイント上昇した。男女の内訳は、女性が77.7%(前月:77.7%)と前月から横這いとなった一方、男性が89.8%(前月:89.2%)と前月から+0.6%ポイント上昇して全体を押し上げた。
失業率は4.3%と前述のように24年5月以降のレンジである4.0%~4.2%を上抜けて21年10月以来の水準となった(図表6)。
これらの結果、労働参加率は62.3%(前月:62.2%)と4ヵ月ぶりに上昇した(図表5)。
一方プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は8月が83.7%(前月:83.4%)とこちらも前月から+0.3%ポイント上昇した。男女の内訳は、女性が77.7%(前月:77.7%)と前月から横這いとなった一方、男性が89.8%(前月:89.2%)と前月から+0.6%ポイント上昇して全体を押し上げた。
失業率は4.3%と前述のように24年5月以降のレンジである4.0%~4.2%を上抜けて21年10月以来の水準となった(図表6)。
8月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は193.0万人(前月:182.6万人)と前月から+10.4万人の増加となった。長期失業者の失業者全体に占めるシェアは25.7%(前月:24.9%)と前月から+0.8%ポイント上昇した(図表7)。一方、平均失業期間は24.5週(前月:24.1週)と前月から+0.4週長期化し、22年4月以来の長さとなっており職探しが難しいことを示した。
最後に、周辺労働力人口(183.6万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(474.9万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、8月が8.1%(前月:7.9%)と前月から+0.2%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.8%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
最後に、周辺労働力人口(183.6万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(474.9万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、8月が8.1%(前月:7.9%)と前月から+0.2%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.8%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(2025年09月08日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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