2025年01月23日

貿易統計24年12月-10-12月期の外需寄与度は前期比0.3%程度のプラスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字(季節調整値)が大きく縮小

財務省が1月23日に公表した貿易統計によると、24年12月の貿易収支は1,309億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲625億円、当社予想は969億円)を上回った。輸出が前年比2.8%(11月:同3.8%)と3ヵ月連続で増加、輸入が前年比1.8%(11月:同▲3.8%)と2ヵ月ぶりに増加したが、輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったため、貿易収支は前年に比べ986億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.6%(11月:同▲0.1%)、輸出価格が前年比5.6%(11月:同3.9%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比1.9%(11月:同▲5.5%)、輸入価格が前年比▲0.2%(11月:同1.8%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲330億円と43ヵ月連続の赤字となったが、11月の▲3,887億円から赤字幅が大きく縮小した。輸出が前月比6.3%の高い伸びとなり、輸入の伸び(同2.2%)を大きく上回ったことが赤字幅の縮小につながった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年12月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=76.6ドル(当研究所による試算値)と、11月の78.3ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は80ドル台前半まで上昇しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、25年1月は70ドル台後半、2月には80ドル台半ばまで上昇することが見込まれる。貿易赤字(季節調整値)は大きく縮小したが、先行きは原油高による輸入価格の上昇が見込まれるため、貿易収支が基調として黒字となる可能性は低いだろう。
24年12月分と同時に公表された24年の貿易収支は▲5.3兆円の赤字となり、前年に比べて赤字幅が4.2兆円縮小した。輸出が前年比6.2%となり、輸入の伸び(同1.8%)を上回ったことが貿易収支の改善に寄与した。

24年の貿易収支の変動を要因分解すると、数量要因が0.1兆円(うち輸出が▲2.6兆円、輸入が2.7兆円)、価格要因が4.1兆円(うち輸出が9.1兆円、輸入が▲5.0兆円)となった。価格要因のうち、契約通貨ベースの価格変動が5.5兆円、為替変動が▲1.5兆円であった。為替変動のマイナスは円安の影響が輸出価格よりも輸入価格により大きく表れたことによるものである。
貿易収支変動の要因分解(2024年)

2.米国向け輸出は弱い動きが続く

24年12月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲6.5%(11月:同▲9.5%)、EU向けが前年比▲0.0%(11月:同▲14.2%)、アジア向けが前年比1.0%(11月:同4.4%)、うち中国向けが前年比▲10.2%(11月:同▲6.4%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 24年10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲2.9%(7-9月期:同0.0%)、EU向けが前期比0.6%(7-9月期:同2.5%)、アジア向けが前期比2.6%(7-9月期:同0.4%)、うち中国向けが前期比0.1%(7-9月期:同▲4.6%)、全体では前期比1.3%(7-9月期:同0.2%)となった。

アジア向け、EU向けは持ち直しているが、米国向けが自動車を中心に弱い動きとなっている。12月の米国向けの自動車輸出(数量ベース)は前年比▲13.0%(11月:同▲16.9%)と大幅な減少が続いている。

輸出は全体としては横ばい圏で推移している。先行きについても、米国、中国を中心に海外経済の減速が見込まれるため、輸出が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。

3.10-12月期の外需寄与度は前期比0.3%程度のプラスに

12月までの貿易統計と11月までの国際収支統計の結果を踏まえて、24年10-12月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比1%程度の増加、輸入が前期比▲0.5%程度の減少となった。財輸出は低迷したが、インバウンド需要の拡大などからサービス輸出が高い伸びとなり輸出を押し上げた。この結果、10-12月期の外需寄与度は前期比0.3%(7-9月期:同▲0.2%)と4四半期ぶりのプラスとなることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、1/31のweeklyエコノミストレターで24年10-12月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し上げる中、民間消費は前期比ほぼ横ばいにとどまるものの、設備投資が高めの伸びとなることから、国内需要も増加し、前期比年率2%程度のプラス成長になると予想している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年01月23日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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