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2025年09月01日

米個人所得・消費支出(25年7月)-個人所得、消費支出(前月比)ともに前月を上回った一方、市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想に一致

8月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は7月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月:+0.3%)と前月を上回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.5%(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から上方修正された前月を上回った一方、市場予想の+0.5%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.3%(前月:+0.1%)と前月を上回った一方、こちらも市場予想(+0.3%)に一致した(図表5)。貯蓄率1は4.4%(前月:4.4%)と前月から横這いとなった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.3%)と前月から低下した一方、市場予想(+0.2%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月:+0.3%)とこちらは前月、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.6%(前月:+2.6%)と前月、市場予想(+2.6%)に一致した。コア指数は+2.9%(前月:+2.8%)と+前月を上回った一方、市場予想(+2.9%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費は財主導で4ヵ月ぶりの伸び

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は財消費が+0.8%と高い伸びとなったこともあって財主導で25年3月以来4ヵ月ぶりの高い伸びとなった(図表1)。実質ベースでも4ヵ月ぶりの高い伸びとなっており、関税に伴いインフレ加速の兆候がみられる中でも堅調な伸びとなった。

個人所得(前月比)は賃金・給与が+0.6%と高い伸びとなったこともあって、25年4月以来3ヵ月ぶりの高い伸びとなった。

個人消費、個人所得ともに堅調な伸びとなった結果、貯蓄率は前月から横這いとなった。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数が前月比で低下、前年同月比で横這いとなったものの、物価の基調を示すコア指数は前月比で高止まりしたほか、前年同月比が25年5月から3ヵ月連続で上昇しており、関税の影響に伴うインフレ圧力が燻っていることを示した。

3.所得動向:賃金・給与が24年11月以来、8ヵ月ぶりの高い伸び

7月の個人所得(前月比)は25年4月以来の高い伸びとなったが、賃金・給与が+0.6%(前月:+0.1%)と24年11月以来、8ヵ月ぶりの高い伸びとなったことが大きい(図表2)。その他の項目では自営業者所得が+0.7%(前月:+0.1%)、利息配当収入が+0.1%(前月:横這い)と前月から伸びが加速した。一方、前月に高い伸びとなった移転所得は横這い(前月:+1.1%)と大幅に伸びが鈍化した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、7月の名目が+0.4%(前月:+0.3%)と2ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から小幅に伸びが加速した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は+0.2%(前月:横這い)とこちらも2ヵ月連続のプラスとなったほか、前月から伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品の大幅な増加が財消費を主導

7月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した一方、財消費が+0.8%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速して個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、非耐久財が+0.1%(前月:+0.9%)と前月から伸びが大幅に鈍化した一方、耐久財が+1.9%(前月:▲0.8%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じて財消費全体を押し上げた。

耐久財では、家具・家電が+0.4%(前月:+0.8%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.6%(前月:+0.6%)と前月並みの伸びに留まった。これに対して、自動車・自動車部品が+4.8%(前月:▲3.5%)と前月から大幅なプラスに転じて耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財では食料・飲料が+0.6%(前月:+0.7%)、衣料・靴が+0.6%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲3.0%(前月:+2.0%)と前月からマイナスに転じた。

サービス消費は、外食・宿泊が▲0.1%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じたほか、住宅・公共料金が+0.3%(前月:+0.5%)、医療サービスが+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化した。一方、金融サービスが+1.5%(前月:+0.8%)と前月から伸びが加速したほか、輸送サービスが+0.6%(前月:▲0.6%)、娯楽サービスが+0.3%(前月:▲横這い)と前月からプラスに転じるなどマチマチの結果となった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比、前年同月比ともに物価を押し下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.1%(前月:+0.9%)と前月からマイナスに転じた(図表6)。食料品価格指数は▲0.1%(前月:+0.3%)とこちらも25年4月以来、3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲2.7%(前月:▲1.6%)と5ヵ月連続でマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+1.9%(前月:+2.2%)と前月から伸びは縮小したものの、17年6月以降のプラスが継続した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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