2024年09月26日

東南アジア経済の見通し~輸出の回復とインフレ圧力の緩和により、堅調な成長が続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨
 
  1. 東南アジア5カ国は足元で景気が改善している。2024年4-6月期の成長率をみると、ベトナム(前年同期比+6.9%)とマレーシア(同+5.9%)、タイ(同+2.3%)は輸出の復調により景気に明るさがみえつつある。フィリピン(同+6.3%)は政府支出がけん引役となり景気が改善した。一方、インドネシア(同+5.0%)は1-3月期のGDPを押し上げた選挙関連支出が剥落して小幅に鈍化した。
     
  2. 消費者物価上昇率は今年前半は食品インフレや通貨安により上昇傾向がみられたが、概ね安定した推移となった。当面はこれまでの利上げの累積効果や米利下げ開始に伴うドル安・自国通貨高により落ち着いた推移となり、来年は景気回復によりインフレが徐々に加速する展開を予想する。
     
  3. 金融政策は米利下げに追随する形で金融緩和を進める国が増えると予想する。7月以降、米国の利下げ観測により東南アジア各国で自国通貨高が進みインフレ警戒感が和らいでおり、既にフィリピンが8月に、インドネシアが9月に利下げを実施している。今後はタイとマレーシアが年内に、ベトナムが来年1-3月に利下げを開始すると予想する。
     
  4. 先行きの東南アジア経済は輸出の回復とインフレ圧力の緩和により堅調な成長が続き、各国の成長率は2025年にかけて概ね上昇傾向を辿ると予想している。成長率の上昇幅は輸出依存度が高いベトナム、マレーシア、タイで大きくなり、内需主導経済のインドネシアとフィリピンは堅調な成長軌道が続くだろう。
東南アジア5 カ国の成長率とインフレ率の見通し
■目次

1.東南アジア経済の概況と見通し
  ・経済概況:財輸出の復調により景気改善
  ・物価:通貨高によりインフレ圧力緩和へ
  ・金融政策:米国に追随して利下げを実施
  ・経済見通し:輸出の回復とインフレ圧力の緩和により堅調な成長が続く
2.各国経済の見通し
  2-1.マレーシア
  2-2.タイ
  2-3.インドネシア
  2-4.フィリピン
  2-5.ベトナム

(2024年09月26日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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