2024年12月20日

消費者物価(全国24年11月)-コアCPI上昇率は12月には3%台へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.4ポイント拡大の2.7%

消費者物価指数の推移 総務省が12月20日に公表した消費者物価指数によると、24年11月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.7%(10月:同2.3%)となり、上昇率は前月から0.4ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.6%、当社予想は2.7%)を上回る結果であった。

「酷暑乗り切り緊急支援」の値引き単価が縮小され、電気・都市ガス代の上昇率が拡大したこと、食料(生鮮食品を除く)の伸びが高まったことがコアCPI上昇率を押し上げた。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.4%(10月:同2.3%)、総合は前年比3.0%(10月:同2.3%)であった。
 
コアCPIの内訳をみると、電気代(10月:前年比4.0%→11月:同9.9%)、ガス代(10月:前年比3.5%→11月:同5.6%)の上昇率が拡大したことに加え、ガソリン(10月:前年比▲0.4%→11月:同1.0%)、灯油(10月:前年比▲1.1%→11月:同2.0%)が上昇に転じたことから、エネルギー価格の上昇率は10月の前年比2.3%からの同6.0%へ拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比4.2%(10月:同3.8%)と上昇率が前月から0.4ポイント拡大した。食料(生鮮食品を除く)は23年8月の前年比9.2%をピークに鈍化傾向が続いていたが、24年7月の前年比2.6%を底に4ヵ月連続で上昇率が高まった。米類の上昇ペースがさらに加速(10月:前年比58.9%→11月:同63.6%)したことに加え、円安に伴う輸入物価の上昇が消費者物価に波及している。

内訳をみると、米類のほかに、ケチャップ(前年比12.3%)、チョコレート(同29.2%)、チューインガム(同15.6%)、果実ジュース(同26.5%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、卵(同▲7.7%)、食用油(同▲3.2%)、パスタソース(同▲5.1%)など、下落する品目も増えており、食料の価格にはばらつきが見られる。

外食は前年比2.4%(10月:同2.9%)と7ヵ月ぶりに上昇率が縮小した。牛丼(前年比5.7%)、ぎょうざ(同5.5%)などは高止まりしているが、前年の高い伸びの裏が出る形で、ハンバーガー(同▲2.2%)が下落しているほか、フライドチキン(10月:前年比6.9%→同0.0%)の上昇が止まった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比1.5%(10月:同1.5%)となり、上昇率は前月と変らなかった。宿泊料(10月:前年比7.7%→11月:同8.0%)、外国パック旅行(10月:前年比75.6%→11月:同80.8%)の上昇率が高まったが、外食の上昇率低下がそれを打ち消した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.47%(10月:0.18%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.90%(10月:0.82%)、その他財が0.59%(10月:0.52%)、サービスが0.73%(10月:0.78%)であった。

2.物価上昇品目数が2ヵ月連続で減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、11月の上昇品目数は389品目(10月は390品目)、下落品目数97品目(10月は95品目)となり、上昇品目数が2ヵ月連続で前月から減少した。上昇品目数の割合は74.5%(10月は74.7%)、下落品目数の割合は18.6%(10月は18.2%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は55.9%(10月は56.5%)であった。

3.コアCPI上昇率は12月には3%台へ

11月のコアCPIは、「酷暑乗り切り緊急支援」の値引き単価縮小に伴う電気・都市ガス代の上昇率急拡大を主因として上昇率が高まったが、12月には支援策が終了することから、電気・都市ガス代の上昇率がさらに拡大する。コアCPI上昇率は12月には23年8月以来の3%台に到達する公算が大きい。

電気・都市ガス代の支援策は25年1月使用分(2月請求分)に再開(~3月)されるが、値引き額が24年夏に比べて小さいこと、ガソリン、灯油等の補助金政策が縮小から終了に向かうことから、エネルギー価格の上昇率は高止まりすることが見込まれる。コアCPI上昇率は25年度初め頃まで2%台後半で高止まりすることが予想される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年12月20日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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