2024年12月18日

貿易統計24年11月-自動車を中心に欧米向け輸出の減少が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字は事前予想を下回る

財務省が12月18日に公表した貿易統計によると、24年11月の貿易収支は▲1,176億円の赤字となったが、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲7,030億円、当社予想は▲6,754億円)を下回った。輸出が前年比3.8%(10月:同3.1%)と2ヵ月連続で増加する一方、輸入が前年比▲3.8%(10月:同0.4%)と8ヵ月ぶりに減少に転じたため、貿易収支は前年に比べ6,962億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲0.1%(10月:同0.1%)、輸出価格が前年比3.9%(10月:同3.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲5.3%(10月:同2.5%)、輸入価格が前年比1.6%(10月:同▲2.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲3,842億円と42ヵ月連続の赤字となり、10月の▲2,292億円から赤字幅が拡大した。円安の影響で輸入が前月比1.9%の高い伸びとなり、輸出の伸び(同0.2%)を上回ったことが赤字幅の拡大につながった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年11月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=78.3ドル(当研究所による試算値)と、10月の80.2ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台前半で推移しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年12月も70ドル台後半となることが見込まれる。

2.欧米向け輸出は弱い動きが続く

24年11月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲9.5%(10月:同▲6.1%)、EU向けが前年比▲14.2%(10月:同▲15.9%)、アジア向けが前年比4.4%(10月:同3.9%)、うち中国向けが前年比▲6.4%(10月:同▲4.4%)となった。

24年11月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲2.1%(10月:同▲8.8%)、EU向けが前月比▲3.9%(10月:同▲4.2%)、アジア向けが前月比0.2%(10月:同1.2%)、うち中国向けが前月比▲0.2%(10月:同0.9%)、全体では前月比▲1.4%(10月:同▲1.0%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 24年10、11月の平均を7-9月期と比較すると、アジア向けは1.5%、中国向けは0.7%高いが、米国向けが▲5.0%、EU向けが▲4.5%低くなっている(全体は0.0%の横ばい)。アジア向けは持ち直しているが、欧米向けが自動車を中心に弱い動きとなっている。自動車の輸出数量は米国向けが前年比▲16.9%(10月:同▲8.9%)、EU向けが同▲34.4%(10月:同▲29.2%)と大幅な減少が続いている。

輸出は全体としては横ばい圏で推移している。先行きについても、海外経済の減速が続くことから、輸出が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年12月18日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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