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2025年から大きく変わる韓国の労働関連政策のポイント

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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まず、2025年1月1日から最低賃金が時間当たり10,030ウォンに引き上げられる。これは、2024年の最低賃金(9,860ウォン)から170ウォン(1.7%)増加した金額である。週40時間勤務と週休手当を含めると、月額換算では約2,096,270ウォンとなる。最低賃金は、正社員、非正規、アルバイト、外国人労働者など、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用される。最低賃金引き上げに伴い、労働契約書を再作成する必要はないが、賃金の変動内容については労働者に必ず通知しなければならない。また、これに基づく賃金明細書を提供しない場合、法的問題が生じる可能性がある。
育児休業期間が延長し、給付金の上限額を引き上げ
育児休業給付金の上限額も大幅に引き上げられた。従来は月150万ウォンが上限額だったが、2025年からは最初の3ヶ月間は月最大250万ウォン、4~6ヶ月は月200万ウォン、7ヶ月以降は月最大160万ウォンが支給され、1ヶ月の最大給与が250万ウォンに引き上げられたことで、1年間の最大受領可能額は2,310万ウォンに増加した。一方、生後18ヶ月以内の子供を持つ親が一緒に育児休暇を使用する場合は、6+6親育児休業制度が適用され、夫婦それぞれ年間最大2,960万ウォンずつ、合計5,920万ウォンの給与を受け取ることができるようになった。また、従来の事後支給制度も廃止される。従来の育児休業給付金は、給付金のうち25%は復職後6ヶ月後に支給される方式だったが、2025年1月1日からはこの制度が改善され、育児休業期間中に全額が支給されるようになった。
産前産後休業と育児休業の申請手続きも変更された。従来は、産前産後休業と育児休業を取得する際に別々で申請する必要があったが、2025年からは労働者の負担軽減を目的に、産前産後休業の申請時に育児休業も同時に申請できるようになった。これにより、1回の申請で、産前産後休業と育児休業を合わせて最大1年6ヶ月間利用することが可能となる。
不妊治療休暇も、年間3日(うち1日は有給)から年間6日(うち2日は有給)に増加した。また、これまで政府の支援はなかったが、中小企業の労働者に限り、2日分の給与を政府が支援することで、労働者がより安心して不妊治療休暇を取得できるようになった。さらに、従業員が不妊治療休暇を取得した場合、事業主はその情報を守秘しなければならないという新たな条項も追加された。
育児期労働時間短縮制度の対象を拡大
事業主に対する制度も改正
一方、2025年から賃金不払い根絶のための労働基準法が改正される。常習的に賃金を滞納した事業主は、その事実が信用情報機関に提供され、融資審査や金融取引で不利益を受けることになる。また、このような事業主は、政府の補助金や助成金の申請が制限され、公共機関の入札に参加する際、減点や参加制限などの不利益を受ける可能性がある。さらに、常習的に賃金を滞納し、名簿が公開された事業主に対しては、雇用労働部が法務大臣に出国禁止を要請できるようになった。また、従来は退職者にのみ適用されていた未払い賃金に対する遅延利息(年利20%)が在職中の労働者にも適用されるようになり、常習的な給料滞納によって発生した被害に対しては、最大3倍の損害賠償を請求できるように改正された。
そして、小規模事業場の労働者の権益保護を強化するため、現在、5人未満の事業場に適用されていない、残業時間を含めた1週間の労働時間を52時間までに制限する「週52時間勤務制」や時間外・休日及び深夜の割増賃金、年次休暇等に関する規定が2025年から段階的に適用される見通しだ。
2025年から実施される労働関連政策によって、韓国の労働者の労働環境が改善され、ワーク・ライフ・バランスの実現や幸福度の向上に少しでも寄与することを期待したい。
(2025年01月10日「研究員の眼」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
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