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2025年09月09日

米国経済の見通し-高関税政策にも関わらず米国経済は足元堅調維持。今後は景気減速へ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 米国の25年4-6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+3.3%(前期:▲0.5%)と前期からプラス成長に転換。トランプ関税前の駆け込み需要の反動減に伴い外需が成長率を+5.0%ポイント押し上げたほか、内需は前期並みの伸びを維持。
     
  2. 関税政策は依然として不透明な状況となっているものの、足元で個人消費は堅調。一頃に比べて経済政策の不確実性は低下したこともあって、株価は史上最高値圏で推移しているほか、長期金利は4%台前半での推移となるなど、金融市場は安定。
     
  3. ただし、7月の雇用統計で過去2ヵ月分の雇用者数が大幅に下方修正されたほか、8月も雇用者数が前月、市場予想を大幅に下回るなど、労働市場の減速が顕著となっており、関税政策に伴う実体経済への影響が顕在化した可能性を示唆。
     
  4. トランプ政権の経済政策の予見可能性が低いため、経済見通しは非常に不透明。当研究所は引き続き税制改革が成長押し上げ要因となる一方、関税の引上げや移民の強制送還が成長押し下げ要因とみられ、政策全体では25年と26年ともに小幅ながら成長押し下げが優勢になると評価。実質GDP成長率(前年比)は25年、26年ともに+1.7%と24年の+2.8%から大幅な低下を予想。現時点では景気後退の回避がメインシナリオ。
     
  5. 金融政策は、労働市場の減速を受けて25年9月に利下げを再開、12月にも追加利下げを実施しよう。26年はインフレ低下もあって2回の追加利下げを予想。
     
  6. 上記見通しのリスクは、トランプ政権の予見不可能な関税政策を始めとする経済政策。一部の関税に関する違憲判決が確定した場合は成長を押し上げる可能性もあろう。

 
(図表1)
■目次

1.経済概況・見通し
  (経済概況)4-6月期の成長率は前期からプラス成長に転換
  (経済見通し)成長率(前年比)は25年、26年ともに+1.7%を予想
2.実体経済の動向
  (労働市場、個人消費)労働市場の減速継続、個人消費も軟調へ
  (設備投資)関税政策に対する不透明感が重石
  (住宅投資)当面は住宅ローン金利の高止まりから住宅需要も軟調推移
  (政府支出)OBBBAが個人消費、設備投資を一定程度下支え、26年度予算審議に注目
  (貿易)外需は25年通年で成長率を押し下げ
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  (物価)関税が一時的にインフレを押上げ
  (金融政策)25年は9月、12月の2回、26年は年前半に2回の利下げを予想
  (長期金利)25年10-12月期平均が4.5%、26年10-12月期平均が4.2%と予想

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月09日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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