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- 2024~2026年度経済見通し(25年2月)
2025年02月18日
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1.2024年10-12月期は前期比年率2.8%のプラス成長
2024年10-12月期の実質GDPは、前期比0.7%(前期比年率2.8%)と3四半期連続のプラス成長となった。
物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡したことから、民間消費は前期比0.1%とほぼ横ばいにとどまった。高水準の企業収益を背景に設備投資は前期比0.5%の増加となったが、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.2%のマイナスとなったことから、国内需要は前期比▲0.1%と3四半期ぶりに減少した。
一方、輸出が前期比1.1%と3四半期連続で増加する中、輸入が前期比▲2.1%の減少となり、外需が前期比・寄与度0.7%のプラスとなったことが成長率を大きく押し上げた。
2024年10-12月期の実質GDPは3四半期連続のプラス成長となり、コロナ禍前(2019年平均)の水準を1.8%上回った。しかし、民間消費、住宅投資がそれぞれコロナ禍前を▲0.4%、▲10.6%下回るなど、家計部門は依然として停滞が続いている。
物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡したことから、民間消費は前期比0.1%とほぼ横ばいにとどまった。高水準の企業収益を背景に設備投資は前期比0.5%の増加となったが、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.2%のマイナスとなったことから、国内需要は前期比▲0.1%と3四半期ぶりに減少した。
一方、輸出が前期比1.1%と3四半期連続で増加する中、輸入が前期比▲2.1%の減少となり、外需が前期比・寄与度0.7%のプラスとなったことが成長率を大きく押し上げた。
2024年10-12月期の実質GDPは3四半期連続のプラス成長となり、コロナ禍前(2019年平均)の水準を1.8%上回った。しかし、民間消費、住宅投資がそれぞれコロナ禍前を▲0.4%、▲10.6%下回るなど、家計部門は依然として停滞が続いている。
(輸出が景気の牽引役となることは期待できず)
世界の貿易量は2024年入り後に前年比でプラスに転じた後、徐々に伸びを高めているが、日本の輸出は横ばい圏の推移が続いている。
輸出の先行きを左右する海外経済を展望すると、米国の実質GDP成長率は2023年(2.9%)、2024年(2.8%)と潜在成長率を明確に上回ったが、トランプ大統領の経済政策のうち、関税引き上げ、不法移民の強制送還はインフレの加速を通じて成長率の低下をもたらす可能性が高いことから、2025年が2.1%、2026年が1.8%と減速が続くことが予想される。また、中国は、不動産不況が継続する中で、米国による追加関税の悪影響が加わることから、実質GDP成長率が2024年の5.0%から、2025年が4.2%、2026年が3.5%へと大きく減速するだろう。一方、ユーロ圏の実質GDP成長率は2024年の0.7%から2025年が1.0%、2026年が1.4%と徐々に回復するものの、コロナ禍の急速な落ち込みの後としては、緩やかな伸びにとどまるだろう。総じてみれば、今回の予測期間である2026年まで海外経済は緩やかに回復するものの、成長率は低水準にとどまることを想定している。
海外経済の低成長が続くことから、輸出の伸びが加速し、景気の牽引役となることは期待できない。GDP統計の財貨・サービスの輸出は2024年度が前年比1.7%、2025年度が同2.1%、2026年度が同1.7%と緩やかな伸びにとどまると予想する。
世界の貿易量は2024年入り後に前年比でプラスに転じた後、徐々に伸びを高めているが、日本の輸出は横ばい圏の推移が続いている。
輸出の先行きを左右する海外経済を展望すると、米国の実質GDP成長率は2023年(2.9%)、2024年(2.8%)と潜在成長率を明確に上回ったが、トランプ大統領の経済政策のうち、関税引き上げ、不法移民の強制送還はインフレの加速を通じて成長率の低下をもたらす可能性が高いことから、2025年が2.1%、2026年が1.8%と減速が続くことが予想される。また、中国は、不動産不況が継続する中で、米国による追加関税の悪影響が加わることから、実質GDP成長率が2024年の5.0%から、2025年が4.2%、2026年が3.5%へと大きく減速するだろう。一方、ユーロ圏の実質GDP成長率は2024年の0.7%から2025年が1.0%、2026年が1.4%と徐々に回復するものの、コロナ禍の急速な落ち込みの後としては、緩やかな伸びにとどまるだろう。総じてみれば、今回の予測期間である2026年まで海外経済は緩やかに回復するものの、成長率は低水準にとどまることを想定している。
海外経済の低成長が続くことから、輸出の伸びが加速し、景気の牽引役となることは期待できない。GDP統計の財貨・サービスの輸出は2024年度が前年比1.7%、2025年度が同2.1%、2026年度が同1.7%と緩やかな伸びにとどまると予想する。
(ボーナスが賃金を大きく押し上げ)
現金給与総額(一人当たり)は2024年度入り後に伸びが加速し、2024年10-12月期は前年比3.9%の高い伸びとなった。33年ぶりの伸びとなった2024年春闘の結果が反映され、所定内給与の伸びが高まる中、夏季賞与に続き年末賞与が大幅増となったことが現金給与総額を大きく押し上げた。
2022年4月から2年以上にわたりマイナスが続いていた実質賃金上昇率は、2024年6、7月と2ヵ月連続でプラスとなった後、8~10月はマイナスに転じたが、11、12月は再びプラスとなった。実質賃金上昇率のプラス転化はいずれも特別給与(ボーナス)の大幅増加が主因であり、安定的な動きをする「きまって支給される給与(所定内給与+所定外給与)」は依然としてマイナス圏で推移している。
特別給与がほとんど支給されない2025年1月以降は名目賃金の伸びが大きく鈍化するため、実質賃金上昇率は再びマイナスとなることが見込まれる。実質賃金上昇率が持続的・安定的にプラスとなるのは2025年度入り後にずれ込む公算が大きい。
現金給与総額(一人当たり)は2024年度入り後に伸びが加速し、2024年10-12月期は前年比3.9%の高い伸びとなった。33年ぶりの伸びとなった2024年春闘の結果が反映され、所定内給与の伸びが高まる中、夏季賞与に続き年末賞与が大幅増となったことが現金給与総額を大きく押し上げた。
2022年4月から2年以上にわたりマイナスが続いていた実質賃金上昇率は、2024年6、7月と2ヵ月連続でプラスとなった後、8~10月はマイナスに転じたが、11、12月は再びプラスとなった。実質賃金上昇率のプラス転化はいずれも特別給与(ボーナス)の大幅増加が主因であり、安定的な動きをする「きまって支給される給与(所定内給与+所定外給与)」は依然としてマイナス圏で推移している。
特別給与がほとんど支給されない2025年1月以降は名目賃金の伸びが大きく鈍化するため、実質賃金上昇率は再びマイナスとなることが見込まれる。実質賃金上昇率が持続的・安定的にプラスとなるのは2025年度入り後にずれ込む公算が大きい。
(2025年の春闘賃上げ率は2年連続の5%台を予想)
2024年の春闘賃上げ率は5.33%(厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)と33年ぶりの高水準となった。2025年の春闘を取り巻く環境を確認すると、有効求人倍率は低下傾向にあるものの引き続き1倍を大きく上回る水準となっており、失業率が2%台半ばで推移するなど、労働需給は引き締まった状態が続いている。また、法人企業統計の経常利益(季節調整値)は過去最高に近い高水準を維持しており、消費者物価上昇率は高止まりしている。
賃上げの環境を過去と比較するために、労働需給(有効求人倍率)、企業収益(売上高経常利益率)、物価(消費者物価上昇率(除く生鮮食品))について、過去平均(1985年~)からの乖離幅を標準偏差で基準化してみると、3指標がいずれもプラスとなっており、その合計は過去最高となった2023年に近い水準となっている。賃上げの環境は引き続き良好と判断される。
ここにきて食料品を中心に物価の上昇ペースが加速していることも、賃上げを後押しする材料になるだろう。厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、賃金改定に当たり「物価の動向」を重視した企業の割合(複数回答)は、1999年に10%を割り込んでからは20年以上にわたって一桁の低水準が続き、2021年は0.8%と過去最低となったが、2022年以降の物価上昇を受けて、2023、2024年は20%台後半と1980年代後半の水準まで急上昇した。
2024年の春闘賃上げ率は5.33%(厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)と33年ぶりの高水準となった。2025年の春闘を取り巻く環境を確認すると、有効求人倍率は低下傾向にあるものの引き続き1倍を大きく上回る水準となっており、失業率が2%台半ばで推移するなど、労働需給は引き締まった状態が続いている。また、法人企業統計の経常利益(季節調整値)は過去最高に近い高水準を維持しており、消費者物価上昇率は高止まりしている。
賃上げの環境を過去と比較するために、労働需給(有効求人倍率)、企業収益(売上高経常利益率)、物価(消費者物価上昇率(除く生鮮食品))について、過去平均(1985年~)からの乖離幅を標準偏差で基準化してみると、3指標がいずれもプラスとなっており、その合計は過去最高となった2023年に近い水準となっている。賃上げの環境は引き続き良好と判断される。
ここにきて食料品を中心に物価の上昇ペースが加速していることも、賃上げを後押しする材料になるだろう。厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、賃金改定に当たり「物価の動向」を重視した企業の割合(複数回答)は、1999年に10%を割り込んでからは20年以上にわたって一桁の低水準が続き、2021年は0.8%と過去最低となったが、2022年以降の物価上昇を受けて、2023、2024年は20%台後半と1980年代後半の水準まで急上昇した。
名目賃金は高めの伸びが続くことが見込まれるが、ボーナスが支給されない2025年1月以降は伸びが鈍化するため、実質賃金の伸びは再びマイナスとなる公算が大きい。実質賃金上昇率が持続的・安定的にプラスとなるのは、現在4%程度となっている消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合)が3%程度まで鈍化することが見込まれる2025年7-9月期以降と予想する。
なお、消費者物価指数のうち、実質賃金の算出に用いられる「持家の帰属家賃を除く総合」の上昇率は、金融市場の注目度が高い「生鮮食品を除く総合」の上昇率を大きく上回っている。2024年12月の消費者物価は「持家の帰属家賃を除く総合」が前年比4.2%と「生鮮食品を除く総合」の同3.0%を1%以上上回った。「持家の帰属家賃を除く総合」に含まれる生鮮食品が高騰を続けていること、「持家の帰属家賃を除く総合」に含まれない持家の帰属家賃の伸びが低位にとどまっていることが、両者が乖離する原因である。
なお、消費者物価指数のうち、実質賃金の算出に用いられる「持家の帰属家賃を除く総合」の上昇率は、金融市場の注目度が高い「生鮮食品を除く総合」の上昇率を大きく上回っている。2024年12月の消費者物価は「持家の帰属家賃を除く総合」が前年比4.2%と「生鮮食品を除く総合」の同3.0%を1%以上上回った。「持家の帰属家賃を除く総合」に含まれる生鮮食品が高騰を続けていること、「持家の帰属家賃を除く総合」に含まれない持家の帰属家賃の伸びが低位にとどまっていることが、両者が乖離する原因である。

先行きについては、足もとの企業収益の回復ペース鈍化を受けて特別給与の伸びが低下することから、名目雇用者報酬は2025年度が前年比3.7%、2026年度が同3.3%と増加ペースが緩やかとなるが、物価上昇率の鈍化を受けて、実質雇用者報酬は2025年度が前年比1.6%、2026年度が同1.8%と底堅く推移することが予想される。
(2025年02月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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