貿易統計25年1月－貿易赤字（季節調整値）は拡大したが、米国向け自動車輸出が増加に転じる

経済研究部経済調査部長斎藤太郎

1．貿易赤字（季節調整値）が急拡大

財務省が2月19日に公表した貿易統計によると、25年1月の貿易収支は▲27,588億円の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想（QUICK集計：▲21,004億円、当社予想は▲2,2017億円）を上回った。輸出が前年比7.2％（12月：同2.8％）と前月から伸びを高めたが、輸入が前年比16.7％（12月：同1.7％）の大幅増加となったため、貿易収支は前年に比べ▲9,922億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.7％（12月：同▲2.6％）、輸出価格が前年比9.1％（12月：同5.6％）、輸入の内訳は、輸入数量が前年比8.7％（12月：同1.8％）、輸入価格が前年比7.4％（12月：同▲0.1％）であった。

原数値の貿易収支は大幅な赤字となったが、1月は正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字が拡大しやすい季節性がある。貿易収支の実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切だが、季節調整済の貿易赤字も▲8,566億円の赤字となり、24年12月の▲2,210億円から大きく拡大した。輸出が前月比▲2.0％の減少となる一方、輸入が同4.7％の大幅増加となった。

25年1月の通関（入着）ベースの原油価格は1バレル＝76.7ドル（当研究所による試算値）と、12月の76.6ドルからほぼ横ばいだった。足もとの原油価格（ドバイ）は70ドル台後半で推移しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、2月以降は80ドル台となることが見込まれる。

2．米国向けの自動車輸出が増加に転じる

25年1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.5％（12月：同▲6.5％）、EU向けが前年比▲18.1％（12月：同▲0.0％）、アジア向けが前年比▲1.7％（12月：同1.0％）、うち中国向けが前年比▲15.2％（12月：同▲10.2％）となった。

25年1月の地域別輸出数量指数を季節調整値（当研究所による試算値）でみると、米国向けが前月比▲3.5％（12月：同6.1％）、EU向けが前月比▲22.6％（12月：同24.3％）、アジア向けが前月比▲3.3％（12月：同1.4％）、うち中国向けが前月比▲2.9％（12月：同▲1.0％）、全体では前月比▲6.4％(12月：同5.3％）となった。

1月はいずれの国・地域向けも弱い動きとなったが、減少が続いていた米国向けの自動車輸出（数は前年比21.8％（12月は同▲6.8％）と増加に転じた（数量ベースでは12月：前年比▲13.0％→1月：同6.4％）。米国の関税引き上げに備えた駆け込みが生じている可能性がある。

なお、アジア向け、中国向け輸出については、中華圏の春節の時期が昨年とずれている（24年は2月中旬、25年は1月下旬）ことによって押し下げられており（当研究所の季節調整値は春節の影響が除去しきれていない）、2月はその反動で増加する可能性がある。アジア向け輸出の基調を判断するためには、1、2月を均して見る必要がある。

輸出は全体としては横ばい圏で推移している。先行きについても、米国、中国を中心に海外経済の減速が見込まれるため、輸出が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。

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