2025年01月31日

鉱工業生産24年12月-2四半期ぶりの増産だが、一進一退を抜け出せず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10-12月期は前期比1.3%と2四半期ぶりの増産

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、24年12月の鉱工業生産指数は前月比0.3%(11月:同▲2.2%)と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.3%、当社予想は同1.1%)通りの結果となった。出荷指数は前月比0.5%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.7%と2ヵ月連続の低下となった。

12月の生産を業種別に見ると、生産用機械(11月:前月比▲9.1%→12月:同2.9%)、電子部品・デバイス(10月:前月比▲8.6%→11月:同▲2.2%→12月:同2.1%)が前月までの大幅な落ち込みの反動もあり上昇したが、自動車(前月比▲1.7%)、化学(除く無機・有機化学・医薬品)(同▲3.0%)、電気・情報通信機械(同▲1.2%)などが低下したため、鉱工業全体は前月の落ち込みの後としては低い伸びにとどまった。

24年10-12月期の生産は前期比1.3%と2四半期ぶりの増産となった(4-6月期:同▲0.3%)。業種別には、世界的な半導体需要の回復を受けて好調が続いていた電子部品・デバイスが前期比▲8.5%(7-9月期:同7.8%)と5四半期ぶりの減産となったが、工場の稼働停止の影響で7-9月期に前期比▲4.1%と落ち込んだ自動車が同3.6%と2四半期ぶりに上昇したほか、半導体製造装置、フラットパネル製造装置の大幅増産から生産用機械が前期比12.1%の高い伸びとなった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は24年7-9月期の前期比▲3.9%の後、10-12月期は同7.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は24年7-9月期の前期比▲1.0%の後、10-12月期は同1.8%となった。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は24年4-6月期の前期比1.1%の後、7-9月期は同▲0.1%と2四半期ぶりに減少した。GDP統計の設備投資は一進一退となっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。10-12月期の設備投資は増加に転じることが予想される。

消費財出荷指数は24年7-9月期の前期比▲1.6%の後、10-12月は同2.4%となった。耐久消費財が前期比2.4%(7-9月期:同▲3.0%)、非耐久消費財が前期比1.6%(7-9月期:同▲0.1%)となった。

GDP統計の民間消費は、24年4-6月期が前期比0.6%、7-9月期が同0.7%と2四半期連続で増加したが、6月に始まった所得税・住民税減税の効果はすでに一巡している。10-12月期の消費財出荷指数は堅調だったが、その他の消費関連指標はそれほど強くない。GDP統計の民間消費は、物価高の悪影響が続くもとで減税効果が一巡したことから、弱めの動きになる可能性が高い。

2.ITサイクルはピークアウトの可能性が高まる

製造工業生産予測指数は、25年1月が前月比1.0%、2月が同1.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(12月)、予測修正率(1月)はそれぞれ▲0.5%、▲0.8%であった。

予測指数を業種別にみると、10-12月期の生産を牽引した生産用機械は25年1月が前月比▲1.2%、2月が同▲0.8%と小幅な減産計画となっている。一方、10-12月期に大きく落ち込んだ電子部品・デバイスは1月が前月比3.9%、2月が同1.5%の増産計画となっているが、下振れリスクが高いと考えられる。

24年10-12月期の電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は12.5%と6四半期連続のプラスとなったが、1-3月期の34.0%をピークにプラス幅の縮小が続いている。在庫が前年比▲13.8%(7-9月期:同▲15.3%)とマイナス幅が縮小したことに加え、出荷が前年比▲1.4%(7-9月期:同8.9%)と4四半期ぶりのマイナスとなった。ITサイクルはピークアウトの可能性が高まっている。
最近の実現率、予測修正率の推移/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
24年12月の生産指数を25年1月、2月の予測指数で先延ばしすると、25年1、2月の平均は24年10-12月期を1.0%上回るが、実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があることを考慮すると、1-3月期はほぼ横ばいにとどまることが見込まれる。

鉱工業生産は増産と減産を繰り返しており、22年以降は2四半期続けて増産となったことがない。電子部品・デバイスの牽引力が弱まる中、中国向けを中心に輸出の低迷が続く可能性が高いことから、鉱工業生産は当面、一進一退の動きが続くことが予想される。
 
 

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(2025年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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