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- 鉱工業生産24年11月-10-12月期は2四半期ぶりの増産となるが、持ち直しのペースは緩やか
2024年12月27日
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1.11月の生産は3ヵ月ぶりの低下
経済産業省が12月27日に公表した鉱工業指数によると、24年11月の鉱工業生産指数は前月比▲2.3%(10月:同2.8%)と3ヵ月ぶりに低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲3.4%、当社予想は同▲3.7%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比▲2.7%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲0.9%と3ヵ月ぶりの低下となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は24年7-9月期の前期比▲3.9%の後、10月が前月比11.0%、11月が同▲2.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は24年7-9月期の前期比▲1.0%の後、10月が前月比4.6%、11月が同▲3.5%となった。

GDP統計の設備投資は24年4-6月期の前期比1.1%の後、7-9月期は同▲0.1%と2四半期ぶりに減少した。GDP統計の設備投資は一進一退の動きとなっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。10-12月期の設備投資は増加に転じることが予想される。
消費財出荷指数は24年7-9月期の前期比▲1.6%の後、10月が前月比5.6%、11月が同▲3.1%となった。11月は耐久消費財が前月比▲3.9%(10月:同4.5%)、非耐久消費財が前月比▲0.3%(10月:同3.3%)となった。
GDP統計の民間消費は、24年4-6月期が前期比0.6%、7-9月期が同0.7%と2四半期連続で増加した。物価高による下押し圧力は残っているが、6月から実施されている所得税・住民税減税で家計の可処分所得が大幅に増加したことが消費の押し上げ要因となった。10-12月期は減税効果が一巡するものの、実質賃金の持ち直しが消費を下支えすることが見込まれる。
2.ITサイクルはピークアウトの可能性が高まる
製造工業生産予測指数は、24年12月が前月比2.1%、25年1月が同1.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲2.3%、0.3%であった。
予測指数を業種別にみると、前月の反動で11月に大きく落ち込んだ生産用機械は12月に同8.9%の高い伸びが見込まれている(25年1月は同▲2.6%)ほか、輸送機械は25年1月に前月比11.0%(12月は同0.7%)の大幅増産計画となっている。
一方、グローバルなIT関連需要の回復を背景とした在庫調整の進展を受けて、好調に推移してきた電子部品・デバイスは10、11月と2ヵ月連続で減少した後、12月も同▲1.1%の減産計画となっている(25年1月は同5.9%)。
24年11月の電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は14.3%(10月:18.7%)と15ヵ月連続のプラスとなったが、プラス幅は7月の41.7%をピークに4ヵ月連続で縮小した。11月は出荷が前年比▲2.2%(10月:同▲0.6%)と2ヵ月連続のマイナスとなったことに加え、在庫が前年比▲16.5%(10月:▲19.3%)とマイナス幅が縮小した。ITサイクルはピークアウトの可能性が高まっている。
予測指数を業種別にみると、前月の反動で11月に大きく落ち込んだ生産用機械は12月に同8.9%の高い伸びが見込まれている(25年1月は同▲2.6%)ほか、輸送機械は25年1月に前月比11.0%(12月は同0.7%)の大幅増産計画となっている。
一方、グローバルなIT関連需要の回復を背景とした在庫調整の進展を受けて、好調に推移してきた電子部品・デバイスは10、11月と2ヵ月連続で減少した後、12月も同▲1.1%の減産計画となっている(25年1月は同5.9%)。
24年11月の電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は14.3%(10月:18.7%)と15ヵ月連続のプラスとなったが、プラス幅は7月の41.7%をピークに4ヵ月連続で縮小した。11月は出荷が前年比▲2.2%(10月:同▲0.6%)と2ヵ月連続のマイナスとなったことに加え、在庫が前年比▲16.5%(10月:▲19.3%)とマイナス幅が縮小した。ITサイクルはピークアウトの可能性が高まっている。
24年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、24年10-12月期は前期比1.8%となる。実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があることを考慮すると、10-12月期の生産は前期比1%程度の伸びとなり、2四半期ぶりの増産となることが見込まれる(7-9月期は同▲0.3%)。ただし、電子部品・デバイスの牽引力が弱まっていること、海外経済の減速が見込まれることを踏まえると、先行きの生産の持ち直しペースは緩やかにとどまることが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年12月27日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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