コラム
2025年03月17日

「共に民主党」の李在明代表の大統領の夢はどうなるのか?-尹錫悦大統領の釈放で政局は不透明な状況へと突入-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表(以下、李代表)は韓国の次期大統領となるのか?尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領(以下、尹大統領)が起訴され、韓国では次期大統領選への関心が一層高まっている。尹大統領が起訴された後、多くの世論調査では、李代表が次期大統領に最も近いと予想されていた。しかし、尹大統領の釈放により、政局は再び不透明な状況へと突入した。

2024年12月3日に「非常戒厳」を宣言し、今年1月26日に内乱罪で逮捕・起訴された尹大統領が、3月8日夕方、勾留されていた拘置所から釈放された。

釈放された尹大統領は、支持者に手を振って挨拶をした後、警護室の車に乗り込み、ソウル龍山区(ヨンサング)漢南洞(ハンナムドン)にある大統領公邸へと向かった。尹大統領の復帰は、1月15日に内乱の首謀者容疑で逮捕されてから52日ぶりとなった。

尹大統領側は、検察が裁判所に認められた勾留期間の終了後に起訴したのは違法であり、直ちに釈放すべきだと主張していた。一方、検察は適法な起訴であるとの反対意見を表明しており、勾留期間の計算方法が争点となっていた。

刑事訴訟法上、被疑者の勾留期間は原則として10日間と定められている。ただし、令状審査のために捜査記録が裁判所へ送られ、令状が発給され、再び捜査記録が検察庁へ戻るまでの期間は、この勾留期間に含まれない。

裁判部は、この期間を「時間単位」で計算すべきであると判断した。つまり、尹大統領が逮捕されたのは1月15日午前10時33分頃であり、通常の勾留期間は10日後の1月24日深夜までとなる。

しかし、この期間内に行われた令状審査には33時間7分が費やされており、この時間を勾留期間に含めない場合、勾留期間の満了時点は1月26日午前9時7分頃となる、というのが裁判所の判断である。

ところが、検察が公訴を提起したのは1月26日午後6時52分頃であり、これは勾留期間の満了後であった。裁判部は、「時間単位で計算しなければ、書類の受付や返却のタイミングによって勾留期間が変動するという不合理が生じる」と指摘し、「技術の発達により、正確な時間を確認し管理することは難しくない」と説明した。

野党「共に民主党」は、尹大統領の釈放を受け、動揺を隠せない様子だ。同党は、3月8日の深夜に緊急で全議員会議を招集し、対応策を協議している。共に民主党は、当初、3月14日頃に憲法裁判所が尹大統領を罷免し、それから60日後の5月13日頃に大統領選挙が行われると予想していいた。

しかし、尹大統領の弾劾裁判を審理中の憲法裁判所は3月17日午前11時時点でも判決期日を指定していない。通常、憲法裁判所の宣告期日は2~3日前に告知されることを考慮すると、尹大統領の弾劾裁判の宣告は3月17日週の水曜日以降に行われると考えられる。

尹大統領の弾劾裁判の宣告が延期されたことは、現状の候補者の中で支持率トップを独走している「共に民主党」の李代表にとって、必ずしも好都合な状況ではない。李代表は、今月26日に公職選挙法上の虚偽事実公表容疑に対する控訴審(二審)の判決を控えており、次回の大統領選挙で有利に戦うためには、一日でも早く尹大統領の弾劾裁判の判決が下されることが望ましいからである。

李代表は、2月4日に公職選挙法第250条1項に対する違憲法律審判提請を申請したのに続き、3月12日にも同様の申請を行った。違憲法律審判提請とは、法律が違憲かどうかが裁判の前提となる場合、裁判所が憲法裁判所に違憲審判を要請する制度であり、裁判所が違憲法律審判を提請すれば、憲法裁判所の決定が出るまで裁判は中止となる。李代表には、一審で懲役1年、執行猶予2年の判決が言い渡されており、予定通り3月26日に控訴審(二審)が行われ、この裁判で100万ウォン以上の罰金刑が確定すれば、5年間の被選挙権が剥奪され、次回の大統領選挙への出馬が不可能となる。

一方、韓国の憲法裁判所は3月13日、尹大統領の妻・金建希(キム・ゴンヒ)氏が不起訴処分となった株価操作事件をめぐり、国会で弾劾訴追された李昌洙(イ・チャンス)ソウル中央地検長ら3人の検察官の罷免を認めない判断を示した。また、崔載海(チェ・ゼヘ)監査院長についても罷免を認めなかった。この結果も、李代表にとって歓迎できるニュースとは言えないだろう。今後、尹大統領の弾劾裁判の判決や、李代表の控訴審の判決に注目が集まる。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年03月17日「研究員の眼」)

このレポートの関連カテゴリ

Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【「共に民主党」の李在明代表の大統領の夢はどうなるのか?-尹錫悦大統領の釈放で政局は不透明な状況へと突入-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

「共に民主党」の李在明代表の大統領の夢はどうなるのか?-尹錫悦大統領の釈放で政局は不透明な状況へと突入-のレポート Topへ