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- 「横浜オフィス市場」の現況と見通し(2025年)
2025年03月31日
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3-2.新規供給見通し
前述の通り、「みなとみらい21地区」と「関内地区」がそれぞれ、オフィス面積全体の3割強と2割強を占める。現在、両エリアでは大規模開発計画が進行中であり、オフィス市場における存在感が高まる見通しである。以下では、「みなとみらい21地区」と「関内地区」のオフィス開発計画を概観したい。
前述の通り、「みなとみらい21地区」と「関内地区」がそれぞれ、オフィス面積全体の3割強と2割強を占める。現在、両エリアでは大規模開発計画が進行中であり、オフィス市場における存在感が高まる見通しである。以下では、「みなとみらい21地区」と「関内地区」のオフィス開発計画を概観したい。
(1)「みなとみらい21地区」
「みなとみらい21地区」では、中央地区53街区で、大林組、京浜急行電鉄、日鉄興和不動産、ヤマハ、およびみなとみらい53EASTが共同で「横浜シンフォステージ」(地上 30階建て・延床面積約18.3万m2)を開発し、2024年3月に竣工した5(図表-16 ①)。
今後も、複数の大規模開発が計画されている。中央地区52街区で、大和ハウス工業と光優が世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した施設(延床面積約11.4万m2・オフィス棟:地上29階建て・ミュージアム棟:3階建て)を開発中で、2027年7月に開業予定である6(図表-16 ②)。また、中央地区60・61街区でケン・コーポレーション、SMFLみらいパートナーズ、鹿島建設、および学校法人岩崎学園が共同で、西側に専門学校、東側に商業施設、ホテル、ミュージアム、オフィスなどから構成される複合施設「Linkage Terrace」(延床面積約13万m2)を開発中で、2029年2月の竣工を予定している7(図表-16 ③)。
1983年11月に事業着工した「みなとみらい21地区」の開発進捗率は、前述の開発計画を含めて99%となる8。2023年時点の進出企業数は、1,930社、就業者は13.4万人に達する。横浜市の推計(2020年時点)によれば、みなとみらい21地区の都市稼働による横浜市内への経済波及効果は、年間約2兆846億円に達している9。
今後、「みなとみらい21地区」のまちづくりが完了することで、横浜の地域経済およびオフィス市場への影響力が一層高まることが予想される。
「みなとみらい21地区」では、中央地区53街区で、大林組、京浜急行電鉄、日鉄興和不動産、ヤマハ、およびみなとみらい53EASTが共同で「横浜シンフォステージ」(地上 30階建て・延床面積約18.3万m2)を開発し、2024年3月に竣工した5(図表-16 ①)。
今後も、複数の大規模開発が計画されている。中央地区52街区で、大和ハウス工業と光優が世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した施設(延床面積約11.4万m2・オフィス棟:地上29階建て・ミュージアム棟:3階建て)を開発中で、2027年7月に開業予定である6(図表-16 ②)。また、中央地区60・61街区でケン・コーポレーション、SMFLみらいパートナーズ、鹿島建設、および学校法人岩崎学園が共同で、西側に専門学校、東側に商業施設、ホテル、ミュージアム、オフィスなどから構成される複合施設「Linkage Terrace」(延床面積約13万m2)を開発中で、2029年2月の竣工を予定している7(図表-16 ③)。
1983年11月に事業着工した「みなとみらい21地区」の開発進捗率は、前述の開発計画を含めて99%となる8。2023年時点の進出企業数は、1,930社、就業者は13.4万人に達する。横浜市の推計(2020年時点)によれば、みなとみらい21地区の都市稼働による横浜市内への経済波及効果は、年間約2兆846億円に達している9。
今後、「みなとみらい21地区」のまちづくりが完了することで、横浜の地域経済およびオフィス市場への影響力が一層高まることが予想される。
5 株式会社大林組・京浜急行電鉄株式会社・日鉄興和不動産株式会社・ヤマハ株式会社・みなとみらい53EAST合同会社「みなとみらい 21 中央地区に新たなランドマーク 『横浜シンフォステージ(YOKOHAMA SYMPHOSTAGE®)』が竣工」(2024年4月16日)
6 大和ハウス工業株式会社・株式会社光優「世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設「みなとみらい21中央地区52街区開発事業」着工」(2024年2月21日)
7 横浜市「みなとみらい21中央地区60・61街区の事業予定者が決定しました」(2024年2月5日)
8 一般社団法人横浜みなとみらい21「2024 年度 事業計画」
9 横浜市都市整備局横浜駅・みなとみらい推進課「みなとみらい21地区の開発や事業活動がもたらす横浜市内への経済波及効果を推計しました!」(2023年5月20日)
(2)「関内地区」
「関内地区」では、大同生命が中区港町2丁目の「大同生命横浜ビル」および隣地ビルを一体で建て替え、地上13階のオフィスビル(延床面積1.2万m2)を開発し、2024年4月に竣工した10(図表-17 ①)。
その後も、複数の大規模開発が計画されている。中区港町1丁目の横浜市旧市庁舎跡地に、三井不動産など8社がオフィスや大学、アリーナ等を併設した施設「BASEGATE横浜関内」(総延床面積約12.9万m2)を開発中で、2025年12月に竣工予定である11(図表-17 ②)。また、日本郵船、三菱地所、鹿島建設が共同で設立した中区海岸通デベロップメント特定目的会社が中区海岸通3丁目でオフィス、ホテル、インキュベーション施設等を併設した複合施設(地上21階建て・延床面積約7万m2)を開発中で、2027年1月に竣工予定である12(図表-17 ③)。
東急不動産、京浜急行電鉄、第一生命保険は、中区海岸通5丁目で、共同住宅(704戸)やオフィスなどで構成する複合ビル(延床面積約11万m2・住宅棟:地上40階建て・事務所および店舗棟:地上6階建て)を開発中で、2027年3月に竣工予定である13(図表-17 ④)。
「関内地区」では、大同生命が中区港町2丁目の「大同生命横浜ビル」および隣地ビルを一体で建て替え、地上13階のオフィスビル(延床面積1.2万m2)を開発し、2024年4月に竣工した10(図表-17 ①)。
その後も、複数の大規模開発が計画されている。中区港町1丁目の横浜市旧市庁舎跡地に、三井不動産など8社がオフィスや大学、アリーナ等を併設した施設「BASEGATE横浜関内」(総延床面積約12.9万m2)を開発中で、2025年12月に竣工予定である11(図表-17 ②)。また、日本郵船、三菱地所、鹿島建設が共同で設立した中区海岸通デベロップメント特定目的会社が中区海岸通3丁目でオフィス、ホテル、インキュベーション施設等を併設した複合施設(地上21階建て・延床面積約7万m2)を開発中で、2027年1月に竣工予定である12(図表-17 ③)。
東急不動産、京浜急行電鉄、第一生命保険は、中区海岸通5丁目で、共同住宅(704戸)やオフィスなどで構成する複合ビル(延床面積約11万m2・住宅棟:地上40階建て・事務所および店舗棟:地上6階建て)を開発中で、2027年3月に竣工予定である13(図表-17 ④)。
10 大同生命「横浜市中区本町に「大同生命横浜ビル」が竣工~横浜・本町通り沿いに高い環境性能をほこる最新オフィスビル」(2024年4月23日)
11 三井不動産株式会社・鹿島建設株式会社・京浜急行電鉄株式会社・第一生命保険株式会社・株式会社竹中工務店・株式会社ディー・エヌ・エー・東急株式会社・星野リゾート「JR「関内」駅前 「横浜市旧市庁舎街区活用事業」 「BASEGATE 横浜関内」に街区名称決定」(2024年11月13日)
12 日本郵船株式会社・三菱地所株式会社・鹿島建設株式会社 「(仮称)横浜市中区海岸通計画(A-1地区)」新築着工」(2024年5月10日)
13 株式会社日新・東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社・第一生命保険株式会社「開発が大詰めを迎える横浜ウォーターフロント「北仲」のラストピース 北仲通北 B-1 地区の開発計画策定に向け、(株)日新と 東急不動産(株)・京浜急行電鉄(株)・第一生命保険(株)はパートナーシップ協定を締結しました」(2021年5月28日)
3-3.賃料見通し
前述のオフィスビルの新規供給見通しや経済予測14等を前提に、2029年までの横浜のオフィス賃料を予測した(図表-19)。
神奈川県の就業者は情報通信業等を中心に増加が続いている。また、雇用環境はオフィスワーカーの割合の高い「非製造業」で人手不足感がより強く、企業の採用意欲が高まっている。一方、企業の景況感は依然としてマイナスであり、また、横浜市の生産年齢人口は今後、減少に向かう見通しである。これらのことを勘案すると、横浜ビジネスエリアのオフィスワーカー数の増加はやや力強さに欠ける懸念がある。
一方、人手不足を背景に採用強化や人材定着等を目的としたオフィス環境の整備が進んでいる。今後、従業員満足度の向上に寄与する設備のグレードアップやアメニティの充実が進むと考えられる。また、テレワークを取り入れたハイブリッドワークが広がりつつあり、こうした働き方に即したオフィスの拠点配置や利用形態を検討する企業が増えると予想される。
新規供給については、「みなとみらい21地区」や「関内地区」を中心に複数の大規模開発計画が進行中である。2026年は新規供給の予定がなく、2027年に約4万坪の新規供給を控えている。
以上を鑑みると、横浜の空室率は改善傾向で推移した後、大量供給の影響を受けて上昇に転じることが予想される。このため、横浜のオフィス成約賃料は、2026年まで堅調に推移した後、需給環境の緩和に伴い下落に転じる見通しである。2024年の賃料を100とした場合、2025年は「100」、2026年は「102」、2029年には「95」と下落すると予想する。ただし、2024年対比で▲5%下落するものの、2020年と同程度の賃料水準に留まり、大幅な賃料下落には至らない見込みである。
前述のオフィスビルの新規供給見通しや経済予測14等を前提に、2029年までの横浜のオフィス賃料を予測した(図表-19)。
神奈川県の就業者は情報通信業等を中心に増加が続いている。また、雇用環境はオフィスワーカーの割合の高い「非製造業」で人手不足感がより強く、企業の採用意欲が高まっている。一方、企業の景況感は依然としてマイナスであり、また、横浜市の生産年齢人口は今後、減少に向かう見通しである。これらのことを勘案すると、横浜ビジネスエリアのオフィスワーカー数の増加はやや力強さに欠ける懸念がある。
一方、人手不足を背景に採用強化や人材定着等を目的としたオフィス環境の整備が進んでいる。今後、従業員満足度の向上に寄与する設備のグレードアップやアメニティの充実が進むと考えられる。また、テレワークを取り入れたハイブリッドワークが広がりつつあり、こうした働き方に即したオフィスの拠点配置や利用形態を検討する企業が増えると予想される。
新規供給については、「みなとみらい21地区」や「関内地区」を中心に複数の大規模開発計画が進行中である。2026年は新規供給の予定がなく、2027年に約4万坪の新規供給を控えている。
以上を鑑みると、横浜の空室率は改善傾向で推移した後、大量供給の影響を受けて上昇に転じることが予想される。このため、横浜のオフィス成約賃料は、2026年まで堅調に推移した後、需給環境の緩和に伴い下落に転じる見通しである。2024年の賃料を100とした場合、2025年は「100」、2026年は「102」、2029年には「95」と下落すると予想する。ただし、2024年対比で▲5%下落するものの、2020年と同程度の賃料水準に留まり、大幅な賃料下落には至らない見込みである。
14 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2024~2034年度)」(2024年10月11日)、などを基に設定。
(2025年03月31日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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