2025年04月25日

「ほめ曜日」×ご褒美消費-消費の交差点(9)

生活研究部 研究員 廣瀬 涼

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本レポートのポイント

・自分へのご褒美消費をする頻度として17.8%が「週に1回以上」と回答
・月に1回以上コンビニスイーツを購入する「Z世代」のうち、46.2%が「週1回以上」と回答
・アメリカにおいては「節約の反動」として、自分をいたわるための小さな贅沢として受け入れられている様子
・ご褒美消費には(1)現在的な役割、(2)将来的な役割、(3)未来的な役割、がある

1――きょうは、不二家で、ほめ曜日

1――きょうは、不二家で、ほめ曜日

数週間前のことだ。買い物をしているとき、ふと目に留まった言葉があった。

「ほめ曜日」――“褒めよう”と“曜日”をかけ合わせた、なんとも巧みで、どこか心に残るキャッチコピーだった。気になって調べてみると、それは株式会社不二家によるプロモーションの一環であることがわかった。公式サイトには、こんなメッセージが掲げられていた1
 
頑張った日も、頑張れなかった日だって。
1週間に1度ぐらい、自分にご褒美あげましょう。
あしたも笑顔でいられるように。
きょうは、不二家で、ほめ曜日

2024年9月25日に開催された「不二家洋菓子店 2024クリスマスケーキお披露目会」では、洋菓子事業本部 営業本部長の高村哲哉氏がこう語っている2
 
「当社が大切にしている家庭で過ごすクリスマスはもちろん、今年は私のため・自分へのご褒美という新たなクリスマス像にチャレンジする」

この「自分へのご褒美」というテーマは、不二家が年間キャッチコピーとして掲げている「今日は自分をほめ曜日」ともリンクしており、1年頑張った自分をねぎらう新たな提案として商品展開が行われていた。

日々、仕事や家事、人間関係に追われるなかで、自分のことはどうしても後回しになってしまいがちだ。そんな忙しい毎日の中で、「ほめ曜日」という言葉は、誕生日や記念日といった特別な日でなくても、自分のために何かを選び、心を労わるきっかけになるのではないかと筆者は感じた。

他人からの評価や結果に翻弄される日々の中で、自分自身の存在を認め、ねぎらうという行為は、思っている以上に大切なことだ。大人になると、多くの努力や配慮は“当然”とみなされ、子どものころのように褒められる機会はいつのまにか減っていく。たとえ何も成し遂げられなかった日でも、「今日もよくがんばったね」と、自分で自分を認めてあげること、それは現代社会におけるセルフケアの一つであり、自分を労わることが、また明日を前向きに生きるためのモチベーションにもつながるからだ。
 
1 株式会社不二家公式サイト https://www.fujiya-peko.co.jp/smileswitch/yougashi/
2 日本食糧新聞「不二家、クリスマスケーキなど予約開始 “自分をほめる日に”」2024/10/16, 4ページ

2――コンビニスイーツはZ世代にとって身近な「ご褒美消費」

2――コンビニスイーツはZ世代にとって身近な「ご褒美消費」

働くことや勉強すること、さらには日々の生活そのものに対するモチベーションを保つ手段として、「自分を労わること」や「自分に活力を与えること」を目的とした現在志向の消費が熱心に行われている。たとえば、少し高めのコンビニスイーツやカプセルトイ、食玩の購入といった“プチ贅沢”から、推し活のように精神的な充足を得られる趣味に至るまで、これらは広く「ご褒美消費」として私たちの暮らしに定着しつつある。

株式会社オノフの「『自分へのご褒美』購入商品・頻度についての調査」3によれば、『自分へのご褒美』をする頻度として最も多かったのは「月に1回程度」(20.0%)で、次いで「2~3カ月に1回程度」(16.5%)、「半年に1回程度」(13.5%)という結果となっている。一方で、「週に1回以上」と答えた人も17.8%にのぼり、自分へのご褒美は決して珍しい行動ではなく、日常的な消費習慣として根付いていることがうかがえる。
図1 「ご褒美消費」の頻度
ご褒美消費の具体例として多く挙げられたのが「国内旅行」(30.3%)であり、次いで「コンビニスイーツ」(23.8%)が続いている。特にこの“コンビニスイーツ”に着目すると、株式会社モンテールによる「スーパー・コンビニ スイーツ白書 2023」では、「コンビニスイーツを食べる理由」として、「小腹を満たすため」(38.4%)に次いで、「自分へのご褒美として」が35.7%という高い割合を示している4。さらに、10代に限れば「自分へのご褒美として」が45.7%と、4割を超えており、若年層の間で“ご褒美”としてのスイーツ需要がより顕著であることがわかる。
図2 コンビニスイーツを食べる理由
同調査では、月に1回以上コンビニスイーツを購入する人のうち、「週1回以上」と回答した割合は全体で32.5%。中でも「Z世代」は46.2%と、全体よりも13.7ポイント高く、約半数が週1回以上の頻度でコンビニスイーツを購入しているという結果となった。このことからも、コンビニスイーツはとりわけZ世代にとっては身近で、かつ高頻度で実践されている“ご褒美消費”の一形態であるといえる。
図3 コンビニスイーツの購入頻度
 
3 株式会社オノフ「『自分へのご褒美』何を買っていますか?」2020/11/27 https://www.onoff.ne.jp/blog/?p=4397#index_id2
4 株式会社モンテール「スーパー・コンビニ スイーツ 白書 2023」2023/03/02
https://www.monteur.co.jp/storage/news/2023sweetshakusho.pdf

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月25日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員

廣瀬 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化論、若者マーケティング、サブカルチャー

経歴
  • 【経歴】
    2019年 大学院博士課程を経て、
         ニッセイ基礎研究所入社

    ・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
    ・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員

    【加入団体等】
    ・経済社会学会
    ・コンテンツ文化史学会
    ・余暇ツーリズム学会
    ・コンテンツ教育学会
    ・総合観光学会

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